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【勝ちたいんや!】阪神タイガースのDynastyを見ないのか


 故・星野仙一監督が何度も宙に舞った2003年,18年振りの優勝に日本中の虎党が沸いた。生え抜きであった今岡や赤星,藤本にベテランの桧山,一度は星野監督に突き放された矢野,FA加入の金本に助っ人アリアスらがバランスよく躍動し掴んだ栄光だった。

 闘将と謳われた星野語録にこんな言葉がある。

ーーー『勝ちたいんや!』

 現役時代から勝利に貪欲な星野監督らしいフレーズだが,もとは坂東英二がゴルフでイカサマをした際に半ば逆ギレ気味に放った言葉らしい。それを星野監督が甚く気に入ったことで今でも有名な台詞となっている。(良い意味で)どんな手を使ってでも勝利を手にしたい,そんなパッションを感じるのは私だけではないはずだ。

 6月13日(日),パリーグの首位楽天に対してシーソーゲームを展開した阪神。しかし8回裏に藤浪が痛恨の同点弾を浴びると6連勝の道は閉ざされたかに見えた。

 野球というスポーツはどうして面白いのか,そんなことを考えさせられる9回表を見せられた。日本代表経験もある絶対的リリーフ松井を前に木浪が一歩も引かない展開。出塁は出来なかったものの,ベンチの様子を見るに誰一人として諦めていないことが伺えた。

 決して打棒が好調ではない梅野がこの日3回目となる二死からの四球で出塁するとディレートスチールを敢行。楽天のセンターラインに生じた綻びを梅野は見逃さなかった。

 二死三塁。こうなると梅野に付いていた一塁手は定位置気味にシフト。奇しくも一塁線が空く恰好に。狙ったのかは定かではないが,この間隙を痛烈な近本の打球が抜けていった。

 不思議と,この勝利からは選手全員の「勝ちたいんや」という虎達の意思表示を感じた。常にベンチから声援を送り届ける姿勢。楽天屈指の好投手を相手にしても簡単には折れない闘志。リードがあってもどこか緊張感のある面持ち。彼の闘将とは正反対の「誉めまくる」矢野阪神には似つかないのだろうが,2003年阪神のような雰囲気がスーっと吹き抜けた気がした。
 思えばここは仙台。球団新設以降初優勝をこの地にもたらしたのも星野監督その人である。両チームが首位として対峙したこの決戦、空から見守ってワンプレーに笑い、怒り、喜んでくれたんじゃなかろうか。

 言うまでもなく、いまの阪神はあの時と同じくタレントは揃いつつある。「黄金時代の到来」というには少し勇み足だが、着実に真っ黄色なDynastyのレンガが積み上がっていく音が鳴り響いている。

 

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