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現象学女子〈50〉1学期が終わったので復習しますね 1

 「とにかくこれだけは覚えてくれ。自分の外側にそれがそれ自体として存在するという観念を一回捨てることだ。これがもう現象学の一番の勘所だ。理由はだってそうだからだ…じゃあわからんと思うからまた後で説明するが…人間は自分の主観の中から出られないので、主観からすべてを説明せねばならんのだ」1学期の終業式が終わったので、まだ時間がたくさん残っている。なんとなく教室に4人で居たら福田さんに

 「現象学の話しして~」と言われた。このざっくりした振りは、私をちょっといじってるよな?と思うがまあいいか。こいつのあざとさ、腹黒さは私好みだ。いいぞ福田。もっといじれ。やはり友人になるかならないかの差っていうのはこういう時にどう感じるかが重要であるし、福田さんも私が不快にならないことを見越している。

 そしたら、なぜか私がまあまあ軽蔑している芦原、西崎、寺田もやって来た。

 普段は授業が終われば、班ごとに掃除をしたり、それぞれの友達と残って話したり、あるいは帰ったりという行動パターンがある程度決まっているが、終業式の解放感と余った時間でややいつもと違う行動パターンになっているようだ。彼らもたまには違う女子のグループに接して違う刺激を求めているのだろうか。

 私はD組の自分の席に座り、その周りに私含め7人の人だかり。他の6人は隣の席に座ったり前の席の机に座ったり、その横に立ってたり、しかしそれ以上は増えない。そしたら芦原が

 「ああ聞いたことある。デカルトの無知の知だろ?」と言って、会話に混ざろうと腰を下ろた。

 「我思うゆえに我ありだ」と私は訂正し、この3人の合併に許可を出す。しかしこいつは今ボケたのかどうかつかみきれない。感覚の合わない人間というのはこういう時の判断がどちらかわからないが、私は続けて

 「でもデカルトは正しいわ。よく知ってるわね。主観を出発点にしたのはデカルトよ。もちろんそれ以前にもいたんだけど、近世哲学の始祖は彼からだと言われてるわ」

 このイレギュラーなグループの組み合わせに、他の子たちは遠目から様子を伺う感じである。ここにいる人の背中越しに他の生徒のこちらを伺う顔がたまににょきっと見えたりする。おそらくここに加わりたいがいつもと違うグループの組み合わせに、加わっていいかどうか迷っているらしい。

 芦原、西崎は普段自分たちの方から女子のグループに加わることはまずないので、おそらく妃願望アホ女子や西崎と対等アピールアホ女子の中では大事件が起こっているはずである。

 いつも芦原、西崎の二人に馬鹿にされている寺田君もその傷つけられている自尊心を取り戻そうと意地でもこの輪に加わり、自分はこの輪に入れる人間だと思うことで自尊心を満たしたいらしい。

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