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日記:小説『少女』を読む

ㅤ野口冨士男の『少女』を読んだ。22歳の青年が、名家の女子小学生を誘拐するんだが動機がただ美しいからってのが良い。逃避行もので有名なのだと『俺たちに明日はない』や『傷だらけの挽歌』(ちょっと違うか)があるけれど、『少女』にはセックスがない。暴力も無い。静かに二人が旅をして逃げる、ただそれだけ。
ㅤ青年はある理由からセックスを毛嫌いしていたし、それ故に少女は自分を攫った青年を信頼する。これはLOでは出来ない芸当なんだな。美しすぎる。
ㅤ物語のセックスや暴力ってなんだかマヌケで笑っちゃうんだよな。それも嫌いじゃないけれど、『少女』には徹底した切実さがある。二人とも少しでも長く一緒に居たい、たったそれだけで逃げ続けてる。
ㅤ『少女』の何が上手いって、初めの内は青年に娘の親から金をゆすろうって気があるんだな。『傷だらけの挽歌』もそこまでは同じで、その後に抵抗する娘を犯ちゃうんだっけ。これもこれでかなりの名作なんだけれど。
ㅤ『少女』の二人が群を抜いて美しいのは、そこに利害だとか大人の世界のいざこざが一切ないからなんだろうな。二人はその世界から逃げて、やっぱり最後は捕まってしまうんだけれど。このラストも泣けるんだよなあ、素晴らしい。

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