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おしろい花に呼び止められて

自転車で家路をいそぐ坂道、懐かしい香りがふわっと追いかけてきた。呼び止められたような気持ちで、来た道をちょっと戻ってみる。あなた達だったのね。

懐かしいおしろい花の香り。団地に住んでいた頃、あちこちに咲いていた。夕方になると柔らかい香りが漂ってきて、ここにいるよって、教えてくれる。黒くて硬い種を割って、中から白い粉を掻き出して、白粉にして遊んだりした。濃いピンクや白とピンクが混じったもの、黄色い花もあって面白い。理科でメンデルの法則を習った時、遺伝子が関係しているんだと納得した。そんな子供時代の友に再会するような、懐かしい香り。

どこからか花の香りが漂ってくると、その子を探して会いたくなる。  どこ?どこ?って探してしまう。湿度が高い梅雨の夜のくちなし、暗闇に浮かぶ大きな真っ白な花を見つけ魅了される。真夏の暑さが少し和らぎ、日差しがやさしく感じられる頃、秋の風に乗って、遠くから金木犀が香ってくる。一つ一つの花は小さくて可憐だけれど、沢山の花をつけていると、元気そうでうれしくなる。  個人的には金木犀より遠慮がちな、銀木犀(柊木犀)が好き。

光の春を感じる頃の和水仙や沈丁花の香りも大好き。母の実家の玄関横にあった沈丁花、春休み帰省するといつも出迎えてくれて、ただいまって言いたくなる。神様が折り紙で作ったような沈丁花。

おしろい花の香りに再会して、もう一つ思い出したのは、山登りをした時のこと。兄が小6の時のクラスはとても仲が良くて、卒業前にバスをチャーターして、家族も一緒にお別れ遠足に出かけた。年上のみんなに混じって張り切って山を登り、先頭集団と一緒に登頂!そのことを自慢げに母に報告すると・・・

「そんなに急いで登って、途中に可愛い花が咲いていたことも、岩に清水が流れていたことも、気づかなかったでしょ。人生そんなじゃ楽しくないわよ。」と、たしなめられ、しょんぼりした。その当時は認められていないように感じてしまったけど、反抗期だったのかな・・・意地になってなんとか誉めてもらおうと、出来たことを報告するのだが、一向に誉めてもらえないどころか、いつも否定されているようで悲しかった。そんな切ない思い出も、おしろい花は連れてきた。


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