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【NYY】”火星人👽” Dominguez の宇宙旅行

ヤンキースの外野手において,歴史に残るプロスペクトといえばMickey Mantleでしょうか。17歳で入団したMantleは当時のLowerクラスであるD級・C級で好成績を残すと19歳でAAAに昇格。40試合でBA.361 11HR OPS1.096を残し,同年にMLB定着を果たしています。その後は7度のWS優勝や三冠王,3度のMVPに輝くなど,ヤンキースの黄金時代を支えたレジェンドとなりました。

そして現在のNYY傘下には,Mantle同様に右投げ両打ちの中堅手が存在します。2019年の国際FAにて,チーム史上最高額となる$5.1Mで契約を果たしたJasson Dominguezです。当時,弱冠16歳ながらもヒッティング,パワー,スピード,アームなどのツールで非常に高い評価を受けており,MantleだけではなくMike TroutBo Jacksonら名だたる5ツールプレイヤーと比較されていたのは皆さんも覚えているのではないでしょうか。
その年齢離れした素質を持ったDominguezに対して「The Martian(火星人)」というニックネームが付けられたのも衝撃的でしたよね。

では2022年,現在19歳となったDominguezの現在地はどこにあるのでしょうか?Mantle同様にアッパークラスで活躍?それとも期待外れの成績?今回は国際FA史にのこるHypeを受けたトッププロスペクト・Jasson Dominguezについて触れていきます。

ドミニカ出身のDominguezですが,父親がヤンキースファンであったことに由来し,当時活躍していたJason Giambiの名を拝したことでJassonと名付けられました。8歳の時に野球を始めると才能が開花,少なくとも14歳の時点では5ツールプレイヤーとしての知名度が広がり,多くのスカウトの目に留まっていました。

16歳となった2019年には国際FAに登場,もちろんその年の№1有望株とみなされており,ヤンキースが$5.1Mというボーナスプールの8割強を充てて契約。その冬に更新されたMLB Pipelineのプロスペクトランキングにおいては全体54位に位置されるなど,マイナーですらプレーのないDominguezへの期待値は高まるばかりでありました。

その才能を遺憾なく発揮するはずであった2020年,マイナーリーグが休止となってしまいプレーできず。それでも,度々流れてくるトレーニング映像は噂に違わぬインパクトを有しており,ヤンキースファンの興奮は冷めることを知りませんでした。

契約から1年半,未だに公式記録がないにも関わらずMLB Pipelineのプロスペクトランキングでは全体32位にまで上昇。これには俺達ヤンカスも再び熱狂歓喜。これほどまでに壮大な誇大広告が敷かれたプロスペクトがいたでしょうか?

2021年はFCLの開幕時期の兼ね合いもあって,6月28日にデビュー。3試合で無安打5四球という歪な成績でファンを困惑させます。その後,キャリア7試合の出場にもかかわらず7月10日のFutures Gameに選出される異常事態。この直後にLow-Aに昇格すると一塁線を破る二塁打含む2安打を放つ活躍。「っぱDominguezいけるやん!」と安堵したファンは私だけではないはず。

しかしここまで遥かに高く積み上がった期待と裏腹に,Dominguezは苦難のシーズンを迎えます。Low-Aデビュー9試合までは全試合安打に加えて初HRを記録し,OPS.904と年齢超のパフォーマンスを見せていましたが,その後はアプローチの粗さが顕著になるなど大ブレーキ。最終的には50試合で打率.258 5HR OPS.744 67三振と期待外れの成績。平均打球初速も86.0mphとイマイチ。中堅守備もビルドアップが足を引っ張ったのか散々なものであり,デビュー1年目にして「5ツールプレイヤー」としての資質に揺らぎが生じていました。
この凋落を受けてか,同年夏に最高16位まで上昇したプロスペクトランキングにおいて,冬時点では61位まで評価下落。
ただし,18歳ながらにBB%=9.8を記録するなど三振の多さに隠れて一定の選球眼が見えたことは好材料だったでしょうか。

僕らヤンカスがNext JeterことAnthony Volpeに乗り換えた2022年,残念ながらDominguezは4月の16試合で21三振 2四球 OPS.571と低調に喘ぎます。この頃には「国際FA史に残る大失敗」の烙印が押されかけた訳で,正直僕もたまのLow-A中継を見るのに嫌気が差していました。

しかし5月にスランプを脱すると快打を連発。24試合で打率.310 4HR OPS.982とトッププロスペクトに違わぬ好成績。高BABIPであったことも要因ですが,K%を下げてBB%を大幅に上昇させるなどアプローチの改善も見逃せません。6月にはOPS.797とやや成績を落としますが,109打席で22四球 25三振と更なるアプローチの良化が見られ,出塁率.395という素晴らしいスタッツ。

平均超のパフォーマンスに回帰しFutures Gameにも2年連続で選出を果たすと,試合を振り出しに戻す特大2ランを放つ活躍。前年度は無安打に終わったマイナー最高峰の舞台で輝きを放ちます。(その直前に失点の原因となるフライエラーしてるのは内緒😓)

結局Futures Gameを挟んでHigh-Aに昇格。現在19歳という年齢を考慮すればとんでもないスピード。昨年のMarco Luciano(SF)が同年齢でHigh-Aに昇格したのち,順応に時間がかかったことにも鑑みて,Dominguezも停滞が続くのかなと思っていました。
しかし,High-Aデビュー戦で本塁打を放つなど爆発。最初の4試合で7安打 OPS1.180と完璧な出だし。8月に入っても打率.315 2HR OPS.968と絶好調で,63打席13四球・13三振のアプローチは圧巻。すでにHigh-Aにも適応したのかもしれません。

そもそも現在19歳以下でHigh-A出場を果たし,一定の活躍しているのがJordan Lawlar(ARI)やEvan Carter(TEX)のみと考えると汚名返上は果たせたと言っていいかもしれません。

もちろん,GB%の高さによってBABIPが高いことや,中堅守備の危うさは課題でありますが,かつてないほどのHypeを受けながらもスランプを脱し,好成績を残しているのは流石。順調にいけば来年には2A,再来年には3A,MLBの昇格が見えてきます。Mantleのようにとはいきませんが,火星人のMLB上陸はそこまで迫っています。(それでも,17歳シーズンが休止になったことを加味するととんでもない昇格スピードだよね。)

2022/9/14追記
High-A最後の2試合で3HRを放つと2日後にDouble-Aに昇格!!19歳での2A到達はかつてのGleyber Torresですら為し得なかった偉業。来季も2Aで開幕を迎える公算は高いですね。ひょっとしたらMLB昇格すら,,,。

2022/9/29追記
Double-A公式戦においては僅か2安打(1HR)に終わるも,9月下旬のリーグ優勝決定トーナメントにおいては5試合で9安打(3HR)OPS1.510のモンスターパフォーマンスで優勝に貢献。この活躍には「火星人」という二つ名を呼ばざるを得ませんね。
10月のArizona Fall League出場も決まっており,活躍次第では誇大宣伝ではなく実力でTop20入りを掴み取れると思います。可能性はまだ低いですが20歳でのMLB昇格はそこそこ現実的になってきましたね。。。

2023/3/14追記
WBC期間中であることも相まってあまり取り上げられていませんが,すでにST10試合で4HRを放つ大活躍を見せています。昨秋に参加したAFLでは全選手中最低の成績を残したということで心配していましたが,これは今年も期待できそう。
一方で中堅守備は相変わらず悲惨。早く両翼にチャレンジさせてあげれば来年のMLBデビューもスムーズに行きそうですが果たして。

2023/8/31追記
まさかの2023年9月1日にMLBデビューが決定!!いやほんとにあっという間に階段を駆け上がっていきましたね…。2年前にLow-Aで四苦八苦していた子供が,アメリカンドリームを体現しました。今後十年以上に渡って,ヤンキースを引っ張っていく存在になってほしいです。頑張れJ-DOM!!

2023/9/4追記
いや~。見ましたかDominguezの鮮烈なデビューを…。Varlander相手に初打席で初HRを放ったかと思えば3戦目には試合を決める勝ち越し2ラン。三振の少なさも3Aから続いていますし,これはひょっとしたらひょっとするかもしれません。彼とWellsの昇格によってまた野球の楽しさを思い出すことができました。

おまけ:Dominguezのファンダメンタルを疑うSlide技術集

小学生の方がスライディング上手そう。

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