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[2022BTSFESTA]ダンスの変遷から見る、ダンスチームの起こしたかったこと

2022年のBTSのFESTAで、未公開だったダンスプラクティス動画が公開されました。未公開だっただけに、公開されているバージョンとは微妙に違っている部分もあり、音楽番組のオンエアと見比べたりもして、とっても嬉しく、楽しく過ごしました!

こうして年代順に並んだのをひとときに見てみると、ダンスの傾向に変遷があるのがよく分かります。ダンスは好きだけど専門じゃないパクチーが、素人目線で気楽な感想を述べながら、「BTSのダンスチームは、何を実現させたかったのか」、これだけあれば読み解けるんじゃないか…と、無謀ながら思いついたそんなテーマを問うことに、チャレンジしてみたいと思う。

’We are bulletproof PT.2’ + ‘No More Dream’

おおお〜〜〜〜〜!!!

ホ・ソ・ク・!ホ・ソ・ク・!

すごい…J-HOPEくんが一人段違いですごい…みんなが曲に込めたパッションを、表情や力を込めて表現しようとしているのに対して、J-HOPEくんは音楽のトーンとダンスが息を吸って吐くように完全一致している…。そして後半、マスクをつけたり外したりするのは新人パフォーマーには荷が重そうなタスクだが、難なくこなすJ-HOPEくん。

SUGAくんの一生懸命っぷりと筋肉に、彼、文系風だけど、元バスケ部員の体育会系だったな!と思い出した。感謝。

ちなみに以前公開された「We are bulletproof PT.2」のフィックスバージョンと見比べると、フィックスバージョンのジンくんはめっちゃ上手くなってるんだよ…。感動…。

'N.O'

一度気になると最後まで気になる、名前の入ったユニフォームが、後ろ前逆であることに。この辺りからダンスの喜びに目覚めたように、Vくんが輝いて見える気がする。

'Danger'

く〜〜〜ぅん!膝の角度や腕の伸びきるタイミングなど、ディティールがぴちっと合った美しいダンス!フォーメーションのバリエーションも細かく複雑に、しかしとても配置が美しく整っています。今やすっかり失われた懐かしいジミンくんのこのテイスト、可愛らしいですね!SUGAくんのオンザ眉毛、好きでした…。

ジンくんの顔は、デビューしてから変わってない説と変わった説とありますが、「メディアに洗われる」という言葉があって、わたしはジンくんにはちょっとそんな印象を持つ。デビューしたての子が、露出が上がるにつれどんどん垢抜けて美しさの質が変わっていくのを言うのですが、ジンくんの場合、表情筋の使用頻度が劇的に変わって、顔を構成する筋肉のバランスが変わっていったように見えます。この頃が今の印象になる前の最後の方だというイメージ。

‘Butterfly’

お、、おお〜〜〜〜〜う…。ここですごい方向転換を図ったダンスチームの勇気がすごいと思う。せっかくレベル高く整った、細かいところまで揃うガシっとパワフルな路線を捨て、全く音の取り方や体の使い方や手先の意識の置き方が違うダンスに、振った。みんな、このダンスを腑に落として踊ることができるのか?

…No problem!

合言葉は、「ジミンがいるから大丈夫」。

このプラクティス動画を見ると、もともと振り付け家のファンだったらしいジミンくんには、どこにも迷いがない上に真骨頂…。これまで結構力んでパワーをはっきり感じさせるスタイルで踊っていたのを、固い殻を捨て、力みを捨て、全ての柔らかさをダンスに転化させておる…触れれば壊れる、蝶のように…。

プラクティス動画の時点ではやや、他のメンバーにはところどころ頭の中に「?」が浮いているのをすこ〜し感じるんだが、そしてオンエアをいくつか見てみると、「切ない・辛そうな表情」と解釈して一生懸命表現しているのを見ることができるのだが、例えばこちらを貼っておく。

ジミンくんは、辛くない。ジミンくんは、これは完全に、「耽美」…。ちょっと恍惚、ちょっとエロス、ジミンくんの視線の先を見てみて欲しい…!彼は一体その視線の先に何を見ているのか、しかし確実に彼には何かが見えておる…!冒頭の、音楽のトーンとダンスが一致しているJ-HOPEくんの、まさにジミンくんバージョン。ハモリの高音も実に無理なく自然に気持ちよく声を出していて、もう、まるで、完全に、この曲の住人(?)のよう。

続く「Am I Wrong」にも通じる部分があるのだけど、この時期この路線を選択したことで、BTSのダンスの方向性が一気に枠が取れたというか、独自の表現力を増していく方向へ進んだと思う。少しモダンな、アート寄りな、それはつまり指一本一本で表現するものがある、感情の方に充実したエネルギーがないと、見ている方には何をしているのか分からないスカスカの振りになってしまう、そしてそういった抽象的なニュアンスは、複数人数で動きを揃えるのがとても難しい!…めちゃめちゃ難易度高いと思うんだけど。

J-HOPEくんとジミンくん以外のメンバーに固まったジャンルのダンススキルがなかったことが、逆に、この路線を選択するのを可能にしたのかもしれませんね。

この振り付け、実際はすごくみんな戸惑ったと思うけど、でも目の前に答えがあったら先に進めるじゃないか。

そう、みなさんご一緒に。

「ジミンがいるから大丈夫」。

‘Am I Wrong’

ケブ・モ、この曲をきっかけに聞くようになりました。オリジナルはふつ〜の歌詞のラブソングですが、こちらかなり社会派の内容になっています。

そう。そしてこの振り付けこそ、ダンスの分かりやすくカッコいいテクニカルな部分が少なくて、なんでここでこれ?という「?」が、特にVくんを見てると「わけ分からん…」という心の声が聞こえてきそうな気がする。ちなみにSUGAくんは「これもお仕事ですから」、ジョングクくんは「ヒョンたちと踊るなら何踊っても楽しい」。ジミンくんはかちっと落としている、さすが舞踏出身は抽象的な振り付けに強いな〜〜!

それではオンエアを見てみよう。

きゃあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!完全に腑に落ちています!そうです!ユーモア路線なんです〜〜〜!かっこいい〜〜すてき〜〜〜〜!ジンくんとSUGAくんの顔芸〜〜〜〜!

みなさん。風刺は、コミカル、そして真剣に、おしゃれに、スマートに。耳に痛いだけでは誰も聞きません。甘い糖衣に真実の苦さが入っているからこそ記憶されるのです!内容はかなりエグいですが、なんて愛らしい表情なのでしょう。ギャップよ。

そう。BTSは、がつがつ踊ってかっこいい系のカルグンムだけじゃなくなったのです。デビューはゴリゴリの社会派だったけど、オラついた男っぽさだけじゃなく、彼らのパーソナリティを、愛らしさを存分に発揮させた社会派の表現だって、エンターテイメントとしてハイクオリティなの〜!

ところで最近RMくんの履いている風なグリーンって、今流行ってるの?

‘Tomorrow’

わたしはこの頃のジンくんのビジュアルがどうしても好きで…「冷蔵庫をお願い」とかの頃ですよね?一時期一生懸命画像集めていましたよ…。

もうこの頃には気がつくとジミンくんに目が吸い込まれているジミンダンスが形作られているのですが、久しぶりにじっくり見たら、J-HOPEくんがかなり踊り方をジミンくんに寄せていることに気がついた。

それぞれダンスに個性が表現として出てきているのも、このあたりからかもしれない。

‘MIC Drop’

SUGAくんのラップで、腕と指がきれい…ってのと、RMくんのラップで、床に手をつくメンバーたちの、「びたっ」って音がリアルですね。

というか…大好きなので、言葉はありません…。しいて言えば、個々の表現力がより必要になる振り付けにシフトしていってる感じがします。

余談ですがわたしはこの「MIC Drop」の動画が好きで。

MAMAのステージのためにダンスブレイクシーンが挿入されているのですが、通常の振り付けのところはやや流して踊っているジミンくんが、追加されたセクションになると本気モードでリハーサルをしています。その別の人みたいな切り替わりっぷりに、頭がダーンと撃ち抜かれたみたいになって、「ひぇっ(ヒュッ)」と声なき声が出ます…。

‘Pied Piper’

…ごちそうさまでした…!

RMくんの眼鏡が本気眼鏡っぽいのが嬉しい…。当時こういう振り付けがまるでエロくならないジンくんと、結構ずっと卒なく上手いSUGAくん。

‘Best Of Me’

公開されてすぐ、10回は見たんじゃないかしらん…!てくらい吸引力のある動画でした…ありがたい。ありがとうございます。ジンくん、頑張って…!と、つい手に力が入ってしまう。ダンス部長2人がフルのエネルギー使って踊っている感じがします。難しすぎるよ〜!うぇええぇ〜。ジンくんの代わりに泣きたくなっちゃう。

このあたり、過渡期というか、ダンスの傾向が新しいシーズンに入った感じがします。メンバーたちの見た目のシャープさから、ハードスケジュールが伺える感がありますが、みんなすごい貫禄出ていますね!キャリア、技術、認知が上がって、「もう一段上げよう…」とダンスチームが思ったのか、どうか。

ここに一つ、本番の動画を貼ってみる。

これを見た時の、頭の中にぽっと浮かんだ言葉は、「滝行…」だった。あの、滝壺にて膨大な量の水に、ざばざばと、びしびしと、打たれ続けるやつですね。やったことはありませんが。降りしきる紙吹雪がそう想起させたのでしょうか…。

ARMYさんが作ったライブに歌詞を載せてくれている動画を見ると、泣きます。彼らが肉体の疲労限界までストイックに酷使して、舞台に立つために日常している必要なすべての準備と本番とを、早回しで見ているような振り付けに見えてくるのです。終わりのない試練が絶え間なく続くのが、さながら滝行のようだとわたしの頭は思ったんですかね。そして極限の時、朦朧とした頭で唯一考えられるのが「Best Of Me」、さながら赤子が母親を思う本能、その存在への思いだけでかろうじて条件反射的に立っている、そういう状態を再現しているような。

となると、曲を聞きながら、ダンスを見ながら、壮大なスケールのドキュメンタリーを、見ている側が想像して味わうものになってきます。さながら映画です。7人がさまざまなフォーメーションを駆使して、いくつもの情景を描いていきます。その時彼らは踊っているのではなくて、背景だったり、抽象的な象徴だったり、他者だったり、を演じて立っている。そして7人の表現力を合わせて、「印象」を作るのです。

ええ。パクチーはこのシーズンの彼らのダンスを、「印象派」と名付けたいと思います!!!

ステージの上という区切られた空間の中で成立するダンスではなく、見ている側にさまざまなシーン、ストーリー、感情、情景を想起させる。見ている側の脳内のスペックを動員させて、より大きな印象を展開させる。明らかに見て分かる「喜・怒・哀・楽」でダンサーが提案するのではなく、あえて余白を作ることで、見ている側がそれぞれの人が感じるものを乗せて見ることができる。そうすることでダンスを見て感じる世界は人の数だけ、また見る時によって無限に広がるのです。

パフォーマンスする側にとっては、なんという難易度でしょう。

そして、果たして壮大にぶちあげてしまったこの論文を、パクチーは、ちゃんとどこかの結末に着地させられるのでしょうか…。

‘Airplane pt.2’

ご覧の通り、これまでの彼らの音楽的素養、ルーツから遠く離れたジャンルを持ち込んで、新しい魅力を展開させよう、という試みの回。

「個々のキャラクター」という個性を、ある程度均さずに生かしながら、異国の文化背景を借りてある「印象」を作ろうとしている。ええ、印象派論、まだ続いております。では一体どんな印象だというのか。

これは、

旅のある楽団員の独白

であり、

廃頽的な大人のセクシーさ

…でありますだよ…!!

この音楽のジャンルが何なのか。パクチーは非常に気になりました。歌詞の「El Mariachi」はスペイン語で「楽団」の意味ですが、メキシコに「マリアッチ」という音楽のジャンルがあるそうです。メキシコはスペイン語圏。しかし「マリアッチ」というジャンルを聞いても大分違う。スペインならフラメンコが有名で、振り付けにあるように手を叩いたりもするが、こちらも音楽的には結構違う。

何じゃろな〜〜〜と思って記憶を総動員してみましたが、…ううむ…冒頭の「ぽーんぽ、けんぽん」の太鼓のリズム、聴いたことあるような…カリプソ?カリプソに似てる…しかしカリプソは聞いてみると大分陽気でテンポが早い。違うな…カリブ…キューバ…キューバ…??!!

そこでキューバ音楽を検索してみると、どうも「バタドラム」という太鼓が冒頭の「ぽーんぽ、けんぽん」の音と似ている気がする。「バタドラム」はキューバのいくつかある音楽のうち、「サンテリア」という宗教音楽(歌と楽器と演劇的なダンス)の主要な楽器で、アフリカのヨルバから奴隷として連れてこられたヨルバ人が、彼ら独自の信仰を守るためにキリスト教とミックスさせながら成立したものらしい。特にエレグアというトリックスター的な神様・精霊のダンスが印象的でした。ちょっとコミカルでもある。さらにピアノのホンキートンク(調律のくるったピアノ)もキューバと言えば、のブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブっぽい。

…こういうの調べて、聞いたことない色んな音楽聞いてる時が、一番楽しい〜!

後に、どこかの音楽レーベルのコラムで「ラテン音楽」と、そしてこの年はラテン音楽をサンプリングするのが流行ったって書いてあったわ……ラテンか…ラテンでいいのか…。今回、ラテン音楽がパクチーまったく無学であることを再認識しまして、ラテンとはヨーロッパ音楽(ロマ含む)、アフリカ音楽が、ヨーロッパの地で、あるいは南米でミックスしたジャンルでありますが、そのベースがどこであるかによってラテン音楽は様々なジャンルで溢れておるのでありました。すごい多種多様に複雑なミックスカルチャーです。奥深くて全然括れない。

…すみません、話をプラクティス動画に戻しましょうね。

ラテンのサンプリングを流行らせたカーディ・Bさんには南米にルーツがありましたが、そうでない人にはただ借りてきた借り物になっちゃう。そうしないためには「自分ごと」がきちんと融合していないといけません。そして借りてきたことで出来る、自分たちだけの「新しい提案」が必要です。

マリアッチ(楽団)。旅から旅へ、ステージからステージへ移動する。子供の頃からそれを夢見て、そればかり、それしかせずに大人になる。ステージに生きる人生はいかにも華やかに見えるが、それ以外の時間は意外に地味で、裏方、芸事に必要なルーティーンに疲労、物憂い気怠さ、定まらない不安定さ、どこか根無草のようでもある。若くても身ひとつで自分を養う、プロフェッショナルな大人の男。

この曲は全編、そんな大人の男の独白である。どこから来たのか、明日はこの町にはいない男。「俺の話を聞いてくれるかい?」。そういえば有名なバンドが来ているって聞いたような…。どうやら愚痴のようである。

南米の、強い日差しと暗い室内。土埃の舞う乾燥した空気。汗ばんでしっとりした肌に張り付いたシャツ。強い照明の当たるステージに、埃っぽく暗い舞台裏。ふたつの対比は、違うものなのに、同じもののように似ている。

ここで音楽番組のオンエアを貼り付けてみよう。

…セットがよく出来てる〜!

旅の楽団には、同じ役割の人が二人いない。それぞれ皆違った機能、違う楽器、違う演奏法、それが「バンドの音」というひとつのイメージを融合点にして心をひとつに合わせる。彼らのダンスは、さながら楽団、それぞれがばらばらに振舞う瞬間がありながら、イメージする「印象」は揃えている。

ステージに生きて大人になった自分たちと、南米の風土とステージの相似、音楽を生業に生きる旅のマリアッチと、意外に華やかでもないステージ以外の日常。そんな生活に倦んでもいる。やや廃頽的な大人のセクシーさ。これらが、彼らがラテンの文化背景を借りることで、より豊かに語れると考えた「印象」の、ラテンと共通する部分である。

そして、彼らの新しい提案が、「21世紀の韓国製マリアッチは、馬車でもなく、バスでもなく、ファーストクラスで旅をする」というところだ。

だからタイトルが「Airplane」な訳ね!なるほど!

「廃頽的な大人のセクシーさ」路線でセクシーが開花するのは、そうです!ジンくんです!開花です!ラテンのダンスは、男性もすこぶるセクシーですから!そしていくつかラテン系のダンス(社交ダンスに似ているやつ)を見ていると、ジミンくんと同じシューズ を履いている人をちらほら。ジミンくんのヒール付きのシューズ 、みんながクッション性の高いスニーカー履いてるのに対して踊りにくくないのかな…と思ったことはままあった。違うよ!ラテン系のダンサーはこれで激しいダンスしてるだよ!

さらにここでみんなをよく見てみると、ラテンダンスのセクシーさの一部借用として、指の使い方がみんなきれい。特に小指、なんつうの?雛鳥をつまむみたいな、繊細な手つきで、簡単に言えば女性的。

こういうディテールがあることで、「印象」が成立するんでありますなあ!!

…はい。永遠に語れそうなので、次。

‘Black Swan’

ごっ………ぐ、ぶわぁ〜〜〜……。

気がついたら勝手に手が繰り返し再生してたけど、5回目くらいに泣きそうになってたよね…。そしてさらに5回くらい見たけど…。

これ…史上最高の「Black Swan」じゃない…?

この回のカムバックには特に力を入れたんだと言っていたのを思い出した。本当に、まじで、ものすごく力の入っているダンスである。力んでるって意味じゃないよ。精度の高い練習を積んだのが見えるようって意味です。

印象派論を続けますと、こちら、再び彼らから遠く離れたルーツを借りてこれまでの彼らに持たない「印象」を作っております。「Black Swan」と聞いて最初に連想するのは「白鳥の湖」である人は多いと思います。「クラシックバレエ」は、ええ、間違いなくHip-Hopから遠いでしょう。クラシックバレエを借りることで作りたかった印象は「静謐さ」「厳密さ」、そして「白鳥の湖」から借りる印象は、「闇に落ち切った者」。このみんなのいる練習室の床が、「闇」あるいは「スランプ」という名の海の底辺、海底の砂地のように、そしてそれが広がってるのだけど、暗くて遠くはよく見えない、そんな景色が、印象が浮かんできませんか…。上を向きながら沈んでいく、もがいても落ちるだけ、ゆらゆらしていても海藻じゃなく…。

でも借用の要素を微塵も感じさせないくらい、このプラクティス動画を見ると彼らの血と骨と肉になっていると思います。体から本当に音が出てるみたい…。まるで再生速度を上げたり下げたりしているかのような、スローな動きと瞬時の動き。ポジション移動なんか目が追えないくらい、忍術のようですよ。オンエア用の動画でここまでを感じなかったのは、歌いながら踊るタスクの難しさのせいか…。そして冒頭のジョングクくん、前奏で頭がピコッと上がっちゃってますが、何か気になることがあったのでしょうか。あの姿勢から羽ばたきの動きができるなんて、相当肩甲骨が柔らかいんでしょうな。

そう。滑らかな関節のコントロール。そして、この回は「オフ・個性」です。さながらクラシックバレエの群舞のように、揃っていることこそ正解です。この動きでは相当な難易度でしょうが…!

彼らはこれまでの蓄積を壊し、そこから新しいものを積むんだなあ…。斬新、かつ新鮮(同じか)。「Black Swan」は曲も好きなのに、こんなに彼らが新しいチャレンジを、血の吐く思いで努力して、表現してくれるなんて、なんてプレゼントだろう。このダンスは血の吐く努力が要るでしょう。間違いなく。

例えばさ、「MIC Drop」は人気だよ。ここでまたああいうのやったら受けるって、そりゃ当然分かってると思うよ。でも自己模倣を始めたら、もう腐っていってしまうのだよ…!絶対あると分かっているスモールスケールの期待に応えて、同じ畑を掘り続けていると、予定調和の声援で終わって、お母さんと子供のような関係になって、ゆっくり小さく、最初にあった確実な輝きは腐敗していく。伝統芸能はそういうばかりではないけれど、期待に応える振りをして、裏切ってでしか、現状維持、もしくは上昇しない。

ファンも、自分自身をも裏切って、新しい世界を、新しい表現を獲得しようともがき、そして彼らは一味違うステージに至る。違う景色を見せてくれる。この曲もこのダンスも大好きだし、そんな彼らが大好きだ…!

‘Butter’ (PERFORMANCE REHEARSAL VER)

最初、この動画が公開されなかったのは、冒頭のジンくんの投げキッスが18禁すぎてお蔵入りになったのかしら…と一瞬思ったけど、違った。

きっとFESTAのために取っておいてくれたんだ…!!(泣)

印象派論の時代は、すでに終わりました。

印象派の時代を経て、彼らが得たもの、そしてダンチームが起こしたかったこと……それは、

これだ〜〜〜〜!この動画ですよ!!

実はこのテキストを書いている段階で、新曲が公開されました。「Yet To Come」、そのMVを見ていて、わたしはある思いを持ちました。それはこの今回のnoteのテーマの答えともなるもので。

BTSのダンスチームは、彼らに基本的なアイドルとして必要なダンススキルを身につけさせた上で、さらにその枠組みを壊して新たなダンスを構築することにチャレンジさせ続けた。そうして身についたのは何だったかというと、アイドルの定型のジャンルの力に頼らずに、自分が曲に持っている世界観を、ダンスの振りで表現する力です。

ダンスは、歳を取るに連れて、得意とするものが変わっていくのは仕方のないことでしょう。でも動きが少ないダンスで、能弁に語ることだってできる。ラテンにもそういうダンスがありました。それに必要なのは、自分の気持ちを自分のしている動きにトレースする訓練です。

彼らは、彼ら自身が曲に感じているものを、動きにストレスなく転化したとき、予め用意された振りであるかどうかに関わらずそれはパフォーマンスとしてステージで成立する。それぞれそこにある7つの違う心が、一つの曲からそれぞれの世界を獲得して、それが心の動く様に合わせて発揮され、ステージ上で一つの複雑な有機的な世界として融和する。わたしたちはそれを見て、単純に「楽しい」とか「かわいい」とか思ったりする。しかし起きているのは実際、とてつもなく複雑な、7つの宇宙がそれぞれビックバンを起こして連鎖反応を起こしている様なのである。

ほう…。そうだったんか…。

‘Butter’ (GRAMMY VER)

おお〜これはですね…。本番の方で色々言いたいことあったの!本番の動画でもいい?このグラミーのパフォーマンスはメンバーそれぞれに「ほう!」と思うところがありまして、それを綴っていきたいと思います!

<ジョングクくん>冒頭のリフトから降りてくるスタント、安全ベルトを外す動作が、実に、実に!スム〜〜〜〜ズ〜〜〜〜〜〜!いや、なかなか、器用な人でもこんな上手くいくかな…目線をやっていませんね。素晴らしいです。安全ベルトなしでこういうリフトを使うことはありえないのですが、安全ベルト外してるなんて、気づかない人もいたでしょう。

<J-HOPEくん>曲の最初の方、ステージを移動する時に足をつっかけてしまいますが、「おっとあぶねえ」の雰囲気から、歌中の「フッ」に間に合わせた姿勢の立て直し、ステージ人ですね…。

<ジンくん>手の怪我のため、ダンスに参加しないシーンで、彼は司令塔のようなキャラクターを演じています。特に刮目したのは2'06"あたりの、指をこつこつやる仕草…すごい!上手い!歌う、演じる、段取り、トリプルタスクの出来る男です…!ただ出来るだけじゃない、すごいクオリティ…!!

<ジミンくん>実はジミンくん、このグラミーのダンスむっちゃくちゃクオリティ高いんですよ…隅から隅まで、完璧です…!これまで「ジミンくんダンスすごい…!」と思う時って、いい意味で浮いているというか、他のメンバーと少し違ったトーンがあって、ディティールが多いというか、緩急にすごく差があるというか、彼のこだわりは美しいのですが、ある時期まで周りのメンバーとはギャップがあった。しかしこの「Butter」、彼だけ特に上手いとか、浮いて見えることはないと思います。合っているのです。合っている上で、もう繊細な、ミクロの世界で整えてきている…!

<SUGAくん>別のnoteでも触れたのですが、彼のラップパートから特に、セクシーさがだだ漏れている。意図していないのに漏れている系の…。出来る男×グラミーでパフォーマンスしているという高揚×前髪×開襟…で閾値を超えた感あり。万感。

<RMくん>安定して、無理してなくて、通常な感じでいるのが逆にすごい。ちょっと演技しているところなど、少し笑ってしまうような感じもあり、ますます逆にすごい。え、なんでそんなに通常運転?途中マイクが変な方向に向いてしまっても、集中してパフォーマンスしておった。当然なのかもしれないが、さすがだ…。

<Vくん>曲中、彼が設定したキャラクターが一瞬も崩れず、キャラクターとして生き切っている、完璧な演技力と表現力。一瞬の仕草、表情、角度でさまざまな役を演じ分けるVくんのパフォーマンス、今回はスリルを楽しんでいるスパイの、危ない魅力みたいな(言葉にすると陳腐だな)のを、実に充実して演じていました。見事。

みんなでジャケットを絡めて一つにするジャケットワークのところ、成功率が低かったと言っていましたね。あの本番の笑みは「成功だ〜〜!!」の笑みでもあったのか、と、チャレンジ精神の高いメンバーたちの精神力には頭が下がります。いや、 わたしの頭下がってどうということも起きないのですが。

ステージでこそ、生かされる。彼らの蓄積したダンススキルとジャンルに囚われない表現力、それもBTSのダンスチームの目指したところかなと思います。練習室で完璧で、ステージではそうでもないことなんてざらです。照明が眩しく当たったり、急に暗くなったり、もし車を運転しているときにそうなったら、恐ろしく気が散るだろうことは想像できると思います。ステージとはそういうところです。そしてそれは本番とリハーサルの時ばかりがそうなのです、練習室のような、音も刺激も遮断された安定した空間は、練習室でしかないのです。

でもその雑多な情報の洪水の渦中、イレギュラーも起こり得るステージの上で、彼らが彼らとして立って、それでパフォーマンスが成立する、それが骨頂だろうと思います。アイドルとして成立する基礎と、さまざまな枠組みを外したダンスを体得することで、曲の魂と自分を一致させて、その時に一番気持ちの良い動きを自然に選び、精度高く実現することができる。それが他のメンバーたちと調和している。

それができるダンサーになるように、というのが、BTSのダンスの今の到達点なのかもしれない。

というわけで。

パクチーは大変面白かったです!正直結論なんてどうだっていいのですよ!第一、ここで扱ってない公開済みの動画もたくさんあるわけで、そこまで網羅しようとしたら、あれですよ、大学のBTS学科の卒業論文になってしまいますから!

新曲3曲についても、しばらくしたら、感じた感動を、何か書けるといいな〜と思っています。

それでは、また!



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