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高畑実奈 別に、飢餓で苦しんでいるわけじゃない。綺麗な水が飲めないわけでもないし、自由を拘束されているわけでもない。 それでも私は、どちらかと言えば不幸な人間だと思う。 昼休みのカフェテリア。中学部と高校部の生徒がごった返す中、どうにか窓際の四人席を見つけることができた。 しかし、ハルカとマナミは私の存在など忘れてしまった様子で、さっき買ったばかりの学食に手もつけず、楽しそうに話している。昨日放送された連続ド
饅頭花子 ない。自分の番号がない。中学3年の3月、大樹は高校に落ちた。あんなに頑張ったのに。あんなに毎日夜遅くまで勉強したのに。なぜ、どうして、自分の受験番号が合格者として掲示板に張り出されていないのだろうか。大樹は人生で初めて挫折というものを味わった。 そして、第一志望に落ちた大樹は、滑り止めで受けていた高校に入学することになった。 * 俺 俺は第一志望の高校に落ちた。今は第二志望の私立高校に通ってい
冬乃月明 一週間で彼女に振られた、ハルとジュンの短くも、甘い恋の話。 中3冬、僕は彼女に振られた。交際期間わずか1週間。クリスマス前に付き合って、正月に振られたのだ。あまりにも早かった。交際期間が短いせいか、引き留めることもなかった。好きという感情がなかったわけではない。ただ、彼女からの淡々とした別れ話に、引き留める気持ちも薄れてしまったのだ。 「ハル、ごめん。新しく好きな人ができた。」 そう、LINEで言
西野翔 高校二年の秋。心地よい温度に保たれている教室。 今、私―藤咲エレン―には恋焦がれている人がいる。 現代文の授業中、無意識に視線を向けている先に、その人はいた。今日も今日とて目線が合い、私はサッと目を逸らす。 彼の名は中田唯斗。クラスメイトからは信頼を置かれていて、リーダーシップに溢れる人物だ。 私はそんな彼に恋をしている。自分でもどうしてこんな気持ちを抱いてしまっているのか分からない。気