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「まわり道」の勧め~「生産性」を高める?~_アートエデュテイメント#13

 アートエデュテイメントという視点で、主にビジネスを熱心に進められている方々を読者と想定してお話してきています。


タイパ(タイムパフォーマンス)

 皆さんは、タイパ(タムパ)重視派ですか? 
タイパとは「かけた時間に対する効果、すなわち「時間対効果」のことで、「コストパフォーマンス」の「コスト」を「タイム」(時間)に置き換えた造語で、和製英語」と、Wikipediaに掲載〈抜粋〉されていました。公式化してみるとこんな感じでしょうか。

 良く出される例としては、映画やドラマなどを2倍速以上で早送りで観るとか、最近の音楽はイントロが短くいきなりサビから始まるとか、話題のトピックスを検索ワードだけで把握するとか。なるべく少ない時間で、満足できる結果を得るといった感じでしょうか。
 このタイパに異を唱える方々も(得てして私のような年寄り世代に)結構多いのですが、そんな方々も、面倒くさいとか、つまらないと自分が思うことに時間を費やすのは嫌なものです。

無駄な会議への対処方法?


 組織の中で働いていると、このつまらない時間の典型として「会議」なるものがあります。上席の方のお話(大概は自慢かお小言)を聞くだけだったり、参加者が用意したレポートを読みあげるだけだったりとか、「おいおい、こんなのせめて動画配信にするとか、共有ファイルにあげといてもらえば、いいんじゃね?」ってコメントしたくなるケース、結構多いですよね。オンライン会議になっても実情はそんなに変わりません。
 
 そこで、会議の「生産性」を高めるコンサルタントとかが登場して、「事前準備が大切。まず目的の共有から…」とか「司会進行役を決めて、時間を区切ってアジェンダを…」とか、正しく導いてくれたりするわけです。ふむふむ、これでタイパの良い会議ができました…ってなると良いのですが、皆さんはどう思われますか? 
 
 「生産性」を高めるためには、二つの方向があります。一つは同じ結果を出すのに時間をどれだけ短くできるか。つまりコストカットの方向。これがよくあるコンサルタントの方向。もう一つは、結果の内容、レベルをどれだけ上げられるか。つまりバリューアップの方向ですね。バリューアップの方向って、実はあまり議論してないのではないかと思うのです。
 

「なんだか楽しい」はプロセスから生まれる

 
 先日実施した「企画会議」の様子を写真に撮ったのでご覧ください。

とある企画会議


 何とも微笑ましいシーンですよね。皆さんの会社、組織での企画会議で、こういう場面に出会うことはありますか?

 実際はアートカードを使ったワークショップの一場面ではありますが、お題として「都心で、これから50年は続く新しいお祭りを考える」という手ごわい「企画会議」であったことは間違いありません。参加した各グループから出された「企画内容」のアウトプットが、本当にバラエティに富み、深い内容であったことも印象的でした。タイパ(≒ 生産性)は非常に高かったと思います。

 楽しい時間、うきうきする時間に関しては、私たちは時間コストを意識するケースはまずありません。「もうそんな時間なの?」と、後で気づく程度です。えてして、こういう時間から生まれるアウトプットには「傑作」が多いです。その理由は、集中できている時間、互いに創発し合っている時間が、通常の「会議」より圧倒的に長いからです。まわり道のような時間をかけることで、結果のレベルを上げていくことができているんですね。

 時間を削る(コストカット)の発想から一度抜け出して、時間の密度を濃くする(バリューアップ)の視点で会議の進めかたを見直しでみることが重要です。言い換えると、会議の結果ではなく、途中工程、プロセスに注目して、ここをうまくデザインすること。これ、作品の創作にあたるアーティストの姿勢、プロセスと似ているんですよね。

 では、具体的にはどんなやり方があるのか? これについては次回にでも紹介させてもらえればと。
 
 え? ここまで読んだのに「タイパが悪すぎ」?
いえいえ、これも、楽しいまわり道ということで(笑)。


<筆者紹介>
臼井 清(うすい きよし)/ 事業開発アーティスト
株式会社 美術出版エデュケーショナル 教育研修支援事業プロデューサー
合同会社 志事創業社 代表 
<プロフィール>
株式会社諏訪精工舎(現セイコーエプソン)入社後、国内や台湾、英国、ドイツでマーケティングと人材資源管理(HRM)を中心に多くの経験を積む。2014年「人生を豊かにするチャレンジ」を応援するコンサルティング会社 志事創業社(しごとそうぎょうしゃ)を設立。各種研修・セミナーのプロデュース、ファシリテーション、顧客開拓マーケティング、企画運営などを手掛ける。美術出版エデュケーショナルの教育研修支援事業プロデューサーとして、アートのビジネスシーンでの活用も推進中。日経BP総研講師、丸の内プラチナ大学講師、(公財)パブリックリソース財団シニアフェロー。一般社団法人美術検定協会アートナビゲーター1級。


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