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古井雅
2018年7月5日 23:55
煉獄のオルゴール - あらすじ生前の記憶を失った「僕」は、黄泉路の分岐点の管理人「瑠璃」の元で目を覚ます。しかし、「僕」はそのまま死に切ることができず、自らが生きた人生を記憶として取り戻すため、異形の世界を彷徨する。 今回、noteを用いて不定期連載小説を作成することにしました。 この作品は現在小説投稿サイト「カクヨム」にて、隔週日曜日20時に連載をしておりますが、私自身この「煉獄のオルゴ
2018年7月5日 23:52
目次 → 「煉獄のオルゴール」次回 → 水疱の記憶-1序章 寂水の瓶 僕はこれからどこに行くのだろう、意識が戻ってから最初に過った羅列はまさにそんなどうでもいいことだった。体が浮遊しているような開放感と、心の底に広がる寂寥感の灯火が妙に心の内側を刺激している。 ゆっくりと瞳を開き、一番最初に視界に映ったのは小さく笑う少年だった。薄茶色の髪の毛と、日本人的ではない顔立ちはどこかの異
2018年7月8日 22:35
目次 → 「煉獄のオルゴール」 前回 → 寂水の瓶 次回 → 水疱の記憶-2 ぼこぼことした水疱の視界が途切れると、辺りは形相を一気に変え、何事もなかったかのような日常が横たわっていた。 僕はどうやら、椅子に腰を掛けて、机に突っ伏してしまっているようだ。恐らく、通っている中学校のものだろう。今いるのは自分のクラスの、自分の席のようだった。 しかし、ぐらついた視界は未だに目眩の
2018年7月16日 17:33
目次 → 「煉獄のオルゴール」 前回 → 水疱の記憶-1 次回 → 水疱の記憶-3 水疱に飲まれてしまった自らの意識は、次に視界が景色を取り戻すまで、僕は途絶えた記憶の片鱗を集めていた。 しかし、何をしても自らの記憶に行き着く事はなかった。行き着いたのは、真っ暗な海だった。僕は深海に沈み、光届かぬ世界で揺らぐ海面を眺めているのだ。 どうして、自分はこんなところにいるのだろう。
2018年7月28日 16:31
目次 → 「煉獄のオルゴール」前回 → 水疱の記憶-2次回 → 第二章 - 鏗鏘のアラベスク-1-3 意識が失われた場面から、次に意識が戻るまで、僕の耳元には延々とアラベスクの旋律が鳴り響いていた。優美なるその旋律は、まるで絶叫のような不愉快さを孕んでいて、今にも音が外れそうな不安定さを醸し出す。 知っている。この音色のことを、僕は知っている。何度も聞いたアラベスクの旋律とともに