ハゲカス
わたしの恋愛遍歴において最も長く付き合った、付き合ってしまった男がいる。
その名もハゲカス。
好きな気持ちが冷めた頃、よく見たらハゲ散らかしていたのでそう呼んでいる。
出会い
2020年の秋。
新卒で入った会社を1日で辞め、3ヶ月ほど勉強に明け暮れた末に志望する大学院に合格したわたしは、開放感に溢れていた。
何もかもが美しく見えるし、世界はわたしのためにできている!上手くいく!と勘違いもしてしまうほどだった。
ハゲカスは友達の会社の同期だった。
初めて複数人で会った時から好意を感じ、わたしの服や体型を褒めたり、気遣ってくれたりする姿を見て、下がっていた自己肯定感が急上昇するのを感じた。
デートを重ね、あっという間に付き合うことになった。
ハゲカスはプライドが高いのでわりとなんでも奢ってくれる方だったのはありがたかった。
違和感
付き合ってすぐの年末、わたしたちはとんでもない喧嘩をした。
ハゲカスの言葉のひとつひとつがわたしの癪に障ることが原因だった。
お姉ちゃんと同じ服のブランド着てるからいいなと思った!
お姉ちゃんは成人祝いに20万の真珠買ってもらってたけど、○○(わたし)ちゃんはそういうのないの?
子どもが生まれたらお姉ちゃんが留学してたのと同じところに留学させたいな〜!
子どもは2人ほしい。上が女で下が男。3歳差がいい!(そのまんまハゲカスの家族構成)
わたしが街で見かけたYSLのバッグをかわいい!と言った時、「お姉ちゃんが持ってた気がするわ〜」と言う。
お姉ちゃんの体重は42kgらしい。そのくらいがいいな。
お姉ちゃんはTバック履いてる。○○(わたし)ちゃんにもTバック履いてほしい。
挙げ出したらキリがないくらい、ハゲカスはシスコンだったのだ。
お姉ちゃんを介してマウントを取られているかのような気持ちになり、「じゃあもうお姉ちゃんと結婚すれば!?」という言葉が何度も喉まで出かかったけれど、わたしはモラルのある人間なので堪えることに成功した。
ハゲカスはさらに「実家太いアピール」「裕福な家の子アピール」もすごかった。
実家の太さとか、裕福な家だとか、アピールすればするほどしょぼく感じるからやめとけ。
最初に違和感を抱いた時に別れたらよかったのに、わたしたちは同じことが原因で喧嘩を繰り返し、1年半ほど付き合っていた。
終焉
ハゲカスとの揉めごとに疲れ切っていた頃。
わたしの誕生日がやってきた。
ハゲカスは10万円くらいするアクセサリーをプレゼントしてくれた。
(お姉ちゃんもセンスいいねって言ってくれたんだって!笑)
その翌月にはハゲカスの誕生日がある。
わたしは10万円のネックレスのお返しとして誕生日をお祝いしてあげて、笑顔で別れようと決めていた。
その態度がハゲカスを不安にさせたようで、正直に話したところ、「そんなんなら祝わなくていい」「じゃあ別れよう」となって終焉を迎えた。
やったー!祝わなくてよくなったー!
リッツカールトンのディナー連れて行ってあげようと思ってたけど、お金浮いた〜!
何人もの友達から、
おかえり!!!
別れられて本当に良かった!!!
これからはいっぱい遊ぼう!!!
とメッセージが来た。
本当に別れられてよかったなあ…。
ハゲカスとの交際期間は1年半を超えていた。
わたしは今、貴重な20代の時間をこんなハゲに費やしてしまったことをひどく後悔している。
友達の言うことは正しいんだと改めて実感した。
友達に背中を押されない恋は幸せにはなれないんだよ。
後日談
別れてから半年ほど経ったある日。
ハゲカスから「○○(わたし)ちゃん久しぶり!元気してる?」とLINEが来た。
しかし、わたしは恋多き女だ。
一度別れた男はノーチャンス。
すでに好きな人が何人かできていたので、そっと消してブロックした。
それからまた3ヶ月ほど経ったある日。
「ハゲカスが婚約した」というビッグニュースを友達から聞いた。
自分が彼女にプロポーズした1週間後にはお姉ちゃんの結婚式。
お姉ちゃんとは結婚できないって分かったから焦って別の女にプロポーズしたみたいだね!
ハゲカスの正体を知らずに婚約してしまったであろう女さん、害悪シスコン男性の犠牲になっていただきありがとうございました。
一生をかけて夫婦として添い遂げることを誓い、世の中に二度と放たれないように管理のほどよろしくお願いしまっす!
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