現象学女子〈16〉空間
私はファーストフード店の入り口の自動ドアの横の壁を指さした。とりあえず空間の話から始めることにした。
「あそこに壁があるよね?松井さんはあの奥に何があると思う?」
「嫌!絹代って言って!」と言われた…私は勝手に絹代と言われるのが嫌なんだと思ってた…
みるくは静かに話しを聞いている。私はみるくと松井さんこと晶子と絹代に向かってもう1回同じことを言ったら松…絹代ちゃんは
「そりゃ、道路でしょ?だって今駅からここまで歩いて来たじゃない。てゆーか自動ドアのガラスの向こうも道路だし」
「そうだよね?でも今、この場所からはその道路って見える?」
「見えない」
「だとするとあの壁の奥に何があるのか今、ここからはわからないよね?」
「ま、まあ。そう言われればそうだけど…」
「屁理屈っぽく聞こえるよね。でも現象学って言うのは今自分の意識にあることを正確に記述する学問なの。つまり今ここからは壁の向こうに何があるのかはわからないけど、おそらく道路があるよね?そしてもっと奥にも永遠に宇宙の果てまで空間はつながっていると思うよね?」
「思う」と絹代ちゃん。
「でも私たちに見えるのはあそこの壁まで。つまり現時点で私たちに存在してる空間はあそこの壁までなのよ。ここを押さえてね。整理すると私たちにとって空間はあそこの壁まで、その向こうは『あるかもしれない世界』ってこととして私たちの意識に存在してるってこと。くどいようだけど、向こうに空間が本当に存在するかどうかということを言ってるんじゃないの。ただ現時点で私たちの意識に空間が『どう存在してるか』をただ正確に言ってみるとこういう言い方になるってだけね。それが生きる意味とどうつながるかはちゃんと後で説明するから」と言って私は一旦コーラを飲んだ。
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