時にはシネフィルな夜「シン仮面ライダー」

アマゾンでプライム会員無料になったので、さっそく観てみました。

前作のリメイクウルトラマンを観たときも感じていたのですが、オレは子供の時から子供の出てくる特撮映画が大嫌いな特殊な子供だったので、感覚的にもかなり普通ではないかもしれません。

そこで、あらかじめ伝えておきますが、あまり普通の人にわかるようなレビューは書けません。

どちらかというと、オレはSF作品に触れる際には「虚構フィクション」より「科学サイエンス」に重きを置いてしまう体質です。

それと同時にミステリ分野では、本格と同等以上に変格とも呼ばれるメタミステリを偏愛しているという分裂傾向も併せ持ちます。

たとえば好きな日本の探偵を上げてみろと問われたら、あまり躊躇うことなく「帆村荘六と法水麟太郎」と答えます。

知らない方に簡単に解説すると、本格ミステリとメタミステリの関係は、本道や本流と呼ばれるモノと、そこに対する脱構築と自己解体をされた作品群という対比に尽きます。そこをまずは覚えていてください。実際にはそれらを読まなくても生きるのに困りませんし、死にもしません。むしろ読んだら、あまり脳に良くないことが多いかもしれません。オレの言動を知れば、さもありなんでしょう。

同様のことは、映画における各国の正統派と言われるものとヌーヴェルバーグ作品においても同様でしょうか。

オレは庵野さんの映像作品は、ほぼ同世代なこともあり、自主制作の頃からほとんど観ていますが、本作を観終わった後の率直な印象は、相変わらずですね~かな? かと言って、そういう青臭いところをあまり嫌いにもなれませんが。

前回のウルトラマンの時は、銀色の皮膚をした目が発光する宇宙人との接近遭遇と交流の話に特化したのね…と思いましたし、そこに巨大化ヒロインへのヰタセクスアリスを加味したのね…とも。不条理会話劇なところは松竹ヌーベルヴァーグ的でもあったしさ。山本耕史はスゴかったし、ホント、アレは化けたね。以降、何の役やっても演技の上手い外星人にしか見えないという弊害もあるけど。

果たして、庵野さんは今回、鈴木清順や実相寺まで肉体アクションの殺陣を解体するわけでもなく、どちらかというと画的には、初代ライダー第1クールの血糊の垂れるようなホラーテイスト寄りにしたかったのね。そこに原作の石ノ森さんのキカイダーやロボット刑事、サイボーグ009の神殺し要素もまぶしてさ。ああ、実際オレも原作読んでトラウマになったからね。話に山田正紀や光瀬龍の要素も入ってんじゃね? 下手すりゃ諸星大二郎も。そのうちアートマンとか言い出すのかとさえ思ったもの。

オレの大嫌いな子供がやたら話に絡む昭和ガメラを、脚本家の伊藤和典さんが、平成シリーズで滅亡寸前となった古代文明が地球環境全体を守護するようプログラミングして作った巨大生物兵器としての存在へと転生させてくれたような明確な世界観の再構築の意図は、各種のシンシリーズを作る際において、おそらく庵野さんにはないのでしょう。

あくまで、自分が初めて観たときに覚えた違和感や恐怖といったものも含めた感覚やときめきエッセンスを抽出して再定義しているだけなのではないかとオレは思います。そこへアヴァンギャルド系の過去の作品を愛好するご自分の嗜好もあって、ああいう演出方法になるのではないのかと、オレは勝手に分析していまいます。

そういう意味においては、永遠に思春期の青臭さが残るのも致し方ないのかと。

そして、偉そうに言わせてもらえれば個人的には少し食い足りなかったかな。メタミステリも飛び越えてアンチミステリ次元まで、庵野ファンも一般人も揃って腰抜かすほど、もうちょいぶっ壊れたアブナイ話にしてくれてもオレはよかったんですけどね。何はなくとも、もっと蜂女はエロくないとね?
https://www7.targma.jp/yanashita/post/7518/


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過度なアファーマティブ・アクションの行き着く未来予想図


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