暑い日

お昼に渋谷で神座の「おいしいラーメン」(前からこんな名前ついてたっけ?)を堪能し、ホテルに荷物を預け、汗だくになりながら、自由ヶ丘へ。
2人の大好物の自由ヶ丘ロールを手に入れ(やった!)、そのまま東横線で山下公園へ。
アイスコーヒーを調達し、夕暮れまで空の色を見ていた。
タツヤとはもう長い付き合いで、お互い焦った盛り上がり方をすることはない。
タツヤは私の恋人だった人の、父親ちがいの兄だ。
恋人がこの世からいなくなってしまった次の日、私はタツヤに初めて会った。
全く覚えてないけど。
あれだけ忘れないと強く思っていたのに、亡くなってから数日の記憶がないのだ。
日が暮れるころ、少しずつ風がでてきて、やっと過ごしやすくなる。
暗い海面に魚が跳ねるのが見える。
魚の腹が白い。
隣のベンチには外国人の女の子のグループが港を背に写真を撮りあっている。
「いろんな人が、私たちも大好きなこの景色をいいと思って、ここにいて、楽しそうに写真撮ったりしてるのっていいよね。」  
タツヤに話しかける。
散歩する家族、走る人、花火をするグループ、釣りをする父娘。
同じ空間にいて、別のことをして、同じ景色を、空気を共有している。
そして私たちは、なぜか自由ヶ丘ロールを、こんな場所で食べているのだ。
柔らかいスポンジ、生クリームの中に、濃い黄色のカスタードクリーム。
定番の、大好きな味。
私たちは生きていて、遠くまで、あのひとの知らないことを知って、もういいっていうくらいたくさんの記憶を積み重ねて、延々歩いていくのだ。
遠くに、稲妻が光った。

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