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「良い仕事」と性別🐟

5年ほど勤めた職場を、あと数ヶ月で辞めます。勤めていたのは鮮魚点で、板前を務めました。私以外は全員男性でした。

魚屋はこの先も手に職をつけられる仕事を、と思って選んだのですが、他にも「自分の深刻な男性嫌悪を無理矢理にでもなんとかしなくちゃな…」と思ったから飛び込んだ仕事でもあります。

幼少期から父親から殴られ、反抗しては「女のくせして生意気だ」と言われ続けて育った私は、自然とミサンドリー、男嫌いになりました。男はきっと心のどこかで女のことを「下」に見ているに違いないと腹を立て、警戒して、常に張り合っていました。

●職人世界に救われた
働き先の魚屋が完全なる職人界だったことが幸いしました。
職人仕事は「良い仕事」が全てであるため、未経験に対しては軍隊式の一貫教育です。
一切「女」扱いをされませんでした。

職人界の魚屋では一切性別の概念がありませんでした。「良い仕事ができる・できない」だけで世界が回っていました。私は本当にそのことが気持ち良くて、嬉しかったです。

「〜ちゃん」呼びもされず、他の人と同じ苗字での呼び捨てをされました。入ったばかりでも平等に力仕事や下っ端の雑用をどんどん任されました。無駄なことやピントのずれた理解はすぐに訂正され、気を抜いた仕事に対してはガンガンになじられました。逆にうまくできたら褒められ、技術に関する質問は惜しみなく根気良く答えてくれました。仕事中で「女だから」的なことを言われたことはありません。
「良い仕事をできるようになれ」という、ずっと一貫した公平な教育を受け続けることができました。技術試験などもあり、自分を高めてそれが即貢献となる職人仕事は性に合っていてとても楽しかったです。

●人間関係の悩みも改善した
職場の職人先輩たちとは師弟的な関係を築くことができました。世代論をしながら飲むのもとても楽しいです。私は師匠たちを人として尊敬していて、好きです。
私は父親へ抱き続けていた感情のせいで、「権威的立場にいる男性」が特にとても苦手でしたが、「尊敬の感情」がとても良い足がかりになったと思います。職人仕事の世界では、偉さは技術と完全に一致していたので、師匠たちをまっすぐ尊敬できました。また、感情論をできる限り差し引いた、仕事についての率直な会話がたくさんできたことも、良かったと思います。職人世界の同志のような関係性はとても心地よいものでした。
結果5年かけて、男性への偏見や固定観念はかなり減ったと思います。
また、男性同士のコミュニケーションのパターンもたくさん観察できたので、苦手だった人たちへの共感や疑問をたくさん得ることができました。その点でも、この仕事についてとてもよかったと思えます。

●仕事と性別
良い仕事に性別はありません。
魚を丁寧に手早く美しく調理することが全てでした。
また、全力で手仕事をすることは人間の本来的な喜びです。仕事終わりの心地よい肉体の疲労は、生きてるなーと思い出させてくれます。
この情報化世界で肉体を忘れずにいるためにも、これからもローテクで体を使う無性別な職人仕事を積極的に選んでいきたいなあと思います。

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