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なぜスパーズはスーパーリーグに参加したのか


スーパーリーグの強引な幕開け


突如具体的な動き出しが始まったことで、今朝からTwitterを賑わせている
「スーパーリーグ」

欧州各国のトップクラブ12クラブ(15になるとも)が2グループでそれぞれ総当たりだと言われていますが、形式はまあ今はどちらでも良いです。
ちなみにトッテナム(プレミア7位)とアーセナル(プレミア9位)も参加を表明しています。最下位をかけたノースロンドンダービー自体は面白そうです。

1ファンとしては急に謎の大会が発表されて推しチームがリーグ追放のリスクもあるという状況は不安でしかないですが、スパーズはなんでこんなものの創設メンバーになろうとしているのか、そこには理由があるはずなので、その部分を考えてみたいと思います。


単純な話、
「スパーズがなぜスーパーリーグに参戦したのか」への答えは、「得だから」以外ないはずです。

何が得だったかというと、でしょう。

簡単に言うなら、
「スパーズはお金を稼がなければいけない、そして、スーパーリーグが最適な手段である」
ってところでしょうかね。

そもそもスパーズがどんなクラブであるかを見た上で、スーパーリーグが生まれた理由ともたらす恩恵を見ていきます。


スパーズは誰のもの? 〜スパーズは金で動くチーム〜

まず、スパーズについて大切な前提を確認しておきます。

トッテナムホットスパーFCは、別に公共の財産ではなく、誰かの所有物です。そして、その所有者こそが、#ENICout でおなじみのEnglish National Investment Company(以後ENIC)です(正確にはスパーズの株式の85.55%を保有)。
そして、我らがダニエルレヴィは、ENICに派遣されている経営者(ENICにもお金を出しているので、大金持ちではありますが)です。

ENICは、投資会社です。スポーツやメディアに主に投資しているようです。そして、この会社は上場しています。

つ ま り

雑に言うと、ENICは、自分たちの株を持ってくれている人のために、投資先であるスパーズの経済的価値を高め続けなければなりません
要は、スパーズの持ち主は金儲けがミッションの会社なのです。

これは、ENICやレヴィ自身のお金のためでもありますが、稼がないといろんな人から怒られてしまうわけです。
例えば、他のチームがスーパーリーグに入っていて儲けを出している一方、スパーズは入らなかった場合、「何でスーパーリーグに入らなかったのか」を合理的に株主などに説明しないといけません。

でもまあそれは無理そうなので、今回レヴィは彼の「お仕事」をしただけな気がします。
FSGという投資会社が保有するリバプールでも似たようなことが起こっているのではないかと思います。

(ユナイテッドを持つグレイザーとかアーセナルを持つクロエンケとかシティグループとかチェルシーの油モビッチは知りません、あいつらは自分らの金のためにやってる気がします、しらんけど)

なぜスーパーリーグが必要だったのか

スパーズをENICという会社が持っている以上、金儲けを無視することはあり得ない。
それを確認しました。
じゃあなぜスーパーリーグがそのために必要なのか?という話になってきます。

スパーズを含めたビッグクラブには、収益力を高める上で困っていることがあったわけです。
それは、

「CLやプレミアリーグは自分たちのおかげで儲かっているのに、お金が自分たちに直接入ってこない」

というものです。

CLは、例えばバルセロナやバイエルンやパリがいるから世界中で人気が出て、放映権料が高くなっています。
プレミアリーグはマンチェスターユナイテッドやリバプールの人気があるからこそ、どの国でも視聴率が取れて、お金が集まるリーグになっています。ブライトンやバーンリーを目当てにプレミアリーグの視聴料を払っている人は割合的にはほぼいないはずです。


このように、欧州サッカーの人気・利益の源泉になっているビッグクラブの存在ですが、CLやリーグの収入がそのまま得られるわけではありません

まず、大会主催のUEFAなどによる中抜きがあります。放映権による収入は、CLやプレミアリーグを開催しているUEFAやFAに入ります。ビッグクラブの人気を利用して、活動資金を荒稼ぎしているという見方もできるわけです。
そして、そのお金は、リーグのバランスを考えて、ビッグクラブには貢献度に比べて抑えめの報酬として払われています

ビッグクラブ達は、相対的に損をしてサッカー界の発展に投資をしてあげているという構造がありました。

そこで、ビッグクラブは思ったわけです。

じゃあ、ビッグクラブだけで大会やったら一番儲かるのでは???

っていうのがまさにスーパーリーグの誕生ですね。

そして、コロナによる損失などもあって資金繰りが苦しかったり、CLの新しい制度が自分たちの思い通りにならないという不満もあったタイミングだったのでしょう。

このような喧嘩別れになったのも、UEFAも自分たちの利権がかかったCLやELに関してかなり譲らなかったのかなという感じはします。


スーパーリーグの経済的メリット

では、スーパーリーグはスパーズにとってどれくらいメリットが大きい話なのか。

現在、スパーズはスタジアム建設に伴った巨額の負債を抱えています。
さっき僕が見たグラフでは、今スパーズは8億ドルの負債があると言われています。

スーパーリーグに参加で3億ドルの報酬が本当だとすると、放映権収入も見込めば、数年でこの借金が返済できます。

借金をさっさと精算すれば、ENICがスパーズを持とうが売ろうが価値は明確に高まります。

今までは、移籍市場でチマチマ倹約していた。そしてコロナでスタジアム収入がやばい。

そんな中で、借金を数年で返せるようになる魔法=スーパーリーグがあれば、別にスパーズのサポーターでもないレヴィ/ENICがこれを断るなんてありません。

スパーズが経済的な合理性を元に動くクラブになってしまっていた以上、この話を断るなんてほぼあり得ない選択肢です。


スーパーリーグが止まる可能性は?


ここからは、スーパーリーグを止められる人がいるのか、ステークホルダー別に簡単に見てみます。

・古くからのファンや地域社会
これは反対の嵐ですね。
ただ、「伝統が壊される」以外の意見をあまり見ることができません。
権限もないので、怒りだけ溜まるだけですね。

一部には、古くからの地元ファンは”Legacy fans”と呼ばれていたとも…。
意訳すると、「老害」ですかねw

ビッグクラブの経営陣達が関心を持っているのは売上だとすれば、古くからのファンがブチ切れて消えても、総合のファン数が増えれば良いわけです。

例えば、日本の海外サッカーファンのTwitterを見ても、今経営陣を非難している人たちは、いわゆる海外サッカーガチ勢です。

ですが、サッカーファンにはTwitterでいちいちお気持ち表明しないようなライトなファンがたくさんいますし、彼らも放映権やユニフォーム売上に貢献しています。

そして、CLはまさに、そのようなTwitterにいないようなライト層も多く見る大会です。
CLベスト8級の試合が毎週組まれれば、世界的にはファンが増える可能性すらある。そうしたらグッズ収入も放映権収入も増える。古くからのファンが消える以上に新しいファンが生まれると見込んだからこそJPモルガンのような金融大手の会社が巨額の資金を投入するんでしょうね。

・弱小/中堅クラブやその選手
大反対でしょうが、「俺たちの金のためにCLに残ってくれ」以外に言えることがありません。
ダメでしょう。

・連盟
彼らがここから譲歩しまくって交渉をまとめれば可能性はあるかもしれません。
ただ、合理性で判断して動いているビッグクラブの会長と落とし所を見出せずに決裂させた程度の腕前の組織なので、個人的にはあまり期待していません。

・ビッグクラブの選手
個人的にはここは鍵になりうるかなと思います。
選手がスーパーリーグと既存のリーグやCLのどちらにより魅力を感じるかは、ビッグクラブの人材の質=スーパーリーグのリーグレベルに関わります。
ここで選手流出が起きればスーパーリーグの賭けは負けるだろうなという予想です。

ただ、スーパーリーグの選手の給料は間違いなく上がるので、どうなるかはわかりません。
代表の参加権がどうなるかも注目ですね。

・行政
より多くのお金がよりダイレクトにフットボールクラブのアメリカ人オーナーの元へ流れ込むような状況が起こるわけなので、国なども反対側が多いのかなと
(事実、英国首相は反対を表明)

・参加クラブの裏切り
今からでもスパーズがここから造反してくれるんじゃないかと期待している皆さん???

こんな一斉の発表があったわけですから、違反したらヤバい罰則が付く誓約書があるに決まっています。
もう今の12クラブは後戻りできません。


おまけ:モウリーニョ解任との関連


成績を考えても切る判断自体はあり得るのでややこしいですが、切るタイミングをスーパーリーグの解禁日にあわせたんじゃないですかねさすがに。
先にモウリーニョ切ってスーパーリーグの発表が失敗したら違約金払えなくなるし。

シリマセン。

ヨクワカリマセン。


まとめ


スーパーリーグというのは結局、伝統とそれに付随するファンだけ壊せば、それ以外の全てが手に入るかもしれない賭けなわけですね。

まあこれだけサッカークラブのオーナーの金儲け色が強くなっていた段階で、すでに”終わっていた”のかもしれません。

ドイツのクラブが参加しないとすればそれも偶然ではありません。彼らのクラブは確かサポーターが株を持ってた気がするので、それで金では動きにくくなっているんですよね。

正直、このスピード感にはドン引きしています。どうにかならなかったんですかね。最善を尽くした結果であればそう説明して欲しいです。

ていうか、現在のスーパーリーグでは明らかにブランド力で最弱のスパーズはどうなっちゃうんですか???


まあ、まだスーパーリーグが始まったわけではないので、様子を見るしかありませんね。



(本記事は厳密な構成の作り方や表現をしていない部分があります。
誤りがあったら指摘ください)

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