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Mリーグ 11/10二戦目 「わかる」と「できる」には紙一重のあまりに高い壁がある

良くも悪くも驚愕の麻雀が繰り広げられることが多いMリーグですが、こういう鳴きを見ると「こちら側」の打ち手もいるものだと少し安心させられます。

牡丹たんのように自分のツモ力および世の中の全てに疑心暗鬼を抱いていると、こんな牌をスルーするのはアガリ放棄に等しいと考えてしまうのですが、門前派とされる方々がこういうのをスルーして結局リーチダブ南ドラ赤みたいな手をアガられているのを見ると、自身のツモすら信じてやることのできない自分の臆病さに嫌でも向き合わされてしまいます。

白鳥さんがこの世の全てに疑心暗鬼を抱かれているのか否かは定かではありませんが、この局ではラス牌の白を上手く捉えてマンガンのツモアガリ。
門前派の異様なスルーから生み出される高打点ばかりが世間ではチヤホヤされがちですが、こういう鳴き手への賞賛がまだまだ足りないように牡丹たんは感じています。

上述のリーチダブ南ドラ赤も、この手も同じマンガンであることに変わりはありません。
なのにいざアガリ発生するとやたらと前者が評価される現状に、牡丹たんは深い悲しみを抱いています。
本当は鳴いて行く方が技術が求められるのに…

閑話休題。タイトルにもある「わかる」と「できる」の差について書いていきましょう。
白鳥さんは北のポンテンで親の仕掛けに2mを勝負。
この点棒状況でラス前を消化できる価値は高く、オーラス2着目がマンツモでも足りずになることを考えると2mを押す価値は十分あります。

人読みの話をすれば、滝沢さんの仕掛けは好形と打点を兼ね備えていることが多く、この3sポン7pアンカンはいかにも危険そうです。
しかしその持ち点と最後の親であることを考慮すれば、中華料理店のチャーハンくらいパラパラな形でも暴れていくことは考えられますし(ドラを切ってるので流石に手牌で場替えできるレベルとかではないですが)、実際に滝沢さんもRTDで長く続いた不調を抜け出したくらいの時期からこういった仕掛けを増やしているイメージがあります。
ここまでは「わかる」の範囲です。

ただ、「できる」人でないとこの生牌2sは押せません。
「局消化の価値が高い」「滝沢さんの手が整っている(この場合は=テンパイ)とは限らない」とわかっていても、人間は他人へのイメージだったり悪い未来予想図に囚われてしまうきらいがあるので、2sがタンヤオトイトイにズドーンバキャバキャという懸念を抱いてしまいます。

ここではその恐怖にうち勝った白鳥さんが間も無くして最高の出場所から2000点を直撃しました。

この5mも同じ話です。
自分の手が現物の1sが絡む待ちで優秀なこと、アガって半荘を終了させられることを考えれば、放銃した場合のリスクを加味したとしてもおそらくこの5mは押し有利だと思います。
しかし、ロン12000と対面の白熊に似た男に威圧感たっぷりに発声されてしまった日には、3着落ちまで覚悟しなければなりません(親マン打ってもラスまでは落ちなさそうなので、それもこのプッシュを助けたかも)。

まあそれでもこういうのは押しちゃった方が得だよね、と口で言うのは簡単です。
しかし貴方は、いつどこでどんな精神状態でもこの5mを押す自信がありますか?

この時渋谷ABEMASは全体4位とは言えトータルポイントを大きくマイナスしており、あまり良い状態とは言えません。
更に一回戦で絶対的エースであるYouTuberの多井さんがラスを引いてしまったこと、そして何より彼自身に今季ここまでトップがなかったことを考えると、この時相当のプレッシャーを感じられていたのではないでしょうか?

↑のような経験を麻雀でしたことがある方は多分全国で30人くらいだと思うんで、我々一般人でも体験できそうな場面に置き換えて考えてみましょう。
例えばネット麻雀であれば、昇段や降段のかかった大一番があてはまるかもしれません。
特に6→7や10以上への昇段がかかった対局、逆に7→6のチャオがかかった対局などでは、かなりのプレッシャーを感じる人が多いのではないでしょうか?

ネット麻雀なんかやらないよ、というオッちゃん層の人たちには、プライド(意味深)を賭けた街中での麻雀が例示できるでしょうか。
僕がよく麻雀をしている場では大体1ヶ月働いて得られるプライド(意味深)の1/3くらいは1日で溶けてもおかしくないルールで日々死闘が繰り広げられていますが、これがもしプライド(意味深)1ヶ月分、いや、数ヶ月分が飛散することもあるような麻雀だったとすると流石に僕には平静を保っていられる自信がありません。
これは一部の富豪を除けば殆どの方に当てはまるのではないかと思います。

Mリーグで麻雀を打つ人たちのプレッシャーをプライド(意味深)で比較検討するのも馬鹿らしい話かもしれませんが、要するに麻雀は気の持ちよう次第で負うべきリスクが負えなくなってしまう(逆も然り)ということです。
これを踏まえてテーマ図をもう一度見てみましょう。

どれだけプレッシャーのかかる半荘でも、貴方はこの5mを押すことができますか?
昇降段のかかった一番で、ありったけのプライドを掻き集めてチップとした麻雀で、本当にこの牌を押せますか?
僕にはその自信はありません。「押した方がいい」と普段は頭でわかっていても、どうしてもオリてしまう日があると思います。
しかし、それでは「できる」とは言えません。

「わかる」止まりの人と「できる」人の間には高い壁があります。でもそれは、紙一重の薄さなのではないでしょうか。
高さに圧倒され恐れをなすか、壁を切り裂いて前へ進むのか。
その壁の先には、いつもこのような絶景が広がっているのかもしれません。


あ、多分7巡目の2pはポンテンとった方がいいと思います
とりあえず取り急ぎ。

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