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新時代一般成人男性が中通クルーズの大航海に想いを馳せて筆を走らせるだけの散文

夢を見た。

秋田を舞台にした、オムニバスコントシアター。
観劇中、声をかけられる。終盤、一幕だけ出てほしいと。主催の二人に引っ張られ、満更でもなく暗い舞台袖にて待機していると、やけにニコニコとした懐かしい顔が現れた。芸人のさとーこうすけさんに渡された台本には、五行以上の長台詞がビッシリ。出番は数秒後。

「いやいやいやいや覚えられるかッッ!!」

ほんまは めのまえが まっくらに なった!

──お世話になっております。
陰険ゆるふわ根なし草(自称)本間稜と申します。秋田で役者や脚本など活動いたしております。

さて、冒頭の夢を見た、その数日後。
2024年5月4日。オムニバスコントシアター「中通クルーズ」2日目公演のソワレを観に行ってきましたよ。

思うことがないワケではない。

オーディション落選したんだもの!!(クソデカボイス)
でも、それはそれ、これはこれ。
間違いなく面白いということは確信があったので、行かない理由はないのである。
というワケで、ゴールデンウィーク連休2日目にして5連勤2日目の17時過ぎ。「こんな所にいられるか! 帰らせてもらう!!」と宣言し職場を脱出した私は、差し入れにアサヒスーパードライ350ml24本箱を抱え、会場のにぎわい交流館AUを訪れた。

幕が上がる。
ねじのお二人のツカミはやっぱり流石プロだなと思った。「肩肘張って腕組んでちゃあいけねぇよ、笑いに来たんだろ、お前ら?」とばかりに会場の雰囲気がお笑いの波に乗せられて、客席がクルーズ船へと乗せられていく。まぁ、船に乗ってたのは2分ぐらいなのだけど。

そして昨年「中通ヒルズ」同様、出演者一人一人の紹介と共にササキさんの洗礼が始まった。「無人島に持って行くなら何?」という、多くの人が人生のどこかで見聞きしたであろう直球なはずの質問が、変化球になって飛んでくる。他の回では何を聞かれていたのだろう。
正直、後方腕組み理解者おじさんヅラした前回参加者からすると、ここが一番どきどきした。秋田弁で言うハカハカめぐというヤツだ。自分だったら何て答えるか、なーんて考えたりして。

──……あれ? 何か足りない、ような。気のせいか……?

そして「無人島症候群」から始まる本編コント。
最高に面白かった。

メンヘラすっ飛ばしてバケモノと化した(※褒め言葉)管野はるなさん。
乗船時にはそこはかとなく漂っていた「王子み」を、完全にフッ飛ばした神崎りくさん。

アッ間違えました神崎のりっくんさんです。アッりっくんです。
とにかく、この二人の掛け合いが凄く心地好くて。会話は噛み合ってないのに、空気が噛み合っている。めちゃくちゃ笑ってしまった。
と言うか、りっくんとはオーディションでお手合わせをいただいていて、ぶっちゃけ吃驚したのを覚えている。凄いなこの人、と。シリアスな芝居、コメディな芝居、何だって良いモノに仕上がりそうだけどイケメン枠かなーと思ったら、まさかのツッコミポジの優男でガッツリ笑いを持ってったのだから凄い。
はるなさんは、以前にきたのかいの公演「ヒメゴト」で見せた一人二役とはまた違った引き出しを全解放してきた。「怖い」と「笑い」が交互に来るモンだから、まだまだ色んな武器持ってるなと。良い女優さんだよホント。

からの、たまちゃんぺとうかちゃみとぴろぴっぴ(ぴろぴー)。名前だけ書くと完全にんぽちゃむの同族三人組。
記憶喪失を利用するなんて鉄板ネタなところ、よりにもよってとんでもねぇ二人組と、それに翻弄されるたまきさんの演技のバランス感覚がこれも面白かった。
たまきさん、あの二人に全然負けてなかったと思うのよね。お笑いって言わばボケとツッコミのリアクション合戦で、あの場面ではボケ2人を相手取るツッコミ役だったワケだから。しかも相手が前作経験者とちぇす若松さんよ。

ちぇす若松さんはもう小ボケ入れすぎで大好き。渋滞しすぎててササキさんすら拾いきれてない(スルーしている)時があって、でもそこも堪らなかった。流石は秋田のお笑い番長。番長つーかビンチョウ、ビンチョウつーかマグロ、マグロには焼酎、焼酎のボトルキープってあれママさん俺のボトル無くなってなァい!?

閑話休題。

優果さんはもう最初登場した時点でビビり散らかした。
髪! まっ金パ通り越して白!? 脱色!? え、秋田観光レディー大丈夫なんですかねコレなんて思ってたら、挨拶させていただいた際にヅラだった事が分かって安心した。ついでに、睫毛も近くで見たら超バチバチになってた。
中通ヒルズで一緒に立った優果さん、あれからの一年間で滅茶苦茶に芝居経験を積んでいるんだよね。実際、かなり演技のレベルが上がってたと思う。ちょっと今共演したら、気圧されてしまいそうな気さえする。

で、このうかちゃみとぴろぴっぴのコンビもナイスペアだった。

本当に個人的な好みなんだけど、焚き火のシーンのアレ。全ッッ然タイミングも動きも合ってないアルプス一万尺をわちゃわちゃし続けてるみたいな、ああいうのに私は弱い。ずっとゲラってた。一生やってほしい。

コンビと言えば、ぴろぴっぴ──あえて此処では「弘樹さん」と呼ぶ。弘樹さんと伊藤さんのコンビ。
意外な組み合わせと思いきや息ピッタシ。でも、考えてみればハマり役。あのコントも面白かったなぁ。

婚活コントの時も、結構驚いた。

今回「ねじ」としてのササキさんとせじもさんのコントって、終わってみれば前説の時しかなかったんだよね。
前回参加して、あの二人の「秋田県民たる者ォ!」コントを何度も稽古場で堪能していた身としては、ちょっと意外だった。
それと同時に、作品としてのレベルが上がった証拠なんだろうなとも思う。つまりは、ササキさんは「主催」でありつつ、あくまでも「一演者」としてコントに参加できたという事なのではなかろうか。「ねじ」ではなく「ササキユーキ」と「せじも(菅原タモツ)」というメンバーとして、終始中通クルーズに参加する。これって凄いことだよ。

そして婚活コントと言えば、伊藤さんと加賀さんね。

この二人&たまちゃんぺ(たまちゃんぺ?)は「けやはす演劇部」から参戦のメンバー。
現代秋田では貴重な、新進気鋭の「劇団」員である。

いや本当マジで申し訳ないのが、私、実は未だにけやはす演劇部様の公演もとい参加メンバーの皆様の舞台というものを、ほとんど観劇できていないんです。
でも皆様、どこかでお会いすると凄く丁寧に挨拶してくださる。だから今回、そういった意味でも楽しみだったというのはある。

そしたら三人とも凄かった。
今回の中通クルーズの中ではこの三人がいずれも裏のある役柄で、多分普通の芝居をするにしたってクセの強い設定持ち。
それがコントのネタとしてしっかり活かされていて、ああいうネタのお笑いは演技力に裏打ちされてこそだよなぁと再認識させられた。
今年はけやはす演劇部、公演あるのかしら。あら、11月にあるじゃないの。今度はじっくり観劇したいところである。そしていつか、あわよくば、あわよくば……。

……そういえば、今回のメンバーは「中通ヒルズ」よりも「自分、演劇畑っス」っていう方が多かった印象がある。

あらためて、はるなさんは秋田大学演劇サークルきたのかい所属の女優さんだし。(実は本間の遠い遠い後輩にあたる)
りっくんも、歌! 王子! のイメージがあるけれど、ドラマなどバリバリ出演されている。

そういった意味では「クルーズ」のシナリオが「ヒルズ」に比べて演劇的なシーンが多く、個々のコントも「独立したコント」というより「場面」的な前後の繋がりが強かったのも納得である。

──と、他でもない演劇畑の人間である私がそんな事を思っていたら。

そうだよ。

堅実で繊細で豪快で、
役者魂ギンギンに滾らせてる、
舞台演劇のプロフェッショナルの二人だよ。

やってくれたなぁ!!
ちょっとも~~~~~~~~~~両氏~~~~~~~~~~頭から離れないじゃ~~~~~ん笑っちゃったじゃ~~~~~んも~~~~~~~~~~(菅原たもつ氏のアフレコ)

あー、やられた。
そうなんだよ。尾樽部さんとモエさん、冒頭で出てきてなかったんだよね。いや漂着直後に出て来はしたけど、ササキさんの面白い事言ってね地獄にはいなかった。

まぁ、このポストも見てたから、薄々役どころは想像してたけどさ!

それにしたって遊びすぎですよ二人とも。
でも、それが許されちゃうんだよなあ。

最初のせじもさんとの絡みは、とにかく三人全員がドキュメンタルよろしくお笑いで殴り合いをしているような勢いで、アスリートの試合でも見ている気分だった。

その後のパートでは、急に原住民がベラベラ喋り出したかと思えば、演劇人がベラベラ喋り出して。これは何だ、一体何を見せられているのだ。見せられている、否、魅せられている。こんだけ好き勝手に暴れ回って、それで拍手と笑いを貰えるってのは、お二人の演者人生あってこそよね。
で、モエさんの「長い夜になりそうね」からの尾樽部さんの「勘弁してくれ」で笑いが起きたの凄くない? あれも多分、二人の役者主張が全部全部前フリになった贅沢なネタだよなぁ。

で、後半よ。

そこからはもう、ドン! ドン! ドン! である。

メンバーが集結して、ラストに向かって突き進む。
ピースがひとつずつ埋まっていく、ワクワク感。
それと同時に、何だか懐かしい気持ちが沸き起こる。

会話に入り込むうかちゃみ&ぴろぴー feat. 菅原たもつの背後に、ジョジョ立ちをする女子力の高いコンビを幻視したり。
はるなさんの鬼気迫る「奥さんとはいつ別れてくれるの!?」に、なんだかカレーとパンケーキの幻聴が聞こえたり。
加賀さんと伊藤さんの対峙する姿に、爆弾のスイッチを持ったテロリストと秋田県警が重なったり。
たまちゃんぺが全員の矛を納めさせていく辺り、なーんか謎のデジャヴを感じたり。

アレだ。SBRでラクダに乗ったアヴドゥルが出てきた時の、あの既視感。あの高揚感! 黄金の精神! ササキとゴトウの受け継がれる意志! 時代のうねり、人の夢! これらは止めることの出来ないものだ! 新時代からの大航海、ひとつなぎの大秘宝はここにあったのだ!!(アタッシュケースを開けて金萬が現れる音)

最後まで、凄く楽しかった。
エンディングも、というかオープニングも凄く良くて、クウガ君の技巧が世界観演出に一役も二役も買っていた。
オープニングとエンディングで言えば、ニュースの音声が石田鮎美さんという「12番目の大物キャスト」だった事にも衝撃を受けた。
舞台装置もガッツリと用意があって、舞台を創るのは脚本・演者だけじゃないのよ! という当たり前の事に、凄く当たり前に納得させられた。スタッフ一丸。素晴らしい。

で、ですよ。

中通ヒルズ参加者としては、結構聞かれるんです。
今回参加したかったでしょ? 悔しかった? なんて。

そんなの、参加はしたかったに決まってる。
当たり前だろ!! なに寝惚けたコト言ってんだ!!

(なお、今年のゴールデンウィークはあまりにも職場が修羅場になりすぎたので連休など望めず、結果的には良かったのかもしれない。断じて負け惜しみではない。断じてである)

ただ、ポストもしたんですが、不思議と「悔しい」っていう気持ちはそこまでなかった。
何だろう。
前回と単純比較ができないというのか、中通ヒルズと中通クルーズって結構毛色が違う印象だった。根っこは一緒。笑わせてやる、楽しませてやる! は当然として、アプローチや切り口が何となーく違うというか。
例えば、ハンバーガーを食べたいって思った時に、マクドナルドとモスバーガーと中通りサティスファクションとがあって、それぞれ違うじゃないですか。同じハンバーガーだけど、好みも売り方も狙いも違う。そんな感じ。
じゃあその違いはどこから来るのか。構成する要素が違うのだから、違って当たり前なのだ。

それで腑に落ちた。
中通ヒルズも中通クルーズも、一期一会のメンバーが集って出来た、唯一無二の舞台なんだよな。

それこそ、もし自分が今回のメンバーに選ばれていたら、全部のコントが全然違うものになっていただろう。逆に中通ヒルズで自分が参加していなかったら、これも全部のコントが変わっていたとしか思えないし、そもそもタイトルや世界観だってガラリと変わっていたはずである。前回は中通ヒルズではなかったかもしれないし、今回は中通クルーズではなかったかもしれないのだ。

だから「中通クルーズ」が発表された時点で、悔しさは飲み込むことができたワケ。

ただ、それはそれとして、全員と絡んでみたくもなった。同じ舞台に立ってみたくなった。

──そして、人の芝居を見ると、シンプルにこう思う。

あゝ、演りたい。
舞台に立ちたい。
芝居がしたい。

来年も「ササキとゴトウ」があるのなら(間違いなくある、断言する)そりゃあ是非とも名乗りを上げたいところである。

だが、来年の「ササキとゴトウ」を待つだけかい?

そんなハズはない。
秋田の芝居は、秋田の舞台は、まだまだたくさんあるのだ。

……と、いうワケで。

2024年5月11日(土)16:00~
12日(日)11:00~/15:00~
秋田市文化創造館スタジオB(2F)

演劇ユニットRHマイナス6 第4回公演

「逆襲の諸星五郎」


※入場料1000円

よろしくお願いいたします。

予約フォームはコチラ↓



……余談だが、冒頭の夢を見た翌日、然る方より、だいぶ先に予定されているとある舞台の台本をお送りいただいた。

自分の役には、五行以上の長台詞がビッシリ振られていて、少なからず驚いた。

あの夢が吉兆であれば良いのだが。
嗚呼、中通クルーズとさとーこうすけセンパイが、私の力になってくれますように。


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