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喪主と故人が許すなら

 ちょっと自分には理解できない光景に遭遇した。

 晴れた昼下がりのことなのだが、喪服の集団がいた。近くに寺院があるので、これからお葬式に行くのか、帰ってきたかのどちらかだろう。

 その中の一人の女性に僕の両の眼は釘付けになった。明らかに服装がおかしい。確かに衣服の色は黒い。黒いのだが、黒のヒラヒラのついた黒いシャツに、こちらもヒラヒラの黒いミニスカ。黒いヒールに極めつけは黒のニーハイという全身コーデ。
 いわゆる“アキバ系ギャル”の出で立ち。

そんな恰好で参列している彼女を見たその瞬間、「日本終わったかな」と思ったが、むしろ始まったのかもしれないとも思った。

 そもそも黒ければいいと思ったら大間違いなのだが、最近、第三者的な目で客観視する訓練を怠らない僕は(第三者だが)、そこで様々な仮定を考察…というか持ち前の妄想力を最大限に爆発させる。

 そのオーバーニーソックスとミニスカが織りなす絶対領域は誰に向けられたものなのか。。。と。
 
 たとえば、故人が強烈なニーハイ属性の持ち主で、遺書にそう書いたのかもしれない。
 もしくは、故人の生前の職業がメイドカフェのオーナーか何かで、そのスタッフだった子が気を遣って敢えてその恰好で出席したのかもしれない。警察は制服で参列するし、他にも制服がある職業の人はそれを着るのは一般的なことだ。

 ということは、本人が「これは制服であり喪服です」と言うのであればそうなのかもしれない。ハワイではアロハが正装なわけだから、むしろ最大限の正装と言えなくもない。

 だがここで一点気がかりなことがある。
そのような出で立ちの人間は彼女一人なのだ。ニーハイ萌えの故人の遺書にそう書かれているのであれば、もう一人や二人は同等の服装の子がいてもおかしくないし、メイドカフェのオーナーが故人だとしたら尚更だ。 
 尾崎豊の葬儀の際会場の外には白いTシャツにケミカルウォッシュのジーパンがウヨウヨいただろうことを考えると、その点だけが腑に落ちない。

 そんなことを考えながら立ち尽くしている僕の前を、そのニーハイ娘は悲しそうな顔一つせず、自慢の絶対領域をチラつかせながら通り過ぎて行った。

 最後に、こんな不謹慎な記事を書いていしまったことを喪主と故人と遺族に深くお詫びすると共に、故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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