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トラウマの樹

4回目のカウンセリング。
最近ずっと頭の中で考えていたことを、心理士さんに見せるために付箋紙に書き出して持っていった。
フラッシュバックや悪夢の内容から抜粋して、トラウマっぽいものを元のトラウマと、その再演に分けて書き出した。


3本の樹

私のイメージではトラウマは大きな木で、幼少期に芽生えた小さな木は、放っておけばいろいろなものを吸収して勝手に大きくなると思っている。
一番最初の強烈なトラウマが土台となって、似た出来事や自分で再演したものがどんどん追加され、上へ上へと大きくなる。枝葉は広がり、元のトラウマとは一見関連のない、小さく軽いトラウマも追加される。
大元のトラウマが処理されない限り、脳が関連付けた小さな出来事も新たなトラウマとして吸収され、木は成長し続けると思っている。私にはそうして大きく成長した大木がたぶん3本ある。

 1つ目は母との関係。これが土台となって、友人関係や恋愛の中で何度も再演されている。母と似た人に母を投影し、その関係を通して愛されようとしてしまう。これが起こると相手に尽くしすぎて、見事に共依存になる。▶︎友人1、友人2、元彼2、友人3、友人4
 2つ目は父との関係。これは恋愛で再演されたり、父の像を内側に取り込んで自分自身を追い詰めすぎたりしている。権威のある人(教師や年上の男性)が怖い、逆らえないというのもある。恐ろしい、怖い、怒られる、という恐怖とともに、見捨てられ不安と完璧主義があり、「怖いから見捨てられないように頑張りすぎる」という流れになっている。▶︎大学受験、元彼1、教師、教授、研究、病院
 3つ目は中学生の時のいじめ。これも私の中では親子関係に並ぶくらい強烈だったと思っている。対人恐怖として再演され、どこに行っても見知らぬ人が怖い、集団に属することが怖い。攻撃されないか、排除されないか、いつも警戒している。▶︎高校、サークル、バイト、一人暮らし、車の運転

父と母にまたがった再演もあるし、綺麗に分類できるわけではないが、だいだいこんな感じ。
この3つが土台となり、見知らぬ人が怖い、権威のある人が怖い、親しい人に尽くしすぎるという八方塞がりの私の人間関係のパターンが生まれた。

トラウマ治療7ヶ月にして、やっと全体像が見えたと思う。これまでにも、トラウマを整理しようとしたことはあったが、知識もなかったし、何より思い出そうとするとフラッシュバックに見舞われてうまくできなかった。3つのトラウマは複雑に絡み合っていて、一筋縄ではいかないが、たぶんこれでほぼ全部だ。

トラウマ治療の進み方

EMDRでは、古い記憶から順に処理していくらしい。私が受けているのはSEやEMDRを組み合わせたお任せコース(?)だが、元のトラウマを扱えば、それに付随して関連する記憶も処理が進むという理論らしい。
要は、根っこを抜いてしまえば枝葉は自然に枯れるということだ。ただ、大木なだけに根っこを抜くのは大変そう。心理士さんと一緒に慎重に進めたい。

実は、初回か2回目のカウンセリングで心理士さんにそんな事を言われた。トラウマがいっぱいある、多すぎると話すと「一回で一掃できるかも」と言われたのだ。その時は瞬時に「そんなわけない」と思い、首を傾げて(そうかなあ?)という素振りをした。こんなに苦しんでいるのに一発で片付くわけないだろう。トラウマまみれで日常生活もままならない、慢性的に体調が悪く、フラッシュバックに振り回されて、大学に通えなくなって泣く泣く休学しているのに、そんな簡単に片付くわけがないと思ったのだ。

ところが、母に愛されたかったインナーチャイルドが癒されたら、元彼のことも、友人のこともなんだか遠くなった。ふと思い立って、服の断捨離をし、元彼との思い出の服を手放した。
これには自分でも驚き、友人や元彼に母を投影していたこと、確かに母と彼らが少し似ていることに初めて気づいた。そしてそれらの記憶処理が勝手に(まだ扱っていないのに)進んだことにも驚いた。

そこでトラウマ同士の関連性を考えて整理し、3つの樹があるという全体像が見えてきた。

3つの大木のうちの一つ、根っこが抜けたんだろうか。抜けかかっているのか。その木はもう枯れてゆくだけなのか。完了したとは思っていないが、変化があったのは確かだ。付随して処理が進むという、心理士さんに言われたことが初めてわかった。

症状の変化は

3本の樹のうち、1本に変化があった。では身体の症状は3分の1になったかというと、全然そんな感じはしない。治療による体調の揺らぎは、始めてから7か月ずっとあって、悪夢が増えたり減ったり、腰痛や肌荒れ、腹痛や便秘・下痢などが日々変化している。
全体的には良くなってきているが、変化はとてもゆっくりだ。振り返ると「そういえば最近…」と思えるものなんだろう。数ヶ月前の日記を読むと少し変化を実感できるくらいで、日常はやはり行ったり来たりでもどかしい。

4回目のカウンセリング

トラウマを整理した話、宿題だったパーツワーク、服の断捨離をした話、元彼の話など。
いつも傾聴をゆっくりしてくれる。ずーっとメモを取りながら、うんうんと、質問を交えて聴いてくれる。評価はあまりせず、興味を持って聞いてくれている感じが、とても話しやすい。
前の心理士さんはメモを取ったり取らなかったりしていて、それが実は負担になっていたのも最近気づいた。メモを取ったらそれは「重要な情報」で、メモを取らなかったら「必要ない情報」だと言われているようで、少し怯えながら話していたと思う。

今の心理士さんは、本当にずっとメモを取っているので、どんな話も溢さずに聴いてくれるんだ、と思えている。ちなみにメモは見えないので何が書かれているかはわからないが、それで良いと思っている。心理士さんが気になった話は、質問で掘り下げれば良いし、そうでなくてもうんうんと書き留めているのを見ると聞いてくれていると思えて安心する。

イメージワーク?

療法の名前は後回しになりがちで、その時に必要なものをあまり説明せずに始めることが多い。いつも優しく誘導してくれる。

母のことが落ち着いたなら、残り2つの根っこのどちらかをやろうということになった。ここでも古い方から順に扱うという話になって、父について少しやってみることに。
とある場面に行って、身体感覚を観察し、その変化を感じた。
根っこを扱うと思うとどうしても戦える自信がなくて(戦うわけではないのかもしれない)、誘導があるとはいえ恐ろしい瞬間に飛び込む勇気がなかった。私が怖い怖いと言うので、優しめの場面を設定してくれたように思う。

不快な身体感覚を「そのまま感じてください」と言われ、引き込まれないか心配しながら、そのまま我慢して抱えてみた。喉がぎゅっとして息が吸えないとか、慣れない言語化に苦戦しながら説明し、そのまま感じる。すると、身体感覚が変化していく。それも説明する。
今回は、不快な感覚が大きくなった後、自然に涙が出て落ち着いた。
SEかどうかわからないが、トラウマの「エネルギーの解放」が少しはできたのかも知れない。

もう一度最初の場面に戻ってみて、身体感覚を観察する。落ち着かない、ソワソワする。
いつもと同じ。その場面では落ち着かなくてソワソワする。ゆっくりできない。
すると、私のイメージの中では設定した場面と少し違っていることがわかった。それを、設定通りの場面になるように調整(父を別の場所に瞬間移動)して、その後の身体感覚を味わう。心の底からほっとして「あーー良かったーー」と声が出た。

これを家でも何回かやってね、ということでこのイメージワークが今回の宿題になった。トラウマ治療で過去をガシガシ清算するというより、今はまだ日常生活が改善するようにする段階なのかもしれない。境はないかもしれないけど。

その後

翌日、カウンセリングで扱った場面になり、効果がわかった。
ソワソワする感じも、落ち着かない感じも、ほとんど感じないくらい軽減されている。イメージワークを家で復習する予定だったのに、そんな暇もなく現実になってしまったが、カウンセリングのたった一回で効果が出ていることに驚いた。
こうやって文字にしてアウトプットすることや、それを読み返すことで、一種の再体験ができる感じはするが、それでうまく復習できているのかもしれない。

また次回。