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Out of Sight, Out of Mind/LEVEL42

「視界から消えて、心からも消えた」

ジャズ好きの彼氏とわたしは最初はただの友達で、出会った頃はすでにわたしには他に好きな人がいた。その好きな人もジャズ好きの彼氏と友達で、ふたりはよく会っていた。その彼は牡羊座だった。

牡羊座の彼との出会いはネットで、何度かやりとりするうちに彼が笑わせてくれたり、音楽のセンスが一緒だったりしたことがきっかけで、次第に彼に惹かれていくようになった。ジャズ好きの彼氏とはその後同じところで出会い、三人でよくチャットをしていた。

そんな牡羊座の彼が勧めてくれたのが、レヴェル42というバンドだった。「Something about You」という曲しか知らなかったが、彼の勧めてくれるバンドならきっとわたしも好きになれると思った。

彼は何度も二人で会おうと言ってくれた。この人なら信用できるから大丈夫だと思った。しかし、自分に自信がなかったわたしは、会ったら彼にフラれるだろうと思い込んでいた。(まだ告白をしてもされてもいないのに。)実際に会ったらわたしは彼に夢中になるだろうけど、彼は逆にわたしに冷めるだろうと思ったのだ。それが怖かった。今が楽しいから、今のままがいい。会いたいけど会いたくない。どうしよう、と思った。

そんなことをして迷っていたら、ジャズ好きの彼氏(当時はまだ彼氏でない)がもうすぐ誕生日だという。「じゃあ、その日会おうか」と彼にはなぜか何の不安もなく言えた。たぶん嫌われても彼とは友達でいられると思ったからだろう。彼は「こんな顔してるけどいい?」と自分の写真を送ってくれた。かわいいクマさんのような顔だった。わたしは「かわいいじゃん」と言った。

ジャズ好きの彼氏の誕生日に会いに行ったら告白された。「誕生日があって、きみと会えて、初めて「やるじゃん俺の誕生日」って思ったよ」と言われた。ジャズ好きの彼氏とは音楽の好みが違うけど、うまくやっていけそうな気がしたので「お友達から」とOKした。彼とは結局別れたけれど、今ではいいお友達だ。

ジャズ好きの彼氏よりも先に牡羊座の彼と先に二人で会っていたらどうなっただろうと今でも時々思う。たぶん、別れたら友達ではいられなかっただろう。時々「もしも」が頭をよぎるけど、彼にとっては、きっとわたしはもう視界から消えた女のひとりにしか過ぎないのだろう。だけど、レヴェル42のことは今でも好きなままだ。たぶんこのままずっと好きだろう。ジャズ好きの彼氏は、レヴェル42を勧めてくれたのが牡羊座の彼だということを知らない。

『Standing in the Light』(1983)収録。アルバムからのファーストシングル。全英チャートではトップ40内には入れなかったらしい。残念。アルバム自体は彼らの初のトップ10ヒットになった。


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