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【NYY】売り手市場でも方針変わらず(トレード所感)

今朝7時に幕を閉じたトレードデッドライン。例年通り駆け込みの取引が相次ぎましたが、売り手優位となったが故に引取先が決まらなかったアセットも散見されます。

NYYは総括しても4件のトレードに留まっており、結論からすれば傘下トッププロスペクトの多くは無風といったもの。
手短にDealを振り返っていきます。


①Jazz ChisholmをMIAから獲得

☆NYY獲得
Jazz Chisholm(IF/CF)

★MIA獲得
Agustin Ramirez(C/1B)
Jared Serna(UT)
Abrahan Ramirez(2B)

こちらは昨日のnoteでも触れましたが、一足先の7/27に成立した取引。今季ウォーウイヤーにして4月より攻守で精彩を欠くGleyber Torresや、6年契約の折り返しを迎えるも衰えを隠せないDJ LeMahieuに代わる内野手を欲していたNYY。
完全に売り手となったMIAの中核であったJazz Chisholmが放出濃厚となると、ライバルが少ない段階で獲得に成功。やや復調の兆しを見せていたTorresが2Bに残留し、Jazzが初挑戦の3Bへコンバートすることとなっています。

Jazzの魅力は通算ISO.200の長打力とリーグ上位のスプリントを誇る走力なわけですが、三塁守備においてもさっそく華麗なプレーを見せるなど走攻守でインパクトを残せそうな予感。
もっとも、彼最大の魅力といえばマイアミというパーティーシティを代表するほど明るくオシャレなプレイヤーである点。もちろん成績以上に目立つギアの数々は時に「過大評価」と呼ばれるわけですが、現時点では杞憂に終わるほどNYYのケミストリーにフィット。昨年までもBaderやDonaldsonといった外様選手がボーカルリーダー的な立ち回りをしていましたが、今季加入したStromanやVerdugoに加えてJazzもまたNYYのベンチをもり立ててくれるのかなと感じます。

対価の印象としては、「決して安価ではなかった」というのが率直なものです。残り2年半もの保有権があるJazzなので当たり前ですがね。
Agustin Ramirezは昨季より大ブレイクを果たしており、オフにロスター入り。正しくGary Sanchez 2世を思わせるRamirezは今季もここまで傘下最高の打撃成績を披露しており、3A昇格。最大の魅力はやはりHRを連発できる豪快なパワーでしょうかね。一方ではアプローチも堅実であり、適応にやや苦戦している3AにおいてもBB%=11.2 K%=18.4%と見事。捕手守備能力には疑問があるものの、1B/DHといったポジションであれば来年以降貢献できる存在に思います。今夏NYYが放出したプロスペクトの中では最も評価の高い若手であり、媒体によってはすでにTop100入りも果たしています。

Jared SernaもRamirezと同じく昨年ブレイクした若手遊撃手。2019年にJasson DominguezとのIFA契約によってボーナスプールの大半を用いたわけですが、雀の涙で獲得したSernaが化けてくれました。
小兵ながらもすぐれたEV・Game Powerを記録しており、昨季19HR・今季13HRを放っています。こちらもゾーン管理能力に長けており、BB%・K%ともに優秀。
守備力に関しても定評がありますが、SSだけでなく2Bや3B、昨オフのメキシカン冬季リーグにおいては一時LF起用をこなすなどUT性は抜群。ちなみにそのメキシカン冬季リーグでは規定最年少にしてリーグトップクラスの打棒を披露し、新人王を獲得しています。ただし、昨オフにRule5イリジブルとなっているため、今オフにはロスター管理が必要。

おまけ的な存在にみえるAbrahan RamirezもDSL・FCLで着実に結果を残していた実力者であり、傘下でも一気に評価を上げつつあった成長株。2B/SSでの守備力は際立っているわけではないものの、アセット3番手としては非常に優秀な選手だと自信を持って言えます。2022IFAクラスであり、イリジブルは再来年と時間的にもゆとりのあるプロスペクトです。

とはいえ、その直後に発生したトレードと比較すると相対的に安くみえるのかなと感じました。NYY傘下内でトップクラスの位置にいたAgustin Ramirezも、1B/Cとして役割のかぶるBen RiceがMLBにてソリッドな働きを見せる中での放出であり、彼を捕手として計算しても打撃型捕手・Austin Wellsの存在が障壁になっていたでしょうか。個人的にもRamirezとRiceが揃って飛躍を遂げた昨季より、NYYに残るのは”二つに一つ”と予感していましたし、さほど衝撃は受けませんでした。

Sernaについてはフェイバリットな有望株であったものの、3A昇格ですら早くても来年・再来年になることを考慮すれば、Win-nowモードのチーム構想からは外れてしまうのかなと。もちろん数多のプロスペクトが同様でありますが、序列的にもAriasやLombardらには劣ったということですよね。

②Caleb FergusonをHOUに放出

☆NYY獲得
Kelly Austin(RHP)
国際ボーナスプール $750k

★HOU獲得
Caleb Ferguson(LHP)

今年2月、ロスター整理を画策するドジャースから獲得したFergusonでありましたが、やはり巧者ドジャース。豪球左腕で知られた彼の姿はなく、移籍後は左右問わず痛打と失点を繰り返すバッピへと変貌。当初はFCLのZazuetaとDFA選手で大物リリーバーを得たNYYの勝ちと思われたものの、結果は残酷。思えば大谷のロスター整理で掴まされたGonzalezもDFAとなっており、ほんとにLADはとんでもないなと。二度とトレードしないのが賢明です。
ただ、こんなFergusonにもまさか買い手が付くとは…。国際ボーナスプールだけでも嬉しかったのですが、2023年にプロ入りした中継ぎ・Kelly Austinを獲得。Low-A~High-Aでの今季成績も良好であり、Good jobです。

③Mark Leiter Jr.をCHCから獲得

☆NYY獲得
Mark Leiter Jr.(LHP)

★CHC獲得
Jack Neely(RHP)
Ben Cowles(IF)

計算していた上記のVictor GonzalezやCaleb Fergusonといった新顔は不振、King無き後の回またぎリリーバーとして期待していたJonathan Loaisigaはお約束のシーズン全休。なによりクローザーとしてここ3年間フル稼働していたClay Holmesの支配力低下によってブルペンが瓦解、TDLによる中継ぎ補充は絶対命題でありましたよね。
もちろんTanner ScottやCarlos Estevez、そしてPete Fairbanksといったトップネームを追いかけていた噂もありましたが、最終的にCashmanが選んだのはカブスの苦労人・Mark Leiter Jr.でありました。名前からも分かるとおり、Jack Leiterのいとこであり元NYY投手・Al Leiterの甥にあたります。

保有年数は2年半と長いながらも、すでに33歳を迎えており、直球でゴリゴリ押すタイプの投球スタイルではありません。とはいえ、宝刀スプリッターを武器にリーグ指折りのK%=34.9%を記録している念願の奪三振マシン。旧来指標は伸びていないものの、投球内容はNYYブルペンと比較しても圧倒的であり、ここ2ヶ月に限ればxBA.150 K%=42%と尻上がりに成績も向上中。
特に中継ぎ市場に限っても、EstevesやJason Adam、Tanner ScottのDealを見れば大暴騰の様相がありましたし、どんな対価を差し出したのかと思えばJack NeelyとBen Cowlesの2枚のみ。ともに2021年ドラフトの指名選手であり、今オフにイリジブルとなるプロスペクトでした。

とはいえNeelyは下位指名ながら、身長2mから繰り出される直球とスライダーで傘下№1の中継ぎプロスペクトに成り上がった存在。正味、HillやCousinsすら崩壊していたらNeelyの運命はまた違ったものになっていたのかも。

そしてCowlesも下位指名ながら、今季コンタクトを改善し、クラッチな活躍で2Aペイトリオッツの主軸となった名手。昨オフ後のAFLにて非凡な活躍を見せた勢いをそのままに、見事トレードチップとなりました。彼は2年前のCooper Bowmanと被るものがあったので、この夏に放出されるという確信もありました。

こちらも総評として、惜しい選手を出しつつも、売り手市場の中にあってホットラインを有するCHCとうまく交渉できたのかなと。
そもそもイリジブル2名と中継ぎ投手の交換といえば3年前のHolmes獲得と全く同じ。違う点といえば当時のHolmesと異なり、Leiterはすでに結果を残しています。と考えれば、かなりお得感がある印象です。(もちろん当時のHolmesはもっと若く、3年半の保有権がありましたので簡単に比較はできんが)

④Enyel De Los SantosをSDPから獲得

☆NYY獲得
Enyel De Los Santos(RHP)
Thomas Balboni Jr.(RHP)

★SDP獲得
Brandon Lockridge(OF)

そして取引期限ギリギリを前にパドレスから中継ぎ右腕Enyel De Los Santosを獲得。AdamやScottらを獲得したことでロスタースポットの確保が必要となったパドレスにとってDe Los SantosのDFA等は避けられなかったと思いますが、うまくNYYが絡むことができました。

もちろんDFA候補と言われるほど成績は芳しくなく、22-23年に110イニング以上を投じても7本に抑えていた被本塁打が、今季40.1イニングで11本と壊滅的。97mphにヒットする直球は魅力にみえますが、その直球の被長打率が.683と言葉にならない成績です。
他方、スライダーとチェンジアップの成績は思いのほか良いため、ここは確実にてこ入れされるでしょうね。

対価となったLockridgeですが、2021年に2Aで大覚醒を見せたものの、ルール5プロテクトがされずに発狂したのを覚えています。幸い、ロックアウトのせいでMLBフェーズのルール5ドラフトが中止となったんですが。
それこそ2021年にトレードされていたならばショックでしたが、すでに彼への思い入れはないので喜んで差し出すレベルの選手。ロスター整理のトレードなんてこんなものですよね。

最後に

想像以上に小粒に感じれるトランザクションですが、個人的には好感が持てるもの。というのも、ギリギリまで噂されていたJack Flahertyは腰への懸念がありましたし、YandyやVGJは市場から撤退。SDPがScottへ放出した対価を見ても、Cashmanが思い切れるほどではなかったのでしょう。
ま~、この際パドレス並みに放出しちゃえってのも理解できます。個人的には例年よりトップネームのティアが弱いように感じていたのでこればっかりは仕方ないかなと。ポジティブに考えれば、冬のうちにSotoを獲得しておいて本当によかったなと感じました。

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