見出し画像

あのたび -デリと再会。知らない紛争-

 ランテパオ(RANTEPAO)で泊まった宿では朝kopi(コーヒー)がサービスで出てくる。高地なので涼しいというよりは寒く、水シャワーはつらく鼻水が止まらない。

 町から南へ散歩してケテケス(KETEKESU)へ。遠い。トラジャ族の伝統的トンコナンハウスや墓が残されている↓。美しい景観である。

珍寺大道場より引用

 翌朝、宿を出ようとすると少女と揉める。2泊だったのに、おまえ3泊しただろ?といって聞かないのだ。宿帳に名前も日付も書いたはずだがその日付が間違っていたのかもしれない。1泊たかが20000Rp(≒280円)。たいしたことはないのだがなにか悔しい。

 双方とも引かないので、じゃあ前に泊まっていたところはどこだ?と聞かれた。マカレのWisma Lithaだと答えるとわざわざ電話して確認したようだ。その後疑いは晴れたのだがモヤモヤが残ったまま出る。ゆううつ…

 バスターミナルからスラウェシ島北辺のソロ(Solo)へ行きたいと言うがバスは無いという。仕方なく途中の町ピンドロ(Pindro)行きに乗る。50000Rpは高い。ぼったくられたかと思うがVIPバスだという。ならまあいいかと思うといつものローカルバスと変わらねえじゃねえかよ。座席以上に人を乗せて来ないことだけがマシなくらい。

 途中なぜか9つもの検問があり、そのたびに降りて通行料か賄賂を支払っている車掌さん。どうやらSolo付近で近年テロ事件がありイタリア人旅行者2人が殺害された。それを警戒しての行為か、もしくは活動家たちが資金集めのために検問しているのか、理由は定かではない。中には銃を持っている兵士たちも居てびびる。

 インドネシア全体はイスラム教なのだが、トラジャ周辺はキリスト教が多いというのも原因かもしれない。

 夜遅くピンドロに着くが外は真っ暗。ホテル前で降ろされるが高い。歩くが他の宿が見当たらず民間人に声をかけられてホームステイ?をすることになった。1泊20000Rpでいいよという。

 ピンドロは、ソロ湖南端の港町のようだ。ソロ湖は琵琶湖なみに大きい。これを越えて北のソロへ行くにはフェリーがあるというが翌日は日曜で休みだという。夜はミー(麺)に卵を入れたものを食うが不味い。レモン風味の洗剤を入れたような味だった。

 翌日やることがないので洗濯。植物園への誘いは断り散歩をする。が湖の小さい浜以外何もない! 民家の多くは焼けていて廃墟。店すらない。Pasar(市場)は誰もいない。こんなとこ早く出たい。おそらくは宗教上の対立で最近まで紛争状態だった地域ではないだろうか???

 昼過ぎ、マカッサルで出会った旅行者デリと再会する。再びチェス勝負をするが2回負ける。インドネシア人のおやじもやってくるが彼にも負ける。ひまつぶしにはちょうどよかった。が負けるのは悔しい。デリは旅で撮った写真を友人に送り、それで300$もらったという。それでもう5年以上も旅を続けているのだ。現代でいうノマド生活のはしりのようなものか。

 翌朝結局60000Rp取られる。まずい飯でこれはどうか。まあここでは食材も乏しいのだろう。仕方ない。フェリーに3時間乗り、湖の北の町テンテナ(Tentena)へ。15000Rp。20000Rpの宿へ泊る。デリも一緒にやってきて宿代をシェアした。

 もうずっと一人で旅をしているので、他の誰かと一緒に行動するというのは気詰まりだ。英語も話せるわけではないし。だけどデリはそんなこと気にせず陽気な皮肉屋だ。優しいゆっくりとした英語を話してくれるので、なんとか聞き取れるのでまだコミュニケーションが取れる。

 彼の写真とムービーを見せてもらう。ほぼ同じルートを旅しているというのにこうも見るものや切り取り方が違うのかと驚き。ボクはただそこにあるものを上滑りで見て移動しているだけなのだ。ということを思い知らされた。
 デリは宿代はケチるがメシ代はケチらないようだ。ボクの場合はすべてをケチってできるだけ長く安く旅を続けようとするスタイルだった。

 昼はナシイカンサユール5000Rp。デリによると近くにがあるという。正直気が進まなかったが連れて行ってもらう。大規模ではなく小さな滝だが、ゴツゴツした岩に沿って幾重にも分岐して流れているさまが綺麗であった。デリが言うには、いままで世界中でいろいろな滝を見てきたがこれはトップクラスに美しいものだ、とのこと。

 連れてきたボクの手前、落胆させないお世辞かもしれないがうれしかった。帰り道に小さなバリ風村を発見。明らかに他の建物と造りが違うのだ。おそらく政府によって強制移住させられたバリ人たちだが、住む場所が違ってもバリの伝統と文化は失わずかたくなに守って生活しているのではないだろうか。

 夜、ギターでデリにエリック・クラプトンのWonderful Tonightを教わる。ギターは苦手で昔断念したが、少し弾けると楽しい。しかし重いギターをかついでずっと旅しているとは尊敬に値する。ボクには無理だな。

インドネシアルート

(つづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?