見出し画像

【NYY】先発投手問題-「Sevyは2番手に成り得るか」

Rule5プロテクト
現有戦力下でのラインナップ&ポジション考察
一塁手「Matt Olson」のトレード勘案
救援投手展望
遊撃手「Oswaldo Cabrera」の提案

と5つの話題をお送りさせていただきましたが,今回もオフの補強課題と目されている「先発2番手」にフォーカスしていきたいと思います。

(1)これまでのNYYの先発事情をおさらい

~2018年
2017-2018年に若手有望株であったLuis Severinoがサイ・ヤング賞候補に躍り出るような働き。2018年オフには4年の契約延長を締結し,今後のエース候補を確保しました。同年オフには当時傘下№1有望株であったJustus Sheffieldを対価としてJames Paxtonを補強。ここにワークホースの田中将大と,18年途中加入も7勝0敗と好成績を収めたJ.A Happを要した先発投手陣はリーグでも盤石な位置づけとされていました。

James Paxton

2019年
来る2019年シーズン開幕前にSeverinoがシーズン大半を棒に振るうような故障に遭い,Paxtonも故障を抱えながら夏場までは不安定な投球が続き,田中とHappは防御率4点台と期待通りの働きを見せることができませんでした。

J.A Happ

救世主として奮闘したDomingo Germanが18勝を挙げるサプライズもありましたが9月にDVで出場停止が決まるなど最後までドタバタ。ALCSでは強力な三本柱を擁したアストロズを前に,先発投手力で著しく劣ったヤンキースが破れました。

2020年
2019年オフには5番手であるSabathiaが引退したものの,Gerrit Coleを9年300億円で獲得するという大補強に打って出ます。

Gerrit Cole

これにより「①Cole②Severino③Paxton④田中」という豪華なローテーションが実現したわけですが現実は甘くありません。プレーオフでの強行出場が祟ったSeverinoはオフにTJ手術が決定。Paxtonも背中の怪我で開幕絶望(6月開幕のお陰で離脱は短かったが)。ColeはHOUでのCY級の活躍を見せられず,不完全燃焼感がありました。そして2014年からローテーションを支え続けた田中は十八番のプレーオフで炎上,遂には再契約をオファーをすることはありませんでした。

2021年
頭数すら確保できていなかったローテーションにFA市場からCorey Kluberを追加。2度のCY賞を引っさげてるとはいえ,直近2年の稼働率は不安そのものでした。また,先発2番手としてパイレーツからはJameson Taillonを獲得。(この際に放出したのが現在PITの超有望株となっているRoansy Contrerasら4名)

Jameson Taillon(左)とCorey Kluber(右)

近年で大きな故障を患った投手を2名獲得するギャンブルの結果として,Kluberはノーヒッターを達成するなど上々の成績を収めていましたが早々に故障離脱。Taillonも夏場までは不安定な内容で,2番手とするには乏しい成績でした。
しかし嬉しい誤算も。前年のxStatsが平均以上であったJordan Montgomeryの成績が良い意味で収束しERA3.62(112ERA+)を記録。Coleも粘着物質問題は無視できませんでしたがエースに相応しい結果を残しました。マイナーから昇格したLuis Gilもデビュー3試合を無失点で飾るなど鮮烈なデビューイヤー。
そして忘れてはいけないのがNestor Cortes Jr.でしょう。2019年所属時にはブルペンデーでGreenの後を繋ぐ「バルクマン」として一定の成果を上げていましたがオフにリリース。再びヤンキースに加わると投手コーチMatt Blakeの薫陶を受けて大ブレイクを果たしました。(ちなみにLAA・大谷を変則フォームで翻弄したのはあまりにも有名ですが,2019年時点においてもアームスロットの使い分けやクイックを多様していました)David Wellsを彷彿とさせる口ひげもいいですよね。

Nestor Cortes Jr.

(2)2021年オフ時点でのローテーション予想

1 Gerrit Cole RHP
2 (不在)
3 Jordan Montgomery LHP
4 Jameson Taillon  RHP
5 Nester Cortes Jr. LHP
- Luis Severino RHP
- Luis Gil RHP
- Domingo German RHP
×Michael King RHP

Gil,Germanは5-6番手候補。Kingはどう考えても中継ぎで花開きそうなので先発復帰はないとみる

2021年の成績を勘案してもCole,Montgomery,Taillon,Cortes Jr.の4人はローテ入り確定といえます。ただし,Montgomeryが好成績を収めたとはいえ2番手投手としては不相応かなというのが正直な感想。そうなるとポッカリと空くのが2番手投手です。

さきほどの流れを見たときに「Severinoが復帰したのならば彼を2番手に置けばよいのでは」という意見もあることでしょう。

(3)Sevyは2番手に成り得るか

Luis Severino

先出のとおり,Luis Severinoは2017-18年の間に63登板で384.2回 ERA3.18 450奪三振 WHIP1.09,そして33勝を挙げた若きエースでした。対称に,怪我に苦しんだ2019-2021年はわずか7登板(うち先発は3登板のみ)に留まっており,年齢も2022年に28歳を迎えます。

2015年 11登板(11先発)62.1回 5勝3敗 56K/22BB ERA2.89 FIP4.37
2016年 22登板(11先発)71.0回 3勝8敗 66K/25BB ERA5.83 FIP4.48
2017年 31登板(31先発) 193.1回 14勝6敗 230K/51BB ERA2.98 FIP3.08
2018年 32登板(32先発) 191.1回 19勝8敗 220K/46BB ERA3.39 FIP2.95
===右肩故障===
2019年 3登板(3先発) 12.0回 1勝1敗 17K/6BB ERA1.50 FIP2.13
===右肘TJ===
2020年 全休
2021年 4登板(0先発) 6.0回 1勝0敗 8K/1BB ERA0.00 FIP1.50

成績だけにスポットを当ててみるとTJ明けとなった昨年は中継ぎとして4試合に登板,無失点で復活を印象づけています。しかし様々な視点から紐解いた際,Sevyの先発復帰にはやや不安な点も。
17-18年と比較して,持ち球である4FB・SL・CHともに球速とスピンレートが減少している点が挙げられます。勿論スモールサンプルであることは念頭に置く必要がありますが,先発よりも高い出力が期待される中継ぎでのサンプルということも忘れてはいけません。

Baseball Savantより抽出

キャリアイヤーの2018年と比較すると顕著ですが,速球はおおよそ2mph/100rpmの減少,スライダーは3mph/250rpmの減少,チェンジアップはほぼ変化なしという結果に。怪我明けであったことを加味しても,「投球の質」にスポットを当てた場合には出力が低下したことは否めません。
それでも,平均球速95.4mphは規定投球回を投じた投手と比べても上位15%の水準であり,このクオリティーを先発起用時にも保てるのであればまだまだ通用するといえるでしょう。【note末尾に追記あり。STでハイクオリティーな投球を披露しました!】

(4)FA補強の道

Severinoが信頼に足らない場合,FA戦線での補強も考えられる選択肢です。
強力な投手として候補に挙がるのはCarlos Rodon(29)やClayton Kershaw(33)らでしょうか。
Rodonは昨季ホワイトソックスでERA2.37 185奪三振とキャリアイヤーを過ごしたことでCY投票では5位につけた左腕投手。これだけ聞けば是非とも獲得してほしいように思えますが,後半戦に肩の痛みなどを訴えており僅か9登板しか投げられず,合計イニングも132.2イニングに留まったことは注意したいところ。また,Taillonらと同様に度重なる故障に泣いた過去(2017年に肩の手術,2019年にTJ手術)があることも見逃せません。

Carlos Rodon

通算185勝の大投手KershawはそもそもLADとの再契約が濃厚でしょうし,それを無視したとしても現在抱えているとされる左肘の怪我は大きなリスク。
そもそもキャリアイヤー後のRodonや実績数多のKershawと契約に漕ぎ着けるとしても最低20M以上の契約金は必至とみられています。ロックアウト前にはNYYがVerlanderに単年25Mの提示を行っていたとも報道されましたが,彼ら2人がVerlanderですら拒否した単年契約を呑むとは到底思えません。かといって怪我のリスクがつきまとう選手を25M/y契約×複数年で抱き込むのは現在のPayrollからしても不健全極まりないかと思います。まあ怪我のリスクなんて誰にでもあるわけで,それをグチグチ言ってたら一生補強なんて進まないですね,もう言うのやめます😓

(5)トレード補強の道

最後に残された道はトレード補強でしょうか。昨季よりTaillon,Peralta,Holmesなどの投手をトレードから獲得していることからも,トレード補強に舵を切ったとしても衝撃はありません。
候補としては今オフにPayrollの大幅な整理を目論むアスレチックス,レッズの投手が筆頭でしょうか。
OAKには来年FAとなるSean Manaea(30)とChris Bassitt(33)ら実績も確かなベテランに加えてFrankie Montas(28)という2年保有できる強力な投手を擁します。3名ともに今季年俸は10M以下の予想がなされており,FA補強よりも健全にウィークポイントを補えると目されています。

CINにもLuis Castillo(29)とTyler Mahle(27)といった2年保有可能な投手がおり,Castilloに至ってはColeが有事に陥った場合のエース角としても喉から手の出るような選手ですよね。
CINにはもう1名ほど素晴らしい先発投手がいることは周知の事実ですが,彼のキャリアを狂わせてしまった球団ファンの矜持として,彼に触れることはしません。どうかNYY以外のチームに移籍してほしいと願います。

FA補強とは異なり,トレード補強には対価が必要となりますが候補となるのはマイナー有望株でしょう。(2チームともにPayrollの整理を考えているわけですからHicksなどの不良債権を処理する算段などは以ての外。)
noteでは数回触れておりますが,NYY傘下の現状は良好と考えており,OAKやCINが納得できるアセットは用意できるのではと思っております。もちろんVolpeやPeraza,Dominguezといったトッププロスペクトはアンタッチャブルにせよ,
Austin Wells 
Luis Gil
Yoendrys Gomez
Elijah Dunham
Alexander Vargas
あたりの有望株は容易に候補として挙がるのかなという所感です。今オフにロスター入りしたCabreraやPereiraが動くことはないのかなーとも考えています。

(6)総括

Matt Blake御大のお陰をもって投手陣の強度が保てている中,もう1枚強力な先発投手がいればチームとしてもワンランクアップできることは確か。NYYファン目線からすればSevyの復活に勝る喜びはありませんがどうしても不安がよぎります。昨季のGallo獲得によって道は一つに絞られたとも考えられますし,多少のオーバーペイを覚悟してもMontasやCastillo獲得に動いてもそこまで文句は言いません。

(7)最後に

昨季強度を上げすぎたColeが,今春のロックアウトでの調整不足で怪我するんじゃないかと眠れぬ夜を過ごしています。

【2022/03/21追記】

Luis Severinoが遂にスプリングトレーニングにて先発登板!オンペーパーでは2.0回38球を投じて4被安打4失点,1奪三振1与四球という成績でありましたが,StatCastにて計測されたボールの質は2017-2018年レベルのものであったことに驚きを隠せません。 

やはり特筆したいのがフォーシームの復権。平均球速・回転数ともにバウンズバックを見せ,奪三振も奪えています。
また,今までの持ち玉には無かったCutter(MAX94mph,平均2424rpm)もレパートリーに加えており,質の良いフォーシームとの相乗効果に期待がかかります。
先発2番手不在が叫ばれる中でのこのピッチング内容,少なからずヤンキースファンに一縷の希望を与えたのではないでしょうか。

CutterはSeverino巻き返しのカギを握るか..

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?