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『すずめの戸締まり』感想メモ

あまりネタバレにならない範囲で『すずめの戸締まり』感想。己を吐露することよりも「他者のために話しかける」ことに比重があるという印象があって、その点で、監督のこれまでにない作品になっていたと思った。

「他者のために」というのは言い換えれば、(その他者たちの生きている)「場所のために」ということでもあって、それは物語が進む中で明瞭に描かれている。そしてそれは結局、主人公が彼女である意味に向かって収斂していきながら、映画を前に進めていく。

自分自身の屈託にかかわる意味でいうなら、ほとんど絶叫に近い「私」の吐露を社会と拮抗させた前作『天気の子 Weathering With You』のほうを選ぶ。しかし『すずめ』は、自分ではない、この映画が届いている他者の誰かたちのことを想像せずにはいられない映画だ。その意味はとても巨大だと思われた。

別の言い方をするなら……例えば、もし私に子供がいて、アニメに興味をもつような年齢になって、【いちばん最初に観る新海誠作品】を、私が薦める立場になったとしたら、間違いなく『すずめの戸締まり』を選ぶだろうと思う。「私」以外の誰かというのは、例えばそういう対象のことだったりする。

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