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対偶を利用した証明と背理法を利用した証明って同じことじゃね?と思ったのでまとめようとした

※例としてあげた各問題は筆者によって一部改変を加えており、不自然な点があるかもしれません。また、高校1年生の書いた駄文となりますので、誤りや不適切な表現など多数含まれている恐れがあります。

例示

対偶を利用した証明について、以下のような問題がある。

問題1
nは整数とする。命題「n²が奇数であるならば、nは奇数である。」を、対偶を利用して証明しなさい。
[証明]対偶「nが偶数であるならば、n²は偶数である。」を証明する。
nが偶数のとき、nは任意の整数kを用いてn=2kと表せるから
 n²=(2k)²=4k²=2・2k²
2k²は整数であるから、n²は偶数である。
よって、対偶は真であり、もとの命題も真である。

命題「pならばqである」と対偶「qでないならばpでない」の真偽は一致することを利用し、qの否定「nが偶数である」からpの否定「n²は偶数である」を導くことによってもとの命題を証明している。

次に、背理法を利用した証明について。

問題2
πは円周率とする。πが無理数であることを用いて、命題「πの小数部分は無理数である。」を証明しなさい。
[証明]πの小数部分は、π=3.14……より π-3と表せる。
π-3が無理数でないと仮定すると、π-3は有理数である。その有理数をrとすると
 π-3=r
 π=r+3
rが有理数であるからr+3も有理数であり、この等式はπが無理数であることに矛盾する。
したがって、π-3、すなわちπの小数部分は無理数である。

命題「πの小数部分は無理数である。」において、あえて仮定・結論を示すとすれば、仮定は「ある数がπの小数部分である」、結論は「ある数は無理数である」だと考えられる。
ここでは、命題「πの小数部分は無理数である。」ごと仮に否定し、文頭の「πが無理数である」こととの矛盾を示すことで、その仮定は偽であった、すなわち命題は真であるとしている。

対偶と背理法

さて、問題2において、「πが無理数である」ことは前提として与えられているものと見受けられる。が、これは仮定とはならないのだろうか?

これを仮定とした場合、こうなる。

問題2’
πは円周率とする。命題「πが無理数であるならば、πの小数部分は無理数である。」を証明しなさい。
[証明]πの小数部分は、π=3.14……より π-3と表せる。
π-3が無理数でないと仮定すると、π-3は有理数である。その有理数をrとすると
 π-3=r
 π=r+3
rが有理数であるからr+3も有理数であり、この等式はπが無理数であることに矛盾する。
したがって、π-3、すなわちπの小数部分は無理数である。

先ほどの問題2と異なり、命題は「πが無理数であるならば、πの小数部分は無理数である。」となった。当然これの仮定は「πが無理数である」、結論は「πの小数部分は無理数である」だ。

問題に対して、証明ではまずπの小数部分が有理数であると仮定(=命題の結論を否定)した。そしてそこからπが有理数であると結論付け(=命題の仮定を否定し)、それを命題の仮定「πが無理数である」と矛盾するとして、命題の結論を肯定したことになる。

これ、対偶を利用した証明と同じじゃね? と思った。

問題1では、命題「n²が奇数であるならば、nは奇数である」を、結論の否定から仮定の否定を導き、対偶が真であると示すことで証明した。

問題2’では、命題「πが無理数であるならば、πの小数部分は無理数である。」を、結論の否定から仮定の否定を導き、仮定との矛盾を示すことで証明した。

目的は違えど、やっていることは同じに思える。
ここで、問題1を、背理法を利用して証明してみたい。

問題1
nは整数とする。命題「n²が奇数であるならば、nは奇数である。」を証明しなさい。
[証明]nが奇数でないと仮定すると、nは偶数である。
nを任意の整数kを用いて2kと表すと
 n²=(2k)²=4k²=2・2k²
2k²は整数であるから、n²は偶数である。
これはn²が奇数であることに矛盾する。
したがって、n²が奇数であるならば、nは奇数である。

どうだろうか。明確に間違っているとは言えなくとも、多少の違和感を覚えたのではないだろうか。

対偶を利用した証明では、対偶「nが偶数であるならば、n²は偶数である」が真であると示すことを目的としている。nが偶数であるという仮定から、n²は偶数であるという結論を導くのはごく自然な流れだと言える。
もちろん、この仮定・結論というのは対偶命題におけるもので、前述したとおり言えば、これはもとの命題の結論の否定から仮定の否定を導くことにあたる。

一方、先ほどの背理法を利用した証明では、仮定との矛盾を示すことを目的としている。そのため、nが偶数であるという結論の否定から、n²が偶数であるという仮定の否定を導く形となり、不自然に映ってしまいやすいように思う。
しかし、やっていることは問題2’とまったく同じである。どちらも、pならばqであるという命題について、qの否定からpの否定を導き、pとの矛盾を示すことにより証明している。

「nが奇数である」ことを命題から外して扱った場合、以下のようになる。

問題1’
nは整数とする。n²が奇数であることを用いて、命題「nは奇数である。」を証明しなさい。
[証明]nが奇数でないと仮定すると、nは偶数である。
nを任意の整数kを用いて2kと表すと
 n²=(2k)²=4k²=2・2k²
2k²は整数であるから、n²は偶数である。
これはn²が奇数であることに矛盾する。
したがって、n²が奇数であるならば、nは奇数である。

変えたのは問題文のみだが、先ほどあった違和感は拭い去られたように感じられる。だが、「nは奇数である。」のみでは他にnについて条件が示されておらず、真偽が定まらないため、これは命題とは言えないであろう。よって、問題に問題があると言える。(ツクテーン)
そもそも命題ではないので、対偶を利用した証明は不可能である。

この記事長くね?

ついでに、問題2を対偶を利用して証明してみよう。

問題2
πは円周率とする。πが無理数であることを用いて、命題「πの小数部分は無理数である。」を証明しなさい。
[証明]対偶「ある数が有理数であるならば、ある数はπの小数部分でない。」を証明する。
ある数をrとする。πの小数部分は、π=3.14……より π-3と表せる。
rがπの小数部分でなくないと仮定すると、rはπの小数部分であるから
 r=π-3
 π=r+3
rが有理数であるからr+3も有理数であり、この等式はπが無理数であることに矛盾する。
したがって、rはπの小数部分でない。
よって、対偶は真であり、もとの命題も真である。

結局、背理法を使うこととなってしまった。こんなことしたって何にもならなくなくなくなくない権利を!

問題2’
πは円周率とする。命題「πが無理数であるならば、πの小数部分は無理数である。」を証明しなさい。
[証明]対偶「πの小数部分が有理数であるならば、πは有理数である。」を証明する。
πの小数部分は、π=3.14……より π-3と表せる有理数である。その有理数をrとすると
 π-3=r
  π=r+3
rが有理数であるから、πは有理数である。
よって、対偶は真であり、もとの命題も真である。

問題1のように、「πが無理数である」ことを仮定として命題に組み込んだ。対偶命題について仮定から結論を導いているので、問題1’のような違和感もなく、真っ当な証明になったように思う。ちなみに、背理法を利用した場合、前述した通り問題2と同じ証明になる。


で、お前は結局何を言いたいの? と自問自答し続けたが答えは出なかったので、とりあえず表にまとめてみた。

対偶と背理法

んまあ、問題に適した証明方法が一番じゃないっすかね。以上です。

※背理法を利用する場面等で、“命題「pならばqである」の否定”は“pならばqでない”である、と伝わってしまうような記述があったかもしれませんが、当記事では“命題「pならばqである」の否定”について明確に答えを定めていないものとさせていただきます。私が答えを知らないのと、調べたところおそらく大学数学の範囲になると思いますので。
本文では、命題「aはbである」(a, bは値や言葉)を背理法を利用して証明する場合に「aはbでない」と仮定されることを拡張し、命題「pならばqである」(p, qは条件)を背理法を利用して証明した場合は「pならばqでない」と仮定される、として記述しています。

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