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私の可愛いおチビさんが来てから

彼が我が家へ来たのは3年前。
保護カフェから車に揺られて知らないお家へ連れてこられた彼は、怯えてなかなかキャリーケースから出てこれなかった。
足を踏み出しては戻りを繰り返し、ここはどこ?と困惑していた。
お迎え記念にスマホでその様子を動画に撮っていた夫は、このとき「怖がってるでしょうが!」と私に怒られたことをいまだに根に持っている。
確かにそのために彼が一歩を踏み出す瞬間を記録に残し損ねたのだが、私はもう怯える子犬を守る母犬のような神経の尖ようだったのだ。
まぁ、彼は子犬ではなく8歳というなかなかの大人だったが。

彼を保護カフェで初めて抱っこしたとき、綿でできてるのかと思うほど軽くてびっくりした。このとき2キロもなかったのだ。それまで私が抱っこしたことのある犬といえば実家のヨークシャーテリアで、その子は4キロとしっかりとした重みを持っていた。
それが基準値だった私にその半分以下は衝撃の軽さだった。超小型犬といってもマジか!こんなに軽くて細くておいおいおいおい!
死んでも落としてはならぬ。改めて心に刻んだ。
可愛い子はたくさんいて、犬好きならば一度は思う「全員引き取りてぇ…」気持ちではあったが、現実的に無理であり、夫も気に入ったこの綿でできてるようなチワワがうちの子になった。
そして最初こそ怯えていたが、意外と順調に慣れてくれ、可愛さ、愛おしさは増すばかりの日々だった。
私の赤ちゃん、私の天使、私の宝物、君は光、ラララ〜ララ〜と歌を捧げる飼い主を黒いつぶらな瞳はいつでも受け入れてくれた。
音程ズレてるのバレてたかもしれないが、彼は撫でられながらまぁまぁ気に入ったような顔をしていた。気がする。

そんなこんなで3年を過ごしてきた。
親バカでなく、あどけない整った顔立ちの彼は、女の子やまだ赤ちゃんとよく勘違いされながらも会う人会う人に可愛い可愛いと愛でられる。
人見知りで吠えたり噛みつこうなどとしないところも一因だろうか。
その代わり、家では夫に吠えまくっている。追いかけて噛みつくし(歯がないので怪我はしないが意外と痛いらしい)、触ろうとすると逃げたり、撫でさせてやってる感とかすごい。
そのわりに帰ってくる時間は気にしているし、寝る時は呼びに行くので、なんか男と男の…なんかなんだろう。
夫は彼にメロメロだしね。
私にはべったりでお手入れもおとなしくやらせてくれる超良い子だが、そうじゃなかったとしてもやっぱり愛の歌を捧げるだろう。
彼がいてくれて私の日々は穏やかに満たされている。
小さな柔らかい彼の背中に頬をくっつけて昼寝をするのは至福だ。

今月で11歳の立派なシニアになる彼を、私はきっとずっと赤ちゃんのように思うし、落とさないようにけれどそっと抱きしめるのだ。


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