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ラストオーダー

夜の帳に包まれる頃
ミキシンググラスに
ビーフィーターを注ぐ

そして ドライベルモットを
注ぎ バースプーンで
ステアリングする

レモンピールをして
オリーブをデコレする

「どうぞ」

「バーテンダーさん」
「私が注文したのはギムレットですが…」

「これは私からのサービスです」

そう言って
寂しげに
カクテルグラスを差し出した

戸惑った男は
バーテンダーに理由を聞いた

「ただの気まぐれです」
「これを飲んだらギムレットを作りますね」

そう言い
カクテルグラスを
テーブルに
もうひとつ出した

男はバーテンダーに
「何故マティーニを?」

「マティーニはお嫌いですか?」

男は何かを察して
バーテンダーに話しかけた
「あなたを見ていると今にも
死にそうな顔をしていますよ」と
ライムジュースのボトルを
手にとるバーテンダーにいうと
にわかに顔がくもった

少し間があって
ジンのボトルを手にして
「そんなに酷い顔をしてますか?」と
男に訪ねた

男は「はい、この世の終わりのような顔をしてますよ マティーニのお礼です 良ければお話し聞きますよ」

バーテンダーは暫く俯向いたあと
顔を上げ男を見つめて
申し訳なさそうに口を開いた
「お客様に気を使わすなんてバーテンダー失格ですね」と話しながら、ジンとライムジュースの入ったシェーカーを振り出した。
カシャ カシャ カシャ・・・・・・・

カクテルグラスに
シェーカーから注がれる
ギムレットが
存在感を主張するように
輝きを放つ

飲み干して空いた
カクテルグラスをさげて
ギムレットを
男の前にそっと差し出した
そしてバーテンダーは
先程とは違って凛々しい顔をして
「私にもプライドがあります お客様には満足して帰っていただきたいのです」と言った後うっすら笑みを浮かべながら洗い物を始めた

男はギムレットを飲みながら
難儀なひとだなと思った


ギムレット




それから どれくらいたったのだろう
静かな時間が暫く続いた


時計をみてバーテンダーは「ラストオーダですが、ご注文はありますか?」と訪ねた

男は「じゃ マティーニを…」

「マティーニですね?かしこまりました」と
バーテンダーは流れる様に華麗な手付きで
作り始めた。そして
最後にピックにさしたオリーブを
デコレして 男の前に差し出した

それからまた バーテンダーが
口を開いた
「ありがとうございます 最後のお客様があなたで良かった」
「マティーニは私の愛していた人が好きだったカクテルで 今はこの世にはいませんがね…」と
一瞬寂しそうな顔をしたが
懐かしそうに ビーフィーターの
ボトルを見つめていた

バーテンダーは「今日でこの仕事をやめて親父の仕事を手伝う為に田舎に帰る予定なんです 最後にマティーニで締められてよかったです ありがとうございます」と笑顔で話した

男は気になってた事を
バーテンダーに質問してみた
「あなたを見ていると今の仕事に未練がある様に見えるのですが 私の思い違いですかね?」
男が話すと
暫く考えてからこう言った

「私は マティーニを見たり作ったりしてたらどうしても あの人の事を思い出すのです」
「だから辛くて 全てをリセットして兼ねてから父からオファーを受けてた会社を継ぐ事にしたのです」

男は 冷えたグラスを見つめながら
バーテンダーに言った
「天国のあなたの愛している人は 悲しむのではないですか?」
「だって 自分の為に好きな事を諦めてしまうあなたを見たら辛いと思いますよ」

バーテンダーはうつ向きかげんに
閉店前の片付けをしていた


男はバーテンダーに「ごちそうさま」と言い
勘定を済ませて
「ありがとうございました」と言う
バーテンダーをあとにして
ネオン街へと消えて行った


ビーフィータージン

ビーフィーターとは、ロンドン塔を守る近衛兵のこと。 ラベルにも描かれているその雄々しい姿で、王冠が保管されているロンドン塔を守ります。 王家の宝「クラウン ジュエル」を守る彼らは、その昔、国王主催のパーティーの後、残った牛肉の持ち帰りを許されたことから、BEEF+EATER(牛肉を食べる人)と呼ばれるようになりました。
ブランド誕生以来、変わらぬレシピを守り続け、今なおロンドン市内で蒸溜されているビーフィーター。
ビーフィーター ジン』はオレンジピールやレモンピールをはじめとする9種類の草根木皮(ボタニカル)を使用しており、特に柑橘系の香りが高いのが特徴です。 爽やかな香りをお楽しみいただくには、「ジントニック」がおすすめです。

私が昔好んで使っていたジンで、自宅でジントニック、ジンライム、ジンバックなどを好んで楽しんでいました。


♦私がはじめて書いたショート・ショートです
 まだ、小説などはトラウマでかけませんが、何
 とかショートなら内容は別としてトライしてみ
 ました。これは、以前書いていたのですが、な 
 かなか書き進まずほったらかしにしていたのを
 取りあえず息を吹きかけたものです。
 不完全ではありますが、私にとっては大きな
 一歩となったショートです。

Sting / If you Love Somebody Set The Free        1985
                                                                 



最後までお付き合いいただき
ありがとうございます🎶🍀

🍀現在、コメントへの返事はやってないので
 心を込めてスキでお返しします。
 すみませんが御理解下さい🙇

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