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マンデラ小説「M.e」EPISODE2 第8話「ヨハネの黙示録/後編」

【「兄」インディ・ホワイト編】

∶前回までのM.e∶
インディ(Dr./ドク)とエースは平行世界の地にて強化キャンプに参加し鍛えに鍛えた。そこでJBやKと出会う。そしてオリジンが潜伏する日本に向かうも、トカゲ女とチームを組む事になり騒がしいトリオに悩まされつつ日本にやって来た。


■201☓年7月東京■

東京に来てから、俺の様子は変わったようだ。

初日の成田空港の駐車場。

車で迎えに着てくれた「Qアノン」スタッフの日本人女性。

Elegantでモデルのような容姿をしていた。

その彼女が「Q」だったんだ。

世界中に名を轟かせた「Q」だ。

感動したよ。

でも彼女は、顔を真っ赤にし否定したんだ。

「私は、ただのアルバイトなのよ」

笑いながら頭を振ったんだ。

俺は思考が停まった。マヌケ面を曝した。

こんなCrazyな話は聞いた事が無い。

あの世界的に有名であり、ディープステート達を震え上がらせている「Q」が…

ただの【アルバイト】だったなんて…

腰を抜かすほどの衝撃だよ。

DSの連中が、この事実を知れば一体どんな顔をするんだろう…。

久しぶりに、腹を抱えて大笑いしたよ。

あの冷静沈着なエースが、心配して俺の背中を擦るもんだから…。

その仕草が滑稽で可笑しくて、よけいに笑いが収まらなくなったんだ。

思い出しただけで、今でも笑いが起きる。

俺は、フロリダの米軍キャンプの訓練から…

いや、ロンドン動物園の地下でファーストトカゲにぶっ飛ばされてから、変な緊張が続いていたんだと考えた。

状態としては、よくなかったはずだ。

それが、トカゲ女とチームメイトになり

エースとの凸凹コンビを見せられ

「Q」が【アルバイト】であったりで

腹が痛くなるほど笑って、自分自身がリセットされた気がする。

…………

長時間のフライトと、笑いすぎたのと、マックスの長話で疲れたのか、俺はビックリするくらい爆睡したようだ。

六本木に近いデカいホテル。

空港から「Qアノン」の事務所に直行し、打ち合わせをした後に、暑い中、俺達は3人で歩いてやって来たんだ。

スイートルームにエキストラベッドを入れて、俺達は宿泊している。

マックスは、当然のようにベッドルームを1人で独占していた。

俺とエースは、簡易ベッドとソファで寝る羽目になった。

しかし、キャンプの寝床に比べて、快適なのは笑った。

珈琲のいい匂いがして、目を開けると…ソファで寝ているはずのエースが居ない。

代わりにマックスが、優雅に足を組んで珈琲を飲んでいた。

「あら、王様が起きたわよ」

読んでいた新聞を置いて、ケラケラ笑った。

キッチリ着替えてやがる。

何が王様だよ。

ヤツには構わず、部屋の時計を見た。

「嘘だろ?もうこんな時間か」

頭をかいて欠伸をする。

いつ寝たか覚えてないが、たぶん20時間近く寝ていた筈だ。

頭もスッキリしていた。

やはりプレッシャーが大きかったのか、昨日に大笑いした事で、本来の俺の調子が出てきたのか…。

シャワーを浴びようと立ち上がり驚いた。

俺は、本当に王様が着るような豪華な白色のガウンを着ていた。

流石「J」の用意した高級ホテルだな。

バスローブが豪華すぎる。

いつ着たのかも覚えてない程疲れていたのか。

鼻を擦って笑った。

「Hey、マックス!

エースはどこいった?」

マックスは珈琲カップから口を離して

「やっぱり自分で淹れた珈琲は美味しくないわね。

エースなら、隣のトレーニングルームで汗掻いてたわよ。

後で彼に淹れ直して貰わなきゃ」

俺は頭を振って感心したよ。

エースは本当に凄い男だな。

シャワーで頭をスッキリさせたら、俺もトレーニングしないとな。

王様ガウンを着た俺は、間違えてトイレのドアを勢いよく開けてしまった…。

大笑いした。

調子が出たのか悪いのか…。

反対側の同じ様なドアを開けると、バカでかいBathRoomが現れた。

頭からシャワーを浴びる。

俺達が来た日本は、本当に危険な国らしい。

暴力で邪魔をする奴等が大勢いるからだ。

それとマックスを守る役目もある。

だから「J」が用意した寝床は、彼の会社の傘下の高級ホテルだった。

セキュリティは「J」の仕掛けがあるから心配ない。

もしもの時を考えて、3人が泊まれるスイートルームだ。

1人ずつだと、襲われたら対処出来ないからだ。

シャワーを浴びながら、昨日の事務所での事を思い出していた。

…………

マックスが言った…7つ目のラッパが吹かれてない?

ラッパ吹きとは【ヨハネの黙示録】の文言だ。

どういう事だ?

それ以前の6つは吹かれていた?

…という事なのか?

俺の顔を見てケラケラと笑うマックス。

隣のエースは肩を竦めた。

エースが、初めて分かりやすいジェスチャーをしたのに目を奪われたよ。

ふっと気持ちが軽くなる。

マックスの感情の振り幅が、サイコパスのそれに近い。

俺の感情が振り回されないのはエースがいるからだな。

気が抜けたよ。

俺は、この2人と居ると本当に調子が狂うんだ。

鼻を擦って笑った。

「選手交代だわね」

マックスが、後ろからツカツカと俺の前に回り、Qにウィンクして彼女の横に座った。

マックスに何か言われたのか、代わりにQが立ち上がり、エースと共にキッチンに消えた。

珈琲のお代わりだろう。

「エース!俺の分も頼む」

キッチンに居るエースが俺に

「珈琲の飲み過ぎは、体が毒になりますよ」

「貴方はね…もう一度基礎から英語を習わないとね」

Qがエースの肩を叩いて、クスクスと笑って言っていた。

本当にアットホームな雰囲気だ。

日本語で話せばいいのに、彼は日本人のQに対しても、俺の前で極力日本語を使わないようにしていた。

マックスも日本語を話せるし。

俺だけが、日本語を話せないのを気に掛けてくれているんだろう。

優しい男だ。

「ヨハネの黙示録の件の前に、まずは話を整理しないとだわね。

と言うか…ヨハネの黙示録ってそんな大事でも無いんだけれどもね。」

マックスがケラケラ笑う。

足を組み直して前のめりに座り直した。

左手の人差し指を、顎に置いて天井を見上げる。

人間のする仕草みたいだ。鼻を擦って笑った。

「うーん、まずは、私の知る記憶ね。

これはDNAレベルの話なのよ。記憶の遺伝と言うのかしら。

私達の全てを作ったオリジン。

彼の記憶も持ち合わせてるのよ。

それは、彼のDNAが私達の礎みたいなものだからね。

不思議なDNA構造なんだと思うわ。

流石は宇宙文明レベル7の技術よね。

感覚的に知ってるよの。彼の言動や考え方、感情とかもなの。

場所だったり、彼が起こした行動の全てね。

それでね。

まずは、私達の序列の話しなのよ。

オリジン、ファースト、そしてセカンド。

オリジンは、ファーストトカゲの一人なんだけれど、セブンズ達の呪縛が解けた天才が現れた、って感じ。

でも、ファースト達は天然記念物的に放牧されてるけれどね。」

ケラケラと笑うマックス。

あまりにも上から目線が滑稽で、吹き出しそうになった。

「セカンドはオリジンに作られた9人ね。

その9人に創られたのが私達、セカンドプラスと言う割と高い位置にいるのよ」

「トカゲになんて地位があるよかよ。
みんな似たような顔してるから区別もつかないんしゃないか?」

声に出た。

ヤベ。いつもは心の中で毒づいてたのに。

「あら、貴方…何か変わったわね。
いい調子なんじゃない?きっと私と一緒に居るからよ。」

俺は咄嗟に「勘弁してくれ」と嫌な顔をした。

ケラケラ笑うマックス。

トカゲの本能なのか、俺のプレッシャーが軽くなって来た事を見透かされたのか。

鼻を擦って笑った。

「私達の後に作られたサード達は、失敗作が多くてね。

サード計画と言われるモノなんだけれど、トカゲ以外の「獣と人間」との合成の事なの。

セブンズ達は、自分のアバターを獣で簡単に創られたんだけれどね。

オリジンでさえも、真似て作っても成功した事がないのよ。

作られたのは100体程かな。

ほぼ失敗なのよ。

ほら、あそこのロンドン動物園の地下研究施設でやってたのよ。

失敗しても廃棄はしなかったから、管理もされず下野されたのよね。

ま、捨てられたのね。

後は、脱走ね。

知能も低い子達は逃げたわね。

近代では、生き残りのサード達を、狼男とか吸血鬼とか雪男やらUMAとか呼ばれているから何処かで元気にやってんじゃない?

人間や動物を襲う子達もいるから厄介なのよね。

生殖器官が無いから、繁殖出来ずに腐ちて終わりだから、将来的には問題はないんだけれどね。」

「野良のトカゲ?他人事みたいに言うね」

吹き出しそうになる。

「トカゲじゃなくてケモノね。
何故か、獣と人の合成は出来なかったのよ。不思議よね?いつかセブンズ達に会ったら聞いていてくれない?」

ケラケラと笑う。

「俺の弟のジャックも言ってたんだが、UMAの類は、死骸が見つからないから存在しないって通説だそうだ。

だからサード達は、お前達に始末されたんじゃないのか?」

「貴方、ボケたの?

ロンドン動物園の地下でファーストトカゲの最後はどうなったのよ?」

マックスはニヤリと笑った。

「そうか。…物体の形を保てずに、デジタルっぽい、小さなドットの火花みたいなのを沢山散らして消えて無くなったアレか…。

でも、あれは「J」の武器で消えただけだろう?」

「それは違うのよ。外敵や他のモノからの攻撃で、生命の危機に合うと平行世界に逃げられるのよ。

便利でしょ?
石運びで、ペチャンコになっても大丈夫なのよ。

何かあれば、アチラに移動して難を逃れるのよ。だって、セブンズ達からすると貴重な労働力だからね。

勿体ないじゃない。不注意とかトラブルで折角創ったファーストトカゲを無くすのは…。

あれよね、SDGsの走りよね」

トカゲジョークに、俺は鼻を擦って笑った。

「寿命消滅すると話が違うの。

セブンズ達が創った、私達の共通DNAは、生命が死滅すると物質自体が形を成さなくなり消滅して跡形も無くなるのよ。

これは、ファーストからサードまで絶対よ。

アレよね。

セブンズ達が、地球を創る為に作ったファーストトカゲ達の進退問題になるのかな。

地球の主役の人間達の邪魔や、迷惑にならないように、ファーストは死んだら消えて無くなるんじゃない?

本当は、死骸からDNAを盗まれたくない、ってのがセブンズ達の本音かもね。」

ケラケラ笑った。

「じゃ、あれだな。マックスも亡くなれば消えて消滅するんなら、墓の用意は要らないよな」

「そうなのよ!墓代は助かるわね」

ケラケラ笑うマックスを見て、俺もサイコパスみたいだと思って一緒に笑った。

マックスは構わず話し続けた。

「それでね、私達セカンドプラスと平行して作られていたサード計画は頓挫したのよ。

失敗作ばかりだったからね。

方向転換して私達トカゲを進化させたNewタイプがいるのよ。

やっぱりトカゲはトカゲよね。」

マックスは、ワザと俺達を笑わせようとしているに違いない。

自分の事なのに「トカゲ、トカゲ」と他人事見たいに言う。

キッチンにいるエースとQの2人が爆笑していた。

「そのNewタイプトカゲを作る前に、私達セカンドプラスというトカゲを作った訳があるのよ。

これはね、セカンドが永遠に生きる為に渇望した結果なのよ。

ファーストと違ってセカンドは寿命が短いのよ。

人型に近づけると、人間の要素が大きくなるのが原因よね。

オリジンに代わって人間の営みを近代化させてきたセカンド。

神として崇められ、持て成され贅を尽くした環境で暮らす生活。

人の暮らしが豊かになると共に、人間では無い容姿が、奇異の目で見られるようになる。

神なのに影に追いやられる。

欲望が出ないわけないわよね。

表に出たい。自分が作った人間の社会で頂点として陽の光を浴びたい。

そして永遠に生き永らえたい。

トカゲも人間も良い生活を満喫できたら若さと長生きと健康よね。」

マックスは、作ってもらった綺麗な顔と肌が気にいったのか、顔をペチペチと手のひらで叩いて見せた。

「で…、セカンドは自分の身体が死んで消えていくのを何とかしたかった。

200〜300年くらいで寿命じゃないかしら?

身体を改造したりで、防げるものでは無い。セカンドの身体では延命は出来ないの。

これは、オリジンからの記憶で理解してたの。

方法は1つ。

新しい身体を創って、自身の魂を移動させる事。

寿命がくれば、次々と新しい身体に乗り移ればいいからね。

古い身体を捨てて、新しい身体に魂を乗り移させる、って実験に執着したのよ。

ま、コピーね。

そしてより、人間に近い身体とトカゲの能力を持ち合わせたハイブリッド。

昼間も出られる人に近しい身体ね。

それで作られたのが、私達セカンドプラスなのよ」

マックスは両手を組んで鼻が高いアピールをする。

「えっへん!じゃないぜ」

思わず笑ってしまった。

マックスが話すと、ホントか嘘か分からなくなる。

「で? 実験成功したからマックスはセカンドの意識を持った生まれ変わりになれたのか?」

「それがね…結果として、セカンドの記憶や頭脳を持った別人格が出来たのよ。

当たり前よね。

自分のコピーを作っても、自分ではない別の人が出来るのは、普通に考えたらわかるわよね?

セカンドプラスが出来たのは200年以上前かな?

メチャメチャ量産したから100人以上はいるんじゃないかな。」

俺は怪訝な顔になった。

「いや、待てよ。おかしいじゃないか?

実験は失敗なんだろう? 

だって、新しい身体は自分ではないんだろう?
 
中止して、新しく作り直すんじゃないか?

魂の移動が出来てない別人格なんだから…。」

マックスは頭を振って

「フフフ、考えたら簡単な話じゃない?

実験から目覚めたら、自分が考えたような新しい身体を持てたのよ。

成功じゃない?

だって…全てを引き継ぐオリジナルのコピーなんだから。

『やったー!成功だー!』

…って、新しい身体で起き上がって喜ぶ訳よ。

ね?

作ったオリジナルのセカンド側は、自分の意識は新しい身体に魂の移動ができてない訳よ。

実験室で、2人の脳を繋ぐケーブルを頭に繋げたまま…

あれ?って…

変わってないのよ。焦るわよね。

新しい身体で喜んでいる自分のコピーを見て

『だめだー!失敗だー!』

ってね。

おかしいわよね。

でね、セカンドオリジナルはセカンドプラスと共に協力してドンドンと量産していくのよ。

次はいけるかもって。

滑稽よね。

オリジナルが死んでもコピーの自分は成功して生きているからお構いなしなのよ。

でもね…ある時期から、私達全員ね…心境の変化というのかな?

新しい身体は作らなくなったのよ。

だから私達の代でセカンドプラスはお終いなの。」

いつの間にか、Qとエースが俺の後ろでマックスの話を聞き入っていた。

「話の腰を折って悪いけど、まずはランチタイムにしましょう」

Qが、笑顔でパンパンと手を叩いて促した。

……………

事務所奥にダイニングがあり、パスタのいい匂いが漂っていた。

エースが作ってくれたオニオンとツナのパスタはシンプルだが、茹で具合がベストで味付けが絶品だった。

塩以外に、隠し味があるに違いない。 

エースに聞いても、変なジェスチャーで返された。

たぶん、教えないって事だよな。

鼻を擦って笑った。

絶品パスタを4人でぱくついた。

俺は機内食は食べたが、腹が減っていたのだろう。

マックスはトカゲの癖によく食べる。

「ビールがあると最高だわね」

絶対にコイツは、寿命が短いに違いない…こっそり笑ってやった。

奥からエースが日本のビールを持ってきた。

エースは飲まないらしい。

俺達3人は冷えたビール缶を頂いた。

プシュとプルトップを開けると3人とも洗礼を受けた。

ビール缶から泡が溢れ出た。

缶を少し振りやがったな。

大笑いしているエース。

変なジェスチャーで謝っていた。

…………

ビールを煽りながらマックスが調子に乗って話し続ける。

「ソーホー街のアジトで、さっきの話しもそうだけれど、私が知る情報は、全部カメラの前で話してたから貴方達知ってるんじゃないの?」

Qがパスタを頬張りながら

「時間が無かったから、誰も確認してないと思うわよ。それに直接、貴女から聞いたほうが楽しいわよ。」

もぐもぐ話した。

エースが変なジェスチャーで答えた。

たぶん、知らないと言う意味だ。

「そのね…話の続きだけれど、セカンドが自分達の新しい身体を欲する事になったのは、宇宙文明レベル7の超高度の科学技術と知識があったからなのよ。

セカンドの9人は、オリジンからの記憶の知識はあるのよ。

それはセブンズ達のオーバーテクノロジーの記憶。

セブンズ達のファーストカゲを創った技術や知識。

オリジンはセブンズ達の技術を使ってセカンドを作ったの。

セカンドも記憶の遺伝で自分達が、どう作られたか?の記憶はあるのよね。

不思議よね。

でも問題かあるのよ。

「3つの杖」はオリジンが姿を消した時に一緒に無くなったのよ。

「杖」は比喩で、装置の愛称なんだけれど「セブンズ達が残した科学装置」である事は確かね。

その杖を隠した場所の記憶たけは遺伝しなかった。

どこに隠したかわからなかったの。

オリジンが、地球中のセブンズアバター達を追放してセカンドを作ってから表舞台から消えたのよ。

その時に杖も表舞台から消えたわ。

セカンドに世代交代させたのね。

で、ポータルの平行世界への移動とか、周波数を照射する装置は、セカンド達が、オリジンからの記憶を元に作ったから純粋なセブンズ達の超技術ではないわ。

地球の地場やエネルギーを、簡単に利用できるように予めセブンズ達が用意してあったのよ。

それは人間達が快適に生活ができるよう考えられてたの。

今は、Newタイプの子達が自分達の利益の為に、其れ等を人間に知らされないように隠してあるけれどね。

で、人間達にその「3つの杖の捜索」を命じてずっと探させたの。

そうね、人間達は書き残している伝承とか書物の記載にもソレらを見つけられるわよ。

モーゼの十戒とか杖とかね。」

マックスはまるで自分が創造主のように喋った。

「いや、ちょっと待てよ。

矛盾してるぞ。

伝承とか言うが、お前達が作られたのはせいぜい、300年も経ってないだろう?

何千年前の話だと思ってるんだ?」

待ってましたかのようにニヤリと笑うマックス。

「ラッパ吹きの話よ」

俺はハッとした。

「そうか…「Qアノン」でも聞いたオリジンの戦争の話なんだな?

その杖を使ってセブンズアバター達を追放する時に使ったんだな?

破壊と文明のリセットか?」

マックスはグビッとビールを飲んで

「文明リセットと言うより、悪質な改ざんよね。

現在の地球の歴史?ってのかな?

だいたい200年くらいじゃないかな?

それ以前の歴史は、現代とは繋がってないのよね。

ほら?歴史は勝者によって創られる!ってヤツよ。」

ケラケラとマックスは笑った。

聞いてはいたが、やはり理解が追いつかない。

「オリジンは、自分達の居た大陸のセブンズアバター達を追い出し制覇。

残ったのは、8地域の文明やら大陸やら…。

それぞれの地域や大陸を収めているセブンズアバターとファーストトカゲ達。

オリジンは、子飼いの人間達やファースト改造して、うまく利用し着実に時間をかけて他の文明や大陸に戦争を仕掛けたのよ。

幾ら万能のセブンズアバター達でも、用意周到に仕掛けられたら駄目だわね。

8地域の文明や大陸のセブンズアバター達と彼等のファーストトカゲ達は、次々と消滅させられたのよ。

殆どが化学兵器の実力行使なのよ。

それがラッパ吹きね。隠語よ。

セブンズ達の残した技術で、大陸毎、文明を海に沈めたり、周波数照射で人や陸地を消したり、洪水で洗ったりしてたわね。

そのセブンズの技術を兵器として使ったのをラッパ吹きと言うわね。

さっき言った「7つ目のラッパは吹かれてない」てのも比喩よ。

回数ではなくて、7つ目のラッパ吹きとは、世界中の全てのトカゲや人間が消えて無くなる事よ。総リセットね!

だって、宇宙文明レベル7よ。

それぐらいの事は簡単にやれるわよ」

手のひらをヒラヒラさせて笑った。

「でもね、タルタリアと日本はそうはいかなかったのよね。タルタリアは今で言うはロシアの地域ね。

そして、私達は日本にコテンパンにやられて敗北したのよ。」

マックスの話は本当か嘘かわからないし、情報が多くて混乱する。

本当は、微力なアルコールで眠くなった情けない俺がいる。

頭を掻いて欠伸をした。

俺の代わりにQがくいついた。

「さっきの話の続きなのだけれど…Newタイプのトカゲさんってどんな感じなの?」

Qはパスタを完食したようだ。

3本目のビールを煽りながらマックスは

「うーんとね…ザックリ言うと、Newタイプは私達セカンドの子供達に当たるのかな?

勿論、私達は産むことは出来ないわよ。

擬似的なファミリーかな?

私達は長い間、人間の生活様式を見守っていたんだけれど「家族」と言う形態と概念に非常に興味を唆られたのよ。

雄でも雌でも無い私達。
繁殖できない私達。

家族を持ちたくても作られない。

それでね、人間の赤子のDNAをイヂたのよ。

私達のDNAを移植して何度も実験して作り上げたの。

自分達のファミリーを持つためにね。」

忌まわしい話だ。

だが、何故かそんな不快な感じがしない。

マックスが話すと何か絵空事に感じてしまう。

本当の事なのだろうが、どこか遠くの物語を聞いているようだ。

これがマックスが言う「トカゲの洗脳能力」なのかもしれないな。

俺の欠伸が止まらなくなった…酔いが回ったのか…。

それを横目に見ながら、マックスが続けた

「それでね、Newタイプは私達セカンドプラスと違うのよ。

人間の比率が大きくてね。

肌感は、ヌラヌラしていても鱗はないわ。

顔も人間になってるけど、個体種によって瞬膜もある子もいるし舌が長かったりするわね。」

「瞬膜?」

俺は意味がわからなかった。

「…Translucent membrane that protects the eyeball」

「猫みたいなアレか?」

「No No No Way…」

マックスはケラケラ笑って、俺に顔を寄せてきた。

目を閉じて見せた。

瞼は上から下に閉じるのだが、もう一つ横から横に瞼があった。その瞼は半透明で気持ち悪かった。

驚きが顔に出てたのだろう。アルコールの酔いが一気に覚めた。

普通は傷付くシーンなのに、マックスはゲラゲラ笑いやがった。

コイツは本当にサイコパス野郎だな…鼻を擦って笑った。

「エリザベス女王はね…あの子は、初期のNewタイプなのよ。」

サラリと言いやがった。

「イギリスは私達の縄張りなの。

王室も財閥も、みーーんなね。

現在は、Newタイプの子達が仕切ってるし、ファミリーを作ってるのよ。

あの子達が台頭してから、セカンドプラスの私達は、我関せずで自由に好き勝手やっているわ。

居場所がないって言うか、役目が終わった?って感じだし、新しい身体も作らなくなったし…寿命でドンドン亡くなったりね。

そうそう、女王も大変なのよ。

結婚して、子供を作るのに側近達の子供を捕り上げるのよ。

実験で成功させてるから後は簡単。

赤子のDNAをイヂって自分の遺伝子を入れてNewタイプレプリティアンを作るのよ。

偽物の愛情を込めて育てるのよ。

偽物って言うのは、たまに親が癇癪起こして殺したりするからね。

Newタイプの子達は、全般にそんな感じなのよね。

代わりにまた作るのよ。

何代目かの子供達。

でも、その子供達が大きくなると大変。

Newタイプのトカゲは変態が多いの。

あの子の息子達も変な趣味があるから…ヤキモキしてたわ。

雄でも雌でもない存在だから、人の概念は無いのよね。だから、相手が男でも女でも気に入れば連れて帰るしね。

大人も子供も関係ないのよ。

それと痛覚が無いから、人間への加減がわからないのよ。

純粋な残虐性って言うのかしら?

怖いわよね。

だからNewタイプは、やらかすヤツが多いのよね。

ほら?今はSNS時代じゃない?撮られちゃうわけよ…いろいろとね。

で、その変態の子供達が大きくなると王室の婚姻問題がでるじゃない?

当然繁殖は出来ないから結婚は一大事なのよ。

人間の王子だと知らされないで、深く付き合ったり結婚した女性は大変よ。

お見合いとかね。

貴族でもトカゲ一家もあれば人間の一家もあるからややこしいのよ。

人間の一家でも親が、王室はレプリティアンって知っていて我が子を差し出したりするからね。

そうなると大変よ。

本性がバレて、発狂した子の後始末をしてコピーを用意したり。

トカゲの秘密をバラさない、って約束するんだけれど…守らない人間は多くて始末が大変なの。

子供が出来てないのに、王妃はお腹にクッションを巻いてたり…。

本当にいろんな騒動があったわね。

女王は後始末ばかりよ。

私もよくあの子の相談に乗ってたのよ。」

ケラケラ笑うマックス。

俺は、ふんふんと、前のめりで話を聞くQがおかしかった。

「私達、セカンドとセカンドプラスが、イギリスを頂点としてピラミッド型の組織が築いて世界中を支配しているのよ。

これはオリジンのシナリオなの。

でも、初めはこんな大きな組織になる予定ではなかったのよ。

裏側の立場で、シナリオ通り、ひっそりと人間の世の政を動かす予定だっのよ。

それが…

人間によって狂ったわ。

人間の欲望ってトカゲより怖いわよね。

私達に擦り寄ってくる、様々な企業…軍事企業や製薬企業、金融企業、国のトップやら宗教団体やらetsetora。

の人間達は欲深いわよ。

そいつらがピラミッドに入り込んで好き放題やり出したのよ。

一部の人間達が、今のくだらない支配世界を作り上げたのよ。

その走りがキマイラ達よ。

ピラミッドに入り込んだ欲深い人間達。

ソイツ等が、自身の長寿と若さ保ちたい。何時までも長らく生きていたい。

欲望が止まらないわ。

だからファーストトカゲのように不死に近い身体を欲したの。

人間のクセにトカゲのようになりたいんだって。

滑稽だわ。変態だわね。

自分の身体をトカゲに改造する奴らの事を

「キマイラ・ヒューマノイド」

と呼んでいるわ。

人間の癖に、人間を養殖したり食ったりしてトカゲ人間になろうとしている変態野郎達だわ。

私達やNewタイプを真似て、雄でも雌でも無い存在になりたがったりね。

相手が男でも女でも気に入れば、その人の性別を改造して婚姻するのが一時は流行ったわね。

ジェフの島では、そんな変態人間達しか集まらなくって面白かったわ。

Newタイプの性癖を真似る輩もばかりだわね。

残虐性は人間達の方が恐ろしいわね。

そうそう、米国の大統領は変態ばかりで、女装したがるヤツは印象的でよく覚えてるわ。

でね、時代と共に、変態達の意識は変わって「若さ」と「美」への執着に変わったわ。

人間の容姿のまま若さと美しさを欲するの。
 
私達の技術の応用をしたの。

人間の子供の細胞を取りあげて自分に移植したり摂取したりして成果上げたの。

それを商売に仕出したりして、Newタイプの変態人間達は本当に恐ろしいわね。

でもね、人間ベースだから寿命は100歳前後が目一杯。

細胞の寿命が近づくと、皮膚がただれたり、目の回りが真っ赤になったりして「デーモン顔」になるのよ。

普通の人間の老人の状態ではなくなるのよね。トカゲの遺伝子が表に出てくるからかしらね。

あと少し年数が経つと、キマイラ達が一斉に「寿命」を迎えてバタバタ逝っちゃうわね。

そうそう、ほら

この間やった「ダボス会議」ってあるじゃない?

あそこに出てる人間達は、欲望の塊の変態しかいないわね。

あれらは私達は関与してないのよ。

ダボス会議は、世界中の人達の「命」を自分達の意のままに、自分達の欲望や利益の為に利用しているわ。

つまらない事に「私達トカゲ」をブラフに使って脅している点ね。

言うことを聞かない国やトップを脅かすのよ。

特に「ファーストトカゲ」を見せたりして従わせるやり方は、本当に詐欺師と同じやり方よ。

そして私達が知らない変態達の輩も増えてきたわ。

キマイラ連中が私達やファーストトカゲを利用して、独自にミニピラミッドを世界中アチコチに作ってるのよ。

殆どが「宗教団体」を隠れ蓑にしているわね。

ファーストトカゲが「神」だなんて言われて、実物を見たら信仰しちゃうわよね。

で、そんな変態野郎の人間達が暗躍して、オリジンのシナリオからドンドン離れて言って収拾がつかないのよ。

殆どがNewタイプとキマイラ人間達の仕業ね。

そいつらが、世界をドンドンおかしな方向に持っていってるのよ。」

Qもオレも言葉が出ない。

これは確実に新しい情報だった。

昨今のトカゲ達の組織の動き方が人間ぽい…そして統一性が無くなっている事も考えると…辻褄は合っていた。

エースがマックスに珈琲を渡していた。

ビールは飽きたみたいだった。

「シナリオとは、どういう事だ?」

Qに代わって俺は聞きた。

「初めに話したように、私にはオリジンの記憶があるのよ。

でも、人間の遺伝子と合成されたから、記憶の欠落はあるのだけれど、オリジンの意思は理解しているのよ。

創造主のセブンズが作ったシナリオを何故かオリジンは実行しているの。

不思議よね。

シナリオと言っても、オリジンからの記憶からの探ると、セブンズ達からの、予言や予知の類が多くて詳細や目的が不明確なの。

話に出た【ヨハネの黙示録】なんかの予言書の類は、セブンズ達のシナリオのコピーやら誰かに書き加えられた劣化版なのよ。

私は、コロナワクチンで呪縛DNAを切られて意思が自由になれたの。

だからハッキリ分かったわ。

現在の世界線はシナリオには無い。て事だけは確かよ。

シナリオが狂ったって事よ。

私達に擦り寄って来て豊かになった変態の人間達。

一握りの人間達が私達のピラミッドを利用して、世界中の人間を差別し始めたのよ。

勝手に世界中の人々の「生殺与奪権」を握って自分達の欲望の為に、全人類を家畜扱いしているわ。

変態人間の暴走よ。

シナリオが大きく狂ってきているわ。

だからなのかしらね…平行世界も、干渉が激しくなってきてるわよね?

マンデラエフェクトとか頻繁だしね。

これ以上、平行世界が重なると地球は消えて無くなるかもね。」

マックスは、格好を付て話したつもりだか…

話終わりに「ゲップ」をして俺達の爆笑をかっさらっていた。

…………

シャワーを浴び終わった俺は、トレーニングルームに向かった。

今日は、いよいよオリジンの所に向かう。

全世界のトカゲの親分だ。

こいつを倒せれば、裏でこそこそしている組織の奴等を一気に潰せる。

戦争も無くなる!薬害も消える!貧富の差も無くなる。

偽りの世界が無くなる。

世界から苦しむ人達が居なくなるんだ。

…と

俺は意気込んで日本に来たんだが…。

だが、昨日のマックスの話をして聞いて、俺の中に何か腑に落ちない感情が湧き出ていた。

「真実はオリジンに聞くべきよ」

マックスの言葉で俺は揺らいでいた。

本当の敵は誰なのか?…

俺達「Qアノン」以外にも、他の組織やチーム達も存在していた。

世界各地で同時進行で頑張ってくれている。

日本では「Qアノン」の俺達「ホワイトハット」チームが来た。

ランディとニール等は、日本橋にある古いデパート「ミツコシ」の地下にいるファーストトカゲの討伐だったはずだ。

アラン、デイヴィッド、マイケルは「ヒビヤコウエン」にある地下道にいるファーストトカゲの討伐だった。

マックスもファーストトカゲに関しては「利用されているだけだから土に還してあげたほうがいい」と同意していた。

日本での討伐の連携はしていない。

情報が少しでも外部に漏れない措置だ。

Qの所で、情報は一括され指示は出ている。

Qは、パート・タイム・ジョブだけどな…。

鼻を擦って笑った。

彼奴等なら、問題なくミッションをこなすだろう。

日本には、危険な「シュウキョウ」グループがいて、暴力で邪魔をする部隊がいるからなるべく連絡は取り合わない。

マックスも指摘していたが「日本消滅」の為の布石は既に完成しているらしい。

ルームサービスで、遅めのランチを食べた後に、俺達3人は専用のエレベーターを使って地下駐車場に降りた。

地下なので、真夏でもひんやりして気持ちよかった。

スイートルームを出て廊下のすぐ横にあるエレベーター。

地下駐車場と直結だった。

「すげーな。こんな豪華なホテルは泊まった事ない」

ニヤリと笑ったのはマックスだ。

コイツは遊びにでも出掛けるつもりなのか?白のパンツスタイルにカジュアルなジャケツを着ていた。

容姿がいいから、フランスのモデルの女にしかみえない。

元セレブだから、自慢話をするつもりだろう。

「昔話をするのは、老人が好きだよな」

先に釘を差して笑ってやった。

「失礼ね!何も言ってないじゃない!私は老人じゃないわ」

口を尖らせて憤慨するマックス。

エースにセットして貰った髪を引っ張って不貞腐れていた。

エレベーターに先に乗っていたエース。

後ろを向いたまま、大笑いをして肩を揺らしていた。

……………


「見てくれコレを!

凄いだろ!YOKOHAMAのショップを窓口に、ドイツのCrazyなガレージで作って貰ったんだ!

アウトバーンでテスト走行を繰り返して作り直したんだぜ!」

地下駐車場の奥にシャッターガレージになっていた。

そのシャッターを開けると、古いBMWが鎮座していた。

エースがビックリするほど流暢な英語を話して俺は驚いた。

マックスが、元セレブっぽく又ウンチクを語りだした。

「センスがイイわね。

これは30年前のBMWのM5だわ。

BODYの曲線がセクシーよね。

今は、コンピューターでデザインされるけど、これはクレイモデルで職人が削ってラインを出したから、人間の五感に訴える流麗さなのよね。

でね、セダンなのに物凄く速いのよ」

エースがオーナーのようだった。

急に目が輝き出した。

「そうなんだ!

映画の「RONIN」で使われてた車なんだよ。

主役のロバート・デ・ニーロがまた渋いんだよ。

日本の侍のローニンをモジッた映画なんだ。

カーチェイスがメチャメチャ凄くて一度見てみろよ!

その中で痺れるのが、このBMWのE34M5なんだ!」

俺とマックスは顔を見合わせた。

エースが止まらない。

「見てくれ!」

Keyを取り出してドアを開けボンネットのリリーススイッチを引いた。

「ガチャ」

と音がしてボンネットが少し浮き上がる。

「普通の車はアリゲータータイプだ。

ボンネットが、ワニの口のように上がるんだ。

でも、E34M5はスライドさせて開けると逆アリゲーターボンネットなんだ!」

俺が知るエースではないエースがいる…。

俺はマックスに、アイコンタクトするとマックスは頭を振って苦笑いする。

満面の笑みのエースは止まらない。

「このエンジンだよ!

これはBMW最高傑作と言われたV10 のエンジンをコンバートさせてるんだ!

Turboを掛けて馬力は700馬力は超えてるんだ。

アウトバーンでも300キロを軽く超えるんだ。

勿論シャーシから補強してあるんだ。

ブレーキを見てくれ!…」

エースは車にしゃがみ込んで、1人で熱弁している。

遠くで見守る、置いてけぼりの俺達。

なんだか「J」の御高説を拝聴しているようだった。

「なぁ、マックス。エースがこんなイケてる英語を話すのを俺は初めて見たよ」

腕組みをしながら驚いた事を話す。

マックスは両手を広げ

「あれよね、好きな事になると単語がバンバン出てくるから英語がスマートになるんじゃない」

半笑いの呆れ顔で答えた。

それから暫くして

腕組みをして突っ立って見ている俺達。

俺達の反応が無いのにようやく気付いたエース。

バツの悪そうな顔をして、後ろ頭を掻きながら

「大変申し訳ありません。車が好きなものですから、興奮したようですね」

こちらに近づいて頭を下げた。

俺とマックスとは、2人で腹を抱えて大爆笑だった。

俺はエースの肩をバンバンと叩いて笑ったよ。

真っ赤な顔のエース。

俺達の笑い声が地下駐車場に響いたんだ。

…………

これから俺達は、オリジンの所へ行く。

エースのBMWで向かう事になる。

少ない荷物をトランクに乗せる。

日本国内で、飛行機や電車の交通機関の移動は危険らしい。

「俺達の車はバレないのか?」

言った時に、薄暗い地下駐車場に爆音が響いた。

眩しいくらいのライトが俺達を射った。

赤いポルシェが、こちらに向かって来ていた。

運転席には、何とQが乗っていた。

「Wow!ポルシェ993よ!最後の空冷なのよ!これは私も乗っていたわよ」

今度はマックスが饒舌に喋り始めた。

勘弁してくれ。鼻を擦って笑ったよ。

暫くすると、もう一台やって来たんだ。

これまた轟音。

「なんだよ!「Qアノン」の連中は暴走族かマッドマックスなのか?」

「プーーーッ」

マックスがマジで吹き出しやがった。

「マッドマックスって何よ!
せめてワイルド・スピードじゃないの?貴方こそ老人じゃないの?」

ゲラゲラと俺の肩を叩いて泣いて笑ってやがる。

無視した。

もう一台は、日本の車らしく、白色のスカイラインGTRと言う高性能のマシンらしい。

両方ともマフラー音がうるさい。

車から降りてきた人間に驚いた。

フロリダの米軍キャンプで会った「K」だ!

俺達は固い握手を交わした。

「ドグ!久しぶり!いろいろ大変みたいやな」

変な訛りのある英語で、マックスを顎で指し示した。

マックスを紹介した。

「へー、別嬪さんやね。
でも、綺麗なバラにはトゲがたくさんありそうやな!」

「トゲじゃなくて私はトカゲね」

マックスと握手しながらKは豪快に笑った。

彼等は、俺達の車が見つからないように、他の車で陽動の役目らしい。

しかし

これだけの面子が集まる…。

いよいよクライマックスが迫ってきたと言う感じがする。

俺の気持ちは高揚してきた。


…………

地下駐車場で、俺とマックスはBMWの車内で待機していた。

エンジンはアイドルしていた。

車内にエアコンも効かせてあるので快適だ。

エースが運転手なので、2人で助手席争いをするかと思ったらマックスは

「私は後ろでいいからね」

と潔くナビゲーターを譲った。

と、思ったら

ヤツはホテルから盗んだデカいピローを頭においた。

荷物を後部座席の足元の空白に積めた。

足元に身体が落ちても痛くないよう、これまたホテルから盗んだ羽毛布団を敷き詰めていた。

マックスは後ろで寝る気満々だった。

「やっぱりアレだよな。トカゲは夜行性だから眠いんだよな?」

俺は後部座席を覗き込んで、鼻を擦って笑った。

「何処かのお馬鹿さん見たいに、19時間49分も寝たりしないれどね。」

適当な事を言いやがって…。

目をつむりながら欠伸をしやがった。

これから俺達は、エースの車で三重県の「イセシ」と言う所に向かうと言う。

先程の会話だ。

「いや、待てよエース。オリジンは確か、「イヅモタイシャ」に居るんじゃないか?」

エースは笑いながら

「後で説明をいたします。少し待っててください」

と、BMWを降りて、QとKと3人で打ち合わせを始めた。

「イセ」と言う場所を聞いた時にマックスが笑ったんだ。

目を閉じてるマックスに尋ねた。

「さっきは、何故イセと聞いて笑ったんだ?

何かあるのか?」

「イセに向かうのは正解なのよ。
今はね…「イヅモオオヤシロ」と言う別のShrineにマンデラエフェクトしているのよ。

その世界線にはオリジンは居ないのよ。だから直接行っても会えないわね。

「イヅモタイシャ」の世界線に居るからスライドをしないと行けないのよね。

その解決策が「イセジングウ」だわね。貴方もストーン・ヘンジでスライドしたでしょ?

あれと同じで「イセジングウ」はポータルが「イヅモタイシャ」と繋がってるのよ。

日本にはポータルの「Torii」が沢山あるから便利なのよ。

それに、「イセジングウ」と言う場所はセブンズ達に縁がとても深い所なのよね。」

「どう言う事だ?」

目を瞑ったまま答えるマックス。

「「イセ」という地名は「イエス・キリスト」の「イエス」の名前から由来しているわ。

そこにイエス・キリストが居たからよ。

「イエス」と言う発音は、日本人が聞くと「イセ」と聞こえるそうよ。

そして「イセジングウ」はイエス・キリストが居た場所なのよ。

「ジングウ」とはShrineの事ね。

そして「イヅモタイシャ」とポータルで繋がっているのよ。

「イヅモタイシャ」と「イセジングウ」に祀られてるのよ…

イエス・キリストが。

不思議でしょ?

その証拠に「イセジングウ」には、今でもイエスに関係する六芒星のシンボルが、沢山刻印されているのが見られるわよ。

ま、イエス・キリストのシンボルは、セブンズ達が付けたんじゃなくて、私達や人間達が後で付けたんだけれどね。

それでね、「イセジングウ」はセブンズ達のPowerで守護されといてね。

第二次世界大戦の時に「イセジングウ空爆」と言うのがあったの。

ジングウ内宮でセブンズ達のバリアが発動したみたいで焼夷弾は全部弾かれたらしいのよ。

勿論、日本の天皇とも大いに関係はあるのよね。」

驚いた。握っていた手に力が入った。

「イセジングウ」がイエス・キリストと関係が!?

そして「イヅモタイシャ」もイエス・キリストが?

イエス・キリストが日本で祀られている?

セブンズ達とイエス・キリストとは関係があるのか?

全く意味がわからない。どう考えても日本の文化とイエス・キリストが全く繋がらない。

「ふふふふ…それはね、セブンズアバター達は9つのグループに分かれてるって言ったわよね。

その1つのセブンズアバター達は、現在のイスラエル辺たりを統括していたらしいのよ。

セブンズアバター達の統括する人間達は「イスラエル人やユダヤ人」と呼ばれていてたわね。

そのようにも呼ばれていた「セブンズアバター」達は、オリジンに戦争で敗れて散り散りに逃げたのよ。

トカゲ達は執拗に追いかけたわね。

迫害とか言われたわね。

だって、彼が地球に来た全セブンズアバター達のリーダーだったからよ。

彼を地球から追放しないと、オリジンや裏切ったファーストトカゲ達が、彼によって簡単に死滅させられるからよ。

イエス・キリストは現在では存在はしていないって事に、私達は教えているけど…。

イエス・キリストと呼ばれた、その人は全セブンズアバター達のリーダーその人なのよ。

そして十二使徒と呼ばれるのは、副リーダーのセブンズアバター達ね。

他には、下僕のファーストトカゲ達の事だわ。

でね、裏切り者の「ユダ」とはオリジンの事を指しているのよね。

これは私達が作った物語ではなく、彼等の末裔や従っていた人間達が広めたのよ。

些末な事だから放って置いたのよ。

それはね、追放する前のセブンズアバター達が、神としてそれぞれの土地土地を支配した時の「イエスの信仰」を私達は使ったのよ。

それを逆手に取って、私達が彼等の「神」として、すり替わるのに利用したのよ。

でもいつの間にか、イエス・キリストの名前で、事実を書き記した書物や聖書がでたりして、影響力が大きく止まらなくなったのね。

新約聖書とか旧約聖書とかナントカ書とかあるじゃない?

私達は、嘘の書物をカウンターで出して史実を埋もれさせたのよね。

で面倒だから結局「存在するはずがない」にしちゃったのよ。

イエス・キリストが実在して、本当は宇宙文明レベル7の「宇宙人」なんですよ!

なーんて、バレたら洒落になれないでしょう?」

ケラケラ笑って、マックスは、ようやく目を開けた。

「イエス・キリストは宇宙人なのか?」

「馬鹿な質問しないでよね。

セブンズ達は宇宙文明レベル7って「宇宙」って言葉が入ってるじゃない。
 
地球を創ったくらいなんだから、地球人な訳ないでしょう?

立派な宇宙人じゃない?」

マックスの笑いが、ゲラゲラに変わって、後部座席で胡座をかいて座りなおした。

全く…この女は、本当なのか嘘なのか、面白い話を聞かせてくれる。

…………

駐車場を先に出たのは「K」の乗った白色のスカイラインGTRだった。

Kは、停車している俺達に、追い越し際に映画「トップガン」のトム・クルーズを真似た「GO」のハンドサインをやった。

マックスが大笑いした。

本当に面白い男だ。

次に出たのはQだ。

真っ赤なポルシェ993だ。

彼女は、すれ違いざまに窓を開け満面の笑顔で

「Have a nice trip♪」

と、柔やかに、爆音を残して駐車場を出ていった。

「Hey!エース、「シュウキョウグループ」からの妨害を、2台で陽動して邪魔する、って事だけど、Qは大丈夫なのか?」

俺達の出発は30分後なので待機中だった。

「Qは平気ですよ。問題ありません。

俺とJと同じくらいの運転技量がありますね。彼女はF1ドライバーです。」

後部座席でマックスが吹き出した。

「心配なのはKです。

あの男は調子に乗るので、車の傷が大変危険です。

あの車は、Jが愛している車なので、あの男が殺されてしまいます。」

言いながらエースは、サングラスを着用し、コチラを向いて変なジェスチャーをした。

今度は助手席の俺が吹き出した。

マックスもゲラゲラ笑い出した。

全く、エースは愛すべき男だな。

…………

時間が来て俺達は駐車場をでた。

俺とエースは既に「シュウキョウグループ」にマークされていたらしい。

日本で、何かやらかすとして、俺達を排除をする方針だったようだ。

しかしマックスが、赤いポルシェ乗りの「Q」と間違えられていたので、今回の車での陽動作戦を考えたらしい。

暗がりの地下駐車場から表に出た。

辺り一面日差しが眩しい。

街が真っ白だ。

車窓から見ているだけでも外は暑そうだ。

BMWの中はエアコンが効いて快適だ。

音楽の選曲は、オーナーのエースの権利だ。

テンポのいい楽曲が流れていた。

後部座席で寝ていたはずのマックスが、俺たちの間から顔をだした。

「あら!「Ridin' High」じゃない!?

これロバートのアルバムよ!

エース、あなたいい趣味してるわよ。

ロバートパーマね。

あの子はイギリスの子よ。

私はあの子と、何度か遊んだけれど本当に歌がうまかったのよ。

「Duran Duran」のアンディとジョンを紹介したのは私なのよ。

バンド名も私が名付けたのよ「PowerStation」って。

私の貸しスタジオの名前なのよ。

だって、スタジオを無料で貸して上げて収録したんだから当然よね。

懐かしいわ。」

後ろで1人で踊りだした。

胡座をかいているからタコ踊りのようだ。

元気な女だな。鼻を擦って笑ったよ。

夏の日差しが強すぎて、周辺が白く見える。

大きな交差点を右折して高速の「芝公園」インターに入った。

「シュトコー」と言うFreewayだが日本では料金が発生するようだ。

おかしな国だ。

インターを抜けて本線に合流する時に、赤い車が猛スピードで俺達の横を抜けていった。

俺たちが乗るBMWの車体が風圧で大きく揺れた。

「Hueーー」

後部座席でマックスがはしゃぐ。

その後すぐに数台の車が、赤い車を追い掛ける。

赤い車はポルシェのQだ!

エースが言うようにF1ドライバーだった。

ポルシェは、合流先の左に大きく曲がるコーナーを、驚くようなハイスピードで駆け抜けていた。

録画を早送りして見ているみたいだ。

後ろの車が遅れていた。

シュトコーを周回してきたようだった。

エースはBMWを飛ばす事なく、緩やかにコーナーを抜けて車線が広くなった本線にでた。

真っ直ぐな直線路なのに、ポルシェ達の姿が消えたかのように見えない。

真夏の日差しで、道路や街が真っ白に映る。

「陽動は成功のようです。アレがはじまりましたね。」

エースが前を見ながら言った。

「日本は凄いわよね。これは月衛星でしょ?」

マックスがシートの間から顔を出していた。

「どういう事だ?」

「これはね、月衛星からの照射装置を遣ったスライドなのよ。

簡易の平行世界とでも言うのかしら?そちらにズラして見えなくしたのよ。

ほら?危ないじゃない?悪事をする時に他の人に見られたりしたら。」

シートの隙間からケラケラ笑った。

顔だけ出ていたから滑稽だ。

「この車には、カウンターの反照射装置を付けているんでしょ?」

ニヤニヤとマックスが聞いたが…

エースはまた変なジェスチャーで返していた。

…………

QとKの陽動作戦は成功のようだ。

誰の邪魔も入らなかった。

東名フリーウェイに入ってから、エースの笑みは止まらなかった。

車の性能を堪能したようだ。

お陰で「イセジングウ」まで2時間も掛からなかった。

普通なら5時間らしい。

俺達は、今は真っ暗の砂利道を歩いている。

真夏だが、夜は非常に過ごしやすい気候に変わった。

空気感も変わった。

優しいような気持ちいい香りもする。

「サンドウ」と言う「Torii」へのアプローチを歩いている。

時間は午前2時。

「イセジングウ」の駐車場に着いてから俺達はトイレ以外は車で寝て待機していた。

こちらでは「ヤタガラス」の手助けがあった。

「ヤタガラス」とは、古来から日本を影から守る集団だそうだ。

ここは彼等の縄張りだ。

マックスが言うNinjaの末裔だった。

監視や手引をして助けてくれたんだ。

DSが台頭してから、「Qアノン」と連携してくれていたようだ。

「イヅモタイシャ」でも、彼等のグループか手助けしてくれる算段だった。

マックスはトイレも行かずに、ずっと寝ていた。

やはりトカゲはよく眠る。

起きていたら「Ninja!WoW!」と煩いだろうから起こさなかった。

でもNinjaの彼等の格好は、黒尽くめでは無かったのには少しガッカリした。

日本には「ウシミツドキ」と言う時間帯があるようだ。

その「ウシミツドキタイム」が、ポータルの「Torii」の地場エネルギーを活性化し「イヅモタイシャ」へのアプローチを容易にするようだった。

古いポータルの「Arc de Triomphe/凱旋門」が周波数で隠されていた。

ここでの「Torii」の本当の姿らしい。

「ヤタガラス」のNinja達がKeyを開けてくれている。

午前2時から2時30までが有効な時間らしい。

俺とエースはSmartGlassを掛けているので真っ暗でも問題なく歩ける。

マックスは裸眼で付いてくる。

やっぱりトカゲだな。

鼻を擦って笑った。

これから俺達は「イヅモタイシャ」に居るとされるオリジンに会いに行く。

マックスにも言われたが、オリジンには話を聞く必要がある。

俺は、興奮からか武者震いが止まらない。



【 Epilogue/エピローグ 】

「申し訳ありません。私はどうやらここまでのようですね」

「サンドウ」通りの小石で、足でも引っ掛けたかと思い、倒れたエースに駆け寄り抱き上げて驚愕した。

顔が真っ青を通り越して白かったからだ。

何が起こった?

病気か襲撃か!?

突然の事に俺は困惑した。

俺に抱えられたエースが、俺の手を握り呟いた。

「See the truth!」

その言葉を残して、エースが動かなくなった。

脈も心臓も動いていない。

今の今まで元気そうな男が何故突然!?

俺は予期せぬ衝撃に放心状態になった。

突然の出来事で頭が追いつかない。

意味がわからない。攻撃も受けていない筈だ。

動かなくなったエースを、抱き抱えたまま俺は固まっていた。

ポータルを通り「イヅモタイシャ」に来た途端の出来事だった。

「おい!マックス!大変だ!エースが動かない!来てくれ!」

真っ暗な「イヅモタイシャ」のポータルの前で俺は叫んだ。

振り返ると、マックスは俺達のすぐ横に居た。

膝を折って、顔を近づけエースを凝視していた。

「やっぱりね…その彼は死んでるわね。」

一言言うと立ち上がり

「さ、私達は急いで行くわよ。」

膝の土埃を払いながら言った。

俺は、ようやく状況と感情が追いついた。

エースを静かに地面に横たえた。

怒りが満ちてきた。

立ち上がり、マックスの胸ぐらを掴んだ。

「おい!エースが死んでいるなんて嘘だろ!何だ!おまえ!いい加減にしろ!」

俺らしくもなく激昂していた。

マックスは冷静な顔でエースを目で指し示した。

意味がわからないが、胸ぐらを掴んだまま、俺は倒れたエースを見た。

信じられない現象が起きていた。

倒れたエースの身体が薄く発光していた。

白に近いオレンジの光…。

そして発光が、ゆっくりと収まると横たわったエースの身体が薄くなり見えなくなった。

真っ暗な闇に戻った。

エースの身体が消えてしまった。

心臓の鼓動が高まる。

「いったい何が起こったんだ!」

「どういう事だ!?エースはトカゲ人間なのか?消えて無くなったぞ!」

マックスは胸倉を掴んだ俺の手を、ゆっくりと振りほどいた。

「安心して。エースは…彼はトカゲ人間ではないわ。

ほら?前に言ったじゃない?
エースの事を「特異点」だって。チラホラ消えるわね、って。

彼は生きているわ…でも助けに行かないと本当に死んでしまうのよ。貴方達のボスの「J」から言われているの。

エースを見ていてくれって…。

もし消えてしまったらドクを説得して、エースを助けに行ってくれってね。」

マックスは俺の肩をポンポンと叩いて落ち着かせた。

「急がないといけないのよ。オリジンに会いに行きましょう。」

エースは生きてるのか?

「特異点」とは何だ?

エースが、どんな事態になっているのかサッパリ分からないが、助けられるなら俺が助ける。

漆黒の闇に、静かに時が流れた。

■■■■■next

「トカゲ女の告白」↓

https://note.com/bright_quince204/n/n02df80826bdf


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