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現象学女子〈41〉いろんな自我が現実をとらえるとこうなるんだ

 いじられ役をやっている寺田君も、いじられることで芦原一派に属しているという恩恵があると思っているらしいので、距離をとったり逃げたりもしない。おそらくその集団自体が上位であると本気で思ってる、あるいはそう思おうとすることでそれこそ自我の安定を図っているようだ。

 外から見てる方は不快だが、彼らは彼らで調和がとれているらしい。いじめとして表面化しない程度の精神的な攻撃。でも本人たちはじゃれ合ってるという認識でその場をやり過ごしている。

 そして笑えるのは、寺田君は妃願望女子と仲がいいことだ。妃願望女子はもちろん芦原君に見初められたいが気安く近づけないので、子分の寺田君ととりあえず仲良くしていて、ものすごく分かりやすい2軍(いや3軍か)集団が出来上がっている。だから寺田君の受けている恩恵とはこのことなんだろう。

 このお互いバレバレの下心を持ちつつも、目先のメリットは享受できる環境が、芦原一派からその下に広がる芦原下請けのような人間関係が生まれていて、もう私などはここに属したら人間として終わりだわくらいに思っているのだが、それももちろん私個人の勝手な価値観から生まれた現実認識である。

 集団があったらとにかくその中の上位に行きたいと思う人がいるらしいのだが、その集団のカラーというか、品格というか、雰囲気みたいなものは気にしないのか、そもそも認識できないのか私にはそれが信じられない。

 というわけで、今考えると、福田さんが矢野君は「今は違うかな~」って言った理由はこういうところも入っているのかもしれない。もしかしたら福田さんから見たら矢野君は芦原君にまだ寄り過ぎているように見えるのかしら。こういうことはなぜか本人に聞けないのが私も気を遣いすぎなところである。そしてなぜか金井君には聞けるのが不思議だ。この前なんとなく今のような話をしたら

 「いや俺も、最初気づかなかったんだけどさ、あいつらよく集団で下校してるのよ。だからたまにはおれもみんなと帰ろうかなって思ってそこに加わったら、『翔太も入ったの?』とか言われちゃってさ、もちろん芦原本人は何も言わないんだよ。山本とか佐久間とかあの辺から。それでああここって彼らからしたら、なんか選ばれた人が入れる場所だったんだってそこで気づいたのよ。正直ダサすぎてそれ以降そこに加わってないわ」と言っていた。

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