断熱小澤
ゲストハウスに住んでる頃、よく業務用スーパーを利用してました。めちゃくちゃ安いのに大容量。そばも一玉20円とかしないのでよく食べてました。そればっか食べていたため、顔色が常に悪くゲストハウス人から『根菜芸人』と呼ばれていました。そんな話をスーパーのゴボウを見て思い出した小澤です。
本物のゴボウみて流石にこの色になったら死ぬだろうと思いました。
さて今日はまた荷揚げ屋の話です。
工事途中の現場で仕事をする荷揚げ屋。他の工事現場で働く人と同じように常に危険と隣り合わせです。地上10階で通路がパタッとなくなっていて、向こう側との間に板がかかっています。下を見ると平気で一階までまで見えます。そんな上をキッチンを持ちながら運ぶのです。修業やん。
たぶんやばい現場だったんだので普通そんなことないですが年に1,2回そんな現場があります。
普通はそういうの警戒してるのでまず落ちることないです。ただ小澤1回だけ落ちたことあります。
それは一軒家をつくる現場。建方【たてかた】といわれ、でっかい木のを組み立てて家の形にしていく作業のこと。この作業がまあきつい。
一本一本重たいのもあるけど、何より普通にあぶねぇ。骨組みだけの二階部分にあがって命綱なんてつけるところない、そんなところをさらに重いものもって組み立てていく。
小澤バランス感覚ゼロなのでハイハイしながら移動してて『何しに来たんだ!立ち上がれ!』といわれたことがあります。立ち上がれて。
その日一階部分がおわり二階部分でした。
ちょうど俯瞰してみると碁盤目のように見えます。いろんな大きさの□がある感じ。
自分らの作業はいったん休憩で、職人さんたちがその□に床を入れ込むのを待っていました。
そして終わって二階部分に上がると全面一枚の床のようにきれいに仕上がってます。
おお、これなら端の方とかに行かなければ下に落ちることはないな。
落ちない安心感が小澤を踊らせます。草原をみて駆け出す少女のように一歩目を踏み出します。
このとき小澤は勘違いをしていたのです。
職人さん仕上げていた床だと思っていたものは断熱材の発泡スチロールだったのです。□切られてハマるように作られてるだけで当然踏めば抜けます。
ふんわり乗ってるだけの発泡スチロールを床だと思ってる小澤。
踏み出した右足からきれいに落ちていきます。
瞬間的にどこかを掴むなんてよぎる空きもない。
ジェットコースターで手を上げてわーってやる感じ。あんな感じで一階に落ちていきます。時間にしてコンマ何秒。
一階もまだ床なんてできてないからコンクリート。
やばいと思ったときには一階に尻から落ちてました。
あれ?痛くもなんともない。
周りを見ると断熱材の発泡スチロールの切れ端が山のように積まれていました。断熱材の墓場に落ちたのです。
僕は断熱材に落とされて断熱材に救われたと思いました。勝手に落ちたのは僕ですが。
大人になってのこんな不注意でおちて恥ずかしい。そして何より恥ずかしかったのは
誰も小澤が落ちたことに気づいてないことでした。
鮮やかに落ちすぎて音もならずに消えたのです。
こんな大ミス、せめて誰かに心配されたい。でもどこも痛くない。
もういっそのことなかったことにしようと思い、一階から外に出ます。
出た瞬間男の人と目が会います。
この男の人は現場で一番偉い人で実際に作業はせず、少し遠くから現場の流れをみてる、小澤ふんわり落下事件の唯一の目撃者でした。
目があうやいなや、近づいてきてこう言い出す
『君いまおちてきたよね??』
この地上から見てた感強めの言い方でなぜか小澤はこのとき『天空の城ラピュタ』を思い出してました。
なので小澤は『天空の城ラピュタ』を見るたびに『一軒家』と『断熱材』を思い出す身体になってます。
長くなっちまいました!
おやすみなさい、行ってらっしゃい!🙆♀
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