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トゲトゲ|#小さなお話


むかしむかし。

川の近くの、暗くて静かな森に、

ひとつのソウルボールが生まれた。



朝から夜まで、

まっくらな森にたったひとつきり。

ソウルボールは、こわくて

泣いてばかりだった。






おまけに、冬になった。

川やモミの木はこおりつき、

ソウルボールは寒さに

ふるえあがった。



「ここから飛び出さなきゃ」



ソウルボールは勇気をふりしぼって

森から出た。






森の外は、

広くて草がいっぱい生えてたみたい。

今はいちめんの枯れ草の丘だった。

ソウルボールは草の上を飛んで、

まわりを観察した。



小さなアリが、なかまたちと一緒に、

寒いなか、

何かのエサを懸命に運んでいた。


「ばかだなぁ。

巣になんか運ばなくたって、

見つけたら

ひとりじめすればいいのに・・・」



ソウルボールは、自分が

エネルギーを吸いこんだときのことを

思い出した。







しばらくあちこち観察していたら、

ぽつ、ぽつ、と雨が降ってきた。



「あ、寒いから、ぬれたくない」



ソウルボールは丘のてっぺんの

大きな木の下へ向かった。



ソウルボールが飛んでいくと、

雨やどりできそうな場所に、

野ネズミが2匹、

身を寄せあって入ってきた。



「ねぇ!ここは先に見つけたんだよ。

あっちへ行って!!」



ソウルボールは大声をあげて、

強い光をはなった。

驚いて、野ネズミたちは

逃げていった。



「・・・ふぅ。良かった。

この場所があれば、

ぬれなくてすむ」




ソウルボールがひと息ついていると、

さっきの野ネズミたちが

雨にぬれて、また戻ってきた。



「何で来るの?

もうここはいてないよ。

他のところを探して!!」



野ネズミたちに叫んだとき、

ソウルボールに異変が起こった。



透明なボールだったのが、

鋭く伸びた

トゲトゲのたまになったのだ。








春になって。

枯れ草は青々と生えかわり、

色とりどりの花が咲きみだれた。

蝶々は2頭か3頭、

いつも仲良くちらちらと飛んでいた。

野ウサギ、野ネズミたちは、

丘を楽しそうに遊びはじめた。





トゲトゲのソウルボールを見ると、

みんな遊ぶのをやめて、

逃げるように遠ざかった。

ソウルボールは

明るい季節に変わっても、ずっと

ひとつきりで過ごした。



ソウルボールの心はふさいだ。

そして暗がりで眠るとき、

うつろな空間につぶやいた。



(間違ったことはしていない。

みんな分かっちゃいないんだ・・・)






うとうとしていると、暗がりのすみに

光が差してきた。


(ーーーーー?)


光の中にきらきらした粒がかがやき、

しだいに人のような姿が現れた。

なぜか、

懐かしさを感じる妖精の姿だった。


「ーーートゲトゲさん」



テレパシーで聴こえるような声。


「さびしいのね。

ひとつきりでいたくないから、

森を出たんでしょう?」



「・・・・・」



トゲトゲのソウルボールは

喉がつまって何も言えなかった。



「方法があるわ。

・・・もう、分かってるわね?」



光の中の妖精は、

手に持ったスティックで

トゲトゲのソウルボールを示した。


「抱きしめられたければ、

トゲトゲをなくさなきゃ。


誰かによりそうにも、

一緒に遊ぶにも、

トゲトゲはじゃまでしかないわ」



妖精は微笑んだ。

誰かに微笑まれることの無かった

ソウルボールは、

突然涙がこらえられなくなった。



ーーー泣いて、泣いて、

しゃくりあげながら泣いているうち、

熱い涙で

トゲトゲは溶けていった。



光の中の妖精は、

その様子を見守ったあと、言った。



「Good Luck・・・幸せになるのよ」



きらめく光の粒がまたかがやいた。

いつの間にか、その奥に

妖精は消えていったのだった。





【fin】




このお話は、以下の過去記事にインスパイアされて創作しました。

noteを始めて間もない頃のものです😌

↓ ↓ ↓


自分のことが正しい、と思っていた私は、ソウルボールでした。また、息子もある意味ソウルボールだったのでしょう。


今では、懐かしくさえあります。



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また、次の記事でお会いしましょう!



🌟Iam a little noter.🌟



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