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ベーコンが焼ける


ベーコンを焼いている。
ただ、それだけのこと。
だけど、その焼ける音、その焼ける薫りを感じるだけで、うれしくなる。

仕事を辞めて、金銭的な余裕はなくなった。代わりに、大切な時間が増えた。

朝、キッチンに立つ。
頭上の棚から、箱とシェーカーを取り出す。箱の中から、2本の野菜スムージーを取り出しシェーカーヘ投入する。冷蔵庫から、豆乳を取り出しシェーカーヘ投入する。
シャカシャカと勢いよく上下させ、野菜スムージーと豆乳を撹拌させる。
そして、その液体を一気に流し込む。
洗面所ヘ行き、マウスウォッシュを口に含んで「ペッ」。
口元と髪を整え、バッグを斜めがけする。

時間軸のない息子の部屋をノックして
「行ってくるね」
と、声をかける。
聞こえているのか、いないのか、私にはわからない。

玄関のドアを閉め、小走りに駅へと向かう。
そんな朝だった。

ベーコンを焼いている。
ただ、それだけのこと。

「あ、起きた?」

今日も、何気ない朝がはじまる。

サポートしてほしいニャ! 無職で色無し状態だニャ~ン😭