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不動産経営者

出会い

彼は10個も年上だったので、わたしは最初から「本気になれたらいいな」「好きになれたらいいな」くらいの感覚でデートを重ねていた。

祖父の代から続く不動産会社を経営しているという彼は、いつの時代に流行ったのか分からないジャストサイズの服を着ていて、見るからに冴えない男だった。

見た目はスヌーピーのチャーリーブラウンに似ているー。
というか、わたしは冴えない男は皆チャーリーブラウンに見えるという呪いにかかっている。

毎回、目的地とは反対側の駅の出口に待ち合わせ場所を指定してくるし、

毎回、チェーン店しかない商業施設のレストラン街に連れて行かれ「なんでも奢ってあげるよ」と言われる。

話があまりにも面白くないのでわたしがボケてみるのだが、それを拾ってくれるわけでもない。

この人が35歳にして未婚であるのも納得がいく思いがしていた。

結婚したら“よく稼ぐ無害な旦那”になりそうではあったので、そこはわたしの希望と一致していた。

冷めそうになった時は、彼が自社ビルのペントハウスに住んでいることを思い出し、なんとか彼への興味を絶やさないようにしていた。

告白

4回目のデートだっただろうか。

彼は半地下の男臭いハンバーグ屋さんにわたしを連れて行った後、ひと気のない場所で「好きだからキスしたい」と言ってきた。

この人とキス…?
いやいやいや無理すぎる!!ヴォエ!!!

※大失礼

「そういうの付き合ってないとしないですし、○○さんのことまだよく知らないからもう少し時間をかけたいです」
わたしは焦りながらも精一杯のリアクションをしたつもりだった。

すると彼は、
「付き合おう。このまま買い出しに行ってホテルで飲み直そう」
と言ってきたのである。

終焉

(キモすぎるだろ!!!!!)

わたしは本心が表情に出ないように気をつけながら、やんわりとお茶を濁して帰宅した。

彼とのデートでお金を払ったことがなかったのが唯一の救いだったが、合計4回のデートに時間と労力をかけた自分のサンクコストも余裕で無視できるくらいに、彼のことは無理になってしまった。

追い討ちをかけるように無理だったのが、次の日になっても彼から一切の連絡が無かったことである。

お前プライドも高いんかい!

即ブローーーーック!!!

はい次!!!!!

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