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まりもっこり

出会い

就職を機に上京したわたしは、新卒で入った会社を1日で辞め、6月頃から院試の勉強に明け暮れていた。

会社を辞めるということは収入が無くなるということだ。

親からの仕送りはもらっていたが、同世代が一斉に働き始める中で自分の収入がゼロになることはかなりの恐怖を伴った。

そんな時だった。

奢ってくれる男見つけて彼氏にしたらいいやん!

という安直な考えからマッチングアプリを入れ、まりもっこりに出会ったのである。

まりもっこりはりんごマークの大手外資系企業に勤めている3つ上の男だった。

写真では体型や顔は分からなかったが、スペックだけで会うことを決めたわたしは、ウキウキしながら渋谷に向かった。

待ち合わせ場所に現れたのはまりもっこりにそっくりな顔をした巨漢だった。

付き合ったきっかけ

まりもっこりは大しておしゃれではない「唐揚げ×ハイボール」的なお店にわたしを連れて行った。

まりもっこりの話には全く興味が持てなかったが、わたしはお金のためなら自分を偽ってまで相槌を打てる女である。

「へぇー!そうなんだぁ!」
「すごいじゃん!尊敬するよ!」
「大変な時期もあったんだねぇ…」

まりもっこりの目がハート型になっていくのが分かった。

2軒目でまりもっこりはiPadのイラストのアプリを用いて「付き合ってほしい」と告白をしてきて、わたしたちはあっという間にカップルになった。

わたしのためにお金たくさん使えよ〜!

仕事を辞めて焦っていたわたしが彼氏に求めることはただそれだけだった。

それだけでよかったんだよ…。

シェイクシャック事件

まりもっこりと付き合って初めてのデートで、わたしたちは六本木にある映画館に行った。

映画代はまりもっこりが出してくれたと思う。
(そうでなければこの時点で帰宅しているww)

その後、近くにあるシェイクシャックにハンバーガーを食べに行こうと誘われ、まりもっこりとお店に向かった。

シェイクシャックはファストフード店によくある「先に注文とお会計を済ませて席で待つ」というスタイルのお店である。

まりもっこりと一緒に列に並んで、まりもっこりが財布を出すのを待っていた時だった。

「ん、先お会計していいよ」
とまりもっこりは言った。


(………は???)

彼はあたかもレディーファーストかのように彼女に別会計を突きつけたのである!!!

ビルが崩れ落ちるかのような衝撃が走り、わたしはレモネードとポテトを注文することしかできなかった。

それからしばらくして、「院試の勉強で忙しい」と自らまりもっこりに別れを告げた。

後日談

半年後、わたしは院試に合格して、晴れて大学院生になれることが決定した。

わたしは焦りや不安から解放され、自信を取り戻し、羽を伸ばし始めていた。

その時、まりもっこりからタイミングよく「院試終わった?また会いたいです」といった内容のLINEが来たのである。

わたしは「受かったよ!でもわたしが困窮してる時にハンバーガーのひとつも奢ってくれない人とはこれからのこと考えることできないんだわ」とLINEをして、まりもっこりをそっとブロックした。

P.S. 面白いくらいブサイクだったwwww

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