小澤の初演技

今日見た夢は舞台に出る夢でした。夢の中では日々稽古をしてセリフ演技を徹底的に詰め込んで、迎えた本番のようでした。しかし夢が始まったのは本番直前、稽古の記憶なんて一切ない。セリフも手元の台本確認しないとわからない。出番はすぐそこ。一回出たらしばらく出ないといけないシーンらしい。セリフは全部入らない。ええい出たとこ勝負だ!と舞台に出て覚えてたの一言目を喋った瞬間、観客からスタンディングオベーションを浴びる夢を見た小澤です。少しでもできたら自分を褒めてあげようという暗示だと思って頑張ります。

そんなこんなで今日は初舞台の時の話をしますね。

今は神保町よしもと漫才劇場となってる劇場。以前は「神保町花月」という劇場で若手の芸人がお笑いではなくちゃんと本格的にお芝居をやるいう劇場でした。今や有名になった芸人さんで昔はこの劇場に出ていたかたも数多くいらっしゃいます。僕もなんだかんだ10回くらい出させていただいてる気がします。

そんな小澤が初めて出たのは「神保町花月7周年記念公演」という節目の記念すべき舞台。芸人一年目7月のことでした。

ある日メールが届きます。「神保町花月7周年記念公演エキストラの募集」。主要なキャストはサカイストさん犬の心さんを初め先輩方が名を連ねる中、一年目にエキストラでの出演募集がかかっていたのです。エキストラと言えども一言二言セリフがあるかもしれない。ないにしろ求められるのは当然「演技力」。NSCの時演技という授業がありますが、その時の評価は全くと言っていいほどなく、いないのと一緒でした。

さてそんな中でこのメール。小澤は何を思ったか「出演させていただきたいです」と返信します。一年目だから仕事を選んでる暇なんてない!苦手なことにも挑んでいかないと!!などという意気込みがあったわけではありません。理由は単純です。

エキストラくらいだったら出来ると自信満々だったから

どっから出てくる湧き水のような自信。演技授業で輝けなかった小澤は家で勝手に一人輝きを信じているのでした。

いざ、稽古に参加するとなったその日。輝きながら神保町に向かう小澤。稽古場について同期が固まってるのを見つけます

全員NSCの時の演技選抜でした

一瞬にして輝きを失う小澤。そうです、普通に演技に自信がある人たちしか参加しないエキストラなのです。明らかにノーマルカードの小澤はここで冷や汗をかきます。

先輩方も集まり初め、演出家の方が入ってきます。なんとその方はNSCの演技講師もやられてる方でした。

まずい。小澤は気づきます。演技選抜はもちろんこの方が決めています。つまり小澤は以外のエキストラのことは知っているのです。演技力もなく名前も知らない小澤は完全にアウェイで向かい風です。心配は的中してこの公演期間中小澤いじりも込められつつ「そこのお前」とずっと呼ばれることになります。さっきまでの輝きはどこへいったのか。

さて肝心のエキストラ。舞台の話は現代と戦国時代をタイムスリップする話で小澤に与えられた役は「AD」と「農民」。農民のは殺陣をするシーンもあるまじでちゃんとしないといけないエキストラでした。まずいです。細かく演技指導をしてもらいます。持ってる武器が三回弾かれて最後大きく弾かれて切られる演技。小澤。超下手。弾かれる時もそうだし、切られる時昆布みたいに体が揺れます。なんどやっても治らない。本番直前までそれが続き他のシーンに比べて明らかにおもしろになってる。演出家さんが「このシーンが舞台の質下げてんだよな」と小声を言ってると聞いた時には本気でエキストラやめさせてもらおうと思いました。エキストラが途中で降板ってなんやねん。

最終的にギリギリまで先輩方に指導いただきなんとか見れるシーンなりました。よかった、本当にありがとうございます。

一方「AD」エキストラ。これは本当に最初の方でて「はい!」とただ返事するだけの役でした。1日目2日目と終わり、公演も半分がすぎました。その日もいつも通り「はい」とだけ言うつもりのAD小澤。舞台が始まりプロデューサー役のサカイストのマサヨシさんが入ってきます。「みんな今日も頑張ろう!」に対して「はい!」これで終わるシーン。同じことをするだけ。ここで思いがけない出来事が起こります。

「それじゃあみんなの名前を聞いていこうかな」

公演も半分が過ぎ、マサヨシさんがアドリブをはさみ出したのです。エキストラで参加してる一年目の子に少しでもスポットライトをと、してくださったことだと思います。しかし小澤テンパります。自分の前にいじられてる子は特技を披露して笑いを取っています。まずい、何もないぞ小澤!!どうしようどうしようと思ってるうちに「君名前なんていうの??」と聞こえてきました。もう俺の番だ。。とりあえず名前を。『バイザウェイ小澤です』

会場が静かに笑いに包まれます

マサヨシさんもまさかの回答に劇中ながら半笑いです。妙な名前で妙な空気にしてしまった。。どうしよう特技もないし。でもさすがのマサヨシさんでした。

「それ本名か?」

「違います」

「本名は?」

「小澤隆史です」

「そっちでいいだろ!」

さらに会場大笑い

名前しかない男を舞台上で面白く仕上げたのです。かっこよすぎる。お陰様で毎公演いじって頂き、千秋楽、エキストラも舞台上で挨拶させていただけることになり、名前を言っただけで爆笑が起きてました。本当に感謝です。

そんな初舞台でしたが、その後その演出家さん演出で何度か神保町に立たせて頂きました。ちゃんと名前も覚えていただき少し成長できたのかなと思っております。この話を思い出すたびにできない自分を思い出し、少しできる自分を褒めるようにしております。そして何か新しいことは始める時このことを思い出しております。

長文読んでいただきましてありがとうございました!

それではよい1日をおやすみなさい、いってらっしゃい🙇‍♀️





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