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あのたび -入国拒否-

 インドネシアのスラウェシ島からフィリピンへ船で行くことを望み、マル島のマロレ(Marore)まで来た。

 到着した日は、インドネシアのイミグレーション職員らしき?オヤジのオフィスの空いた部屋に泊めてもらった。マットなしのベッドは固い。島は小さくて店も宿もないのだ。あるとしてほんの小さいキオスク程度の雑貨屋が一軒だけだった。

 夜の食事はオヤジがなにやらトマト、唐辛子、にんにく、卵、干し魚のごった煮を作ってくれた。が食費として12000Rp徴収された。これはまあ当然か。ただで泊めてもらっているのだし、島では食料が貴重で栽培できないようで、船便が来た時に買わないと手に入らないからだ。寝るときも蚊取線香をつけてくれた。蚊が多く換気が悪く暑い部屋だ。もちろんエアコンもない。

 翌朝、まんじゅうをいただく。

 その後、目的のフィリピン側のイミグレーションらしき建物へ行く。ポールが立っていてフィリピンの旗が揺らめいている。ここで入国スタンプさえ押してもらえればあとは船で出発するだけだ!

 建物の中に入ると、若くて精悍なガタイのよい海兵といった感じのハンサムなフィリピン人男性がいた。「ハロー、ウェイルカム」と満面の笑みで部屋に入れてくれる。内心やったとほくそ笑んだボク。

 パスポートを出し、ここからフィリピンへ入国したい旨をつたない英語で話すと、わかったと、なにやら大きな無線機を起動し始めた。無線通信でどこかと連絡を取って話し合っているようだ。

 ノイズが多く、通信内容を理解することはできないがしばらくのち、「ここには国際的スタンプが無いので駄目だ」(たぶん)というようなことを英語で語られた。くぉぉマジかよ。じゃあ最初の満面の笑みはなんだったんだよ!

 「船でマナド(インドネシア・スラウェシ島の北端)に戻り、飛行機に乗れ」とのことだった。

 考えてみれば当たり前だ。正規の国境超えルートでない所をよくわからない奴が通っていいのなら、密入国しほうだいになる。テロリストかもしれないしね。(フィリピンのミンダナオ島では20年前の当時テロが頻発していた)

 しかし悔しかった。この旅で一番落ち込んだ。2月に日本を出国して以来ずっと船とバスと電車だけで移動してきたのだ。飛行機に乗るのには抵抗がある。

 当時のバックパッカーは沢木耕太郎の『深夜特急』をバイブルにしている。インドからロンドンまで乗り合いバスだけでゆく旅の本だ。
 同じ道を歩む旅行者も多かった。あの旅がすごいのは本当にバスだけで陸路でロンドンまで行ってしまったことだ。ボクもその過程に憧れて、真似して飛行機を使わず8カ月かけてここまで来たのだった。

 さてどうするか。とりあえずマナドまで船で戻るしかない。がその船がくるのは6日後の日曜日だという。1週間に1本しか船が寄らない島なのだ。なにもない、ホントになにもないこの島で時間を潰すのが苦痛でしかない。    
 幸い、インドネシアのビザは90日間有効のものを取得していたので、あと50日ほどある。

 英語版ガイドブック・ロンリープラネットインドネシア版によれば、スラウェシ島からフィリピンへの入国ルートはないが、カリマンタン島からなら入れるルートがあるようだ。

ビトゥンからマロレへ。
フィリピン入国できず、カリマンタン経由に。

 ものすごく遠回りになるし、かえって飛行機のほうが安いのでは?という懸念もあるがとにかくカリマンタンを目指すことにした。はーしかし次の船までどうやって時間を潰そうか。

インドネシアルート

(つづく)


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