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私はよくかわいいといわれる〈58〉

 金井君の森本君に対するこの時折見せる少しの気難しさとか屈折した感情というのが私は好きで、こういう金井君を引き出せたときに(引き出したのは美樹だが)私の頭の中ではカキ―ンというヒットの後がするのだ。ふふふ。

 このいかにもな自我のゆらぎというのが青春という感じがして、自分の青春は気持ち悪いが、他人の青春は美しいと思ってしまうのだ。

 このような自我のゆらぎが青春だとするとその全く対局にいるのが美樹なような気がする。

 美樹は高校生活を何か、実体験型の学園生活シミュレーションゲームのように捉えている節があって、やはりアイドルが本業という意識が、高校生活をそう捉えさせているのかもしれない。

 学校生活をゲームと捉えれば、苦しい自我の揺れからは解放されるが、その分大切な何かが零れ落ちている気がするし、どちらがいいんだろうなあと思えば、私は美樹のように割り切ることもできず、金井君のようにそこまで屈折した何かを他人の持つこともできないでいるので、ものすごく中途半端なところにいるんだろうなあという気もする。

 まあだからこそこの3者3様がいろんな視点を生み出し、それが有機的に作用して、この放課後を「なんとなく過ごす」という状態が成立してるんだろうなとまた埒もないことを考えてしまっていた。

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