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陳情令(魔道祖師)【歌詞考察してみた②】疏林如有诉/温情

こんにちは、不香花(ふこうか)です♪
以前、華流ドラマ陳情令に登場する温情の「疏林如有诉」を和訳したので、今回は考察の第二弾!温情の死に向かってどんどん読み進めていこうと思います…辛い…!

ちなみに和訳の記事がこちらです!
原文+ピンイン付きで載せているので、よければご覧ください。


そして考察を始めたものの、思ったより長くなったので前半(タイトル+1番)については、こちらで書いています。


ということで、前置きが長くなってしまう前にさっそく歌詞を考察していきましょう。




Aメロ3〜最期の日〜

銀の針を打つ誰人の頸
弟も共に報いたこの恩情
言葉を尽くせど聞き入れられず
ひどく怯えさせるだけ
骨を砕き散りゆく灰とこの命


2番はサビも含めて「ごめんね。 ……、ありがとう。」のシーンから金鱗台で制裁を受ける所までを歌っています。
銀の針を打たれたのは魏無羨を指しているのでしょう。彼の意識を失わせてから、温寧や一族の皆と共に恩に報いるため金鱗台へ向かいます。死を覚悟しながら、ひどく穏やかな微笑を温寧に向ける彼女は本当に強く優しい女性だと感じました。

元々多くを語らない彼女です。金鱗台で弁解の一つもしなかったことが伏魔洞での魏無羨との会話からも察する事ができます。言葉を尽くしても誰も聞く耳を持たない……。温情は、こういった経験をずっと繰り返してきたのでしょう。温氏である事が罪。自分でも嫌というほど理解しているだけに、狼狽えさせ更なる罵倒を浴びせられるくらいならと、口を噤み甘んじて断罪を受け入れたのかもしれません。

そしてこのパートで、灰と命が同列に並べられているのが個人的な考察ポイントです。灰には風に攫われて消散してしまうほど儚く軽い、利用価値がない(肥料にするといいらしいです笑)、燃え尽きたもの、というイメージがあります。その灰とイコールで結ばれた命って……、しかもこれを温情自身が思っていたとしたら。…胸が痛くて仕方ないです。




サビ2〜感謝と決意〜

山にともる灯火はたった一つ
目の前に広がるは漆黒の闇
あの慈悲深い心を高潔だと知るのは誰か
山外の風雨を避け 何もせず怯えているのは
医者の矜持が許さない


こちらは温情が金鱗台へ赴く直前の決意が描かれています。
山にともるたった一つの灯火とは、正に自分達を導いてくれた魏無羨を指しているのでしょう。道標であり、唯一感じられる温もりの象徴です。そして山外の風雨というのは天下中から向けられる敵意、非難、懐疑心など負の感情。闇の中で風雨にさらされる状況は、身も心も冷たく擦り減らす冷酷さや道をかき消されてしまう無情を感じられ、魏無羨の存在と対比になっています。

険しい山の中、一歩踏み出した先がどうなっているのかもわからないギリギリの状況で、何とか営む静かな暮らしを脅かす風雨。魏無羨はたった一人で道を明るく照らそうとしてくれましたが、あまりにも取り巻く環境が過酷すぎました。慈悲深く高潔である彼もまた、温氏一族を守ろうとしたがため闇に引き摺り込まれてしまいます。

温情は医術で人を救い、一族の長として民を守る立場に誇りを持っていました。そして魏無羨を犠牲にしてまで、自分達が守られている事にジレンマも感じていました。医師であり、報恩を重んじる温氏故にこれ以上他者の人生を蝕み守られるのは、自分自身が許せなかったのです。
また彼女は弟を何より大切に想う姉でもあります。自分にとっての温寧と、魏無羨にとっての江厭離を重ねるのは容易だったでしょう。魏無羨や彼が大切に想う全てを巻き込んでしまった償いのため、今は一歩先も見えない闇の中にいる彼に少しでも明るい光が差すことを信じて、命を差し出すのです。




サビ3〜来世への祈り〜

全てが終わりを迎えた時
新しい塚のある懐かしい場所へ
飛び立つ鶴と共に西へ向かおう
幾千の景色に思うのは人の無情
命を燃やし尽くして願う 来世の平穏を
阿寧と共にと


最後のサビです。霊識となった温情、しがらみから解放されてやや鳥瞰するような雰囲気が漂っています。
金鱗台から向かうのは西に位置する故郷、岐山でしょうか。それとも鶴と共に、遥か西方にある極楽浄土まで旅立つのでしょうか。

彼女が懸命に生き抜いた中で感じた世の無情。鶴の翼を借りて、あるいは宙を舞う灰として、魏無羨が命を落としたあの日の事ももしかすると見ていたのかもしれません。改めて人は無情である、と言い切る強い言葉は温情の心深くに刻まれた傷を訴えるもの。この曲を通して一番伝えたい事なのでしょう。

そして最後には医師としてではない、温情の素直な願いが記されています。


焚尽此生愿来世 同宁
命を燃やし尽くして願う 来世の平穏を
阿寧と共にと

この一節に「」と「」が使われているのが、温寧と阿苑(=藍愿=思追)の二人を示唆するようで堪りません…!温情は実の弟同様に阿苑も大切に思っていたんだろうなと、切なくも温かな気持ちになりました。
そこで曲の締めくくりとなる最後の最後に温寧を思わせる言葉を置かれているにはきっと意味があるはずだと思い、「来世は平穏に」という願いに「阿寧と共に」と、優しく強い姉であった彼女の一番の願いを添える事にしました。いつの日か、温姉弟ふたりが揃って春を迎えられますように。その時には温情も穏やかな笑顔で溢れる日々を送って欲しいです。




その他まとめ〜静かな炎〜


①に続いて注釈を加えておきます。
最後の大サビ、原文の始まりは「待到秋叶老去」
「秋の葉が枯れた時」と訳したのですが、なぜその時なの…?という疑問が湧き、以下のように解釈していました。

秋の葉が枯れたら冬が訪れる。冬の次にはまた芽吹きの春がやって来る。輪廻転生を強調するため秋の葉が枯れる頃としたのか。

または……

秋の葉→紅葉→赤→温氏を象徴する色
枯れる→命が潰える

温氏の血が潰えた時。言葉にするとあまりにも強い表現になります。しかし物語にも直接通ずる所があるかな、と個人的にはこちらの解釈を気に入り採用しました。原文でも秋の終わりを予感させるだけにとどまってますので「全てが終わりを迎えた時」としています。


真紅の衣が鮮やかで、強い志とふとした瞬間に見せる優しさが印象的な温情、彼女の人生ダイジェスト版!という内容でしたね。

聴いていても、前奏の琴がしっとりとした空気を持たせつつ凛と佇む温情を想像させてくれます。そして1番全体に漂う悲愴感から、間奏に移った時に低音が刻むリズムも困難に見舞われながら乱葬崗で力強く生きる様を描いているようです。

歌手の方も2番では芯のある強いお声で歌われているのが、1番の諦観したような雰囲気から変わって温情の意志の強さ、感情的な面を感じさせてくれますね。
後奏では前奏より一層シンプルになる演奏、赤い衣を纏った温情がいつもの凛とした表情を一瞬こちらに向け、そして林の中へと姿を消していくのが目に浮かびました。別れ際もきっと語る言葉は少ないんでしょう。目で語るのが実に彼女らしいと思います。


今回も長くなりましたが、これで「疏林如有诉」の考察完了です!……初めてのことでしたが、いかがでしたか?陳情令を見る際、少しでも温情の気持ちに寄り添うお手伝いになれていたら嬉しいです。
次はどの曲にしようかな…(笑)

C-POPにも目覚めそうで、他にも気になる曲があったりなかったり。とはいえ一気にやるとパンクしちゃいそうなので、のんびり更新していきたいと思います。おすすめのC-POPがある方、お教えいただけると喜びます♪

ではここまでありがとうございました!
またお会いしましょうね。


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