婚姻費用の分担請求を裁判所に申し立てる方法
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婚姻費用の分担請求は、夫婦が別居中であっても生活費や子供の養育費を公平に負担するために、経済的に弱い立場にある配偶者が、もう一方の配偶者に対して生活費の分担を請求する制度です。これは、民法第760条に基づいており、離婚するかどうかにかかわらず、婚姻関係が続く間は適用されます。
婚姻費用の分担請求を裁判所に申し立てる際の具体的な手続き方法を以下に詳しく説明します。
1. 婚姻費用の分担請求の概要
婚姻費用とは、夫婦やその未成年の子供が生活を維持するために必要な費用です。これには、以下の費用が含まれます。
生活費(食費、衣料費、住居費、医療費など)
子供の教育費
公共料金などの日常的な支出
夫婦が別居している場合でも、収入が少ない方や生活費を負担していない方が、裁判所を通じて生活費の分担を求めることができます。
2. 申し立てに必要な手続きの流れ
(1) 家庭裁判所に申し立てを行う
婚姻費用の分担請求を行うためには、家庭裁判所に対して調停の申し立てを行います。調停は、夫婦間の紛争を裁判所が仲介し、双方の合意を促す手続きです。もし調停で合意ができなければ、審判に進みます。
(2) 申し立て先の家庭裁判所
婚姻費用の分担請求は、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。具体的には、相手方(配偶者)の住所地、または請求者自身の住所地の家庭裁判所に申し立てることが可能です。
(3) 申立書の作成
家庭裁判所に対して、婚姻費用分担の調停を申し立てるために、**「婚姻費用分担調停申立書」**を作成します。申立書には、以下の情報を記載する必要があります。
夫婦の氏名、住所、連絡先
婚姻の状況(結婚した日や婚姻関係の現状)
別居の開始時期と理由
子供の有無と年齢、学校名
夫婦の収入や職業
生活費や教育費の詳細
婚姻費用を求める理由
申立書は、家庭裁判所の窓口でも入手できますし、裁判所のホームページからダウンロードすることも可能です。
(4) 必要書類の提出
申立書とともに、以下の書類を提出する必要があります。
収入に関する資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細など)
住民票(夫婦と子供のもの)
戸籍謄本(婚姻関係を証明するため)
その他、生活状況を証明する書類(家計簿、支出の明細など)
(5) 申立費用(手数料)
婚姻費用分担調停の申し立てには、所定の手数料が必要です。調停の申し立てには収入印紙代と、郵便切手代がかかります。
収入印紙代:1,200円程度(家庭裁判所の規定により変動あり)
郵便切手代:郵便代として3,000円~5,000円程度の切手が必要になります(具体的な額は裁判所による)
3. 調停の進行
(1) 調停期日
申し立てが受理されると、家庭裁判所から調停期日が指定されます。調停委員が仲介に入り、双方の主張を聞きながら、婚姻費用の額や支払い方法について合意を目指します。
調停期日は、通常、1カ月から2カ月に1回程度の頻度で開催されます。
調停委員が双方の話を聞き、妥協点を探りながら解決策を模索します。
(2) 婚姻費用の算定
婚姻費用は、夫婦の収入や生活状況に基づき算定されます。日本では、家庭裁判所が公表している**「婚姻費用算定表」**に基づいて、おおよその金額が決まります。この算定表では、夫婦の収入と子供の数・年齢に基づいて、標準的な婚姻費用の額が算出されます。
(3) 調停が成立しない場合
調停で合意ができない場合、裁判所は自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が一方的に婚姻費用の額や支払い方法を決定します。審判で決定された内容には、法的拘束力があり、従わない場合は強制執行の対象となります。
4. 証拠や書類の準備
婚姻費用の分担請求では、収入証明や生活費に関する資料が重要な証拠となります。これらの書類を適切に準備することが必要です。
収入に関する証拠:源泉徴収票、確定申告書、給与明細、銀行の預金通帳の写し
生活費に関する証拠:家計簿、住居費や教育費の支払い明細
夫婦の別居状況:別居を開始した時期とその理由を明確にするための証拠(メール、書簡など)
5. 決定後の対応と支払い
(1) 支払いの開始
調停や審判で決定された婚姻費用は、通常は毎月一定額を支払う形で始まります。支払いの方法は、銀行振り込みや現金手渡しなど、夫婦間で決めた方法に従います。
(2) 支払いが履行されない場合
相手が婚姻費用の支払いを行わない場合は、強制執行を申し立てることができます。強制執行では、相手の給与や預金を差し押さえることで未払いの婚姻費用を回収します。
まとめ
婚姻費用の分担請求は、経済的に弱い立場の配偶者が、別居中でも生活費を請求するための制度です。
申し立ては、家庭裁判所で行い、申立書や必要書類、収入に関する証拠などを提出します。
調停で合意できない場合は、審判に移行し、裁判所が婚姻費用の支払い義務を決定します。
婚姻費用の支払いが行われない場合、強制執行を通じて回収することも可能です。