珍宝館

 「珍宝館に行きたい。」

 今となっては、いつどこでそれを知ったのか、どちらが言い出したのかは忘れてしまったが…友人と会った際に、女2人でそんな話になった。今から5年以上は前の話だ。たしか、社会人になりたての頃だったと思う。

 珍宝館(ちんぽうかん)。我が故郷、群馬県にある性の博物館であり、いわゆる"秘宝館"と呼ばれる場所である。

 当時私達は非日常に飢えていた。そして、くだらない物が大好物だ。話に出てから行くまでに時間はかからなかった。

 ちなみに珍宝館は、温泉好きには有名な伊香保温泉の近くにあるのだが、交通の便が悪い群馬県では車で行くことを強くおすすめする。


 くねくねした道を進み、なんとか到着。駐車場に車を停める。寂れた建物に漂うアングラな空気感にワクワクしつつ、ドライブスルーみたいな小窓からチケットを購入。サバサバしたおばちゃんが一人でチケット売り場を担当していた。

 さて、建物に入ろうか…と門をくぐると池のある庭があり、ドドーンと"アレ"の形をした大きな岩がお出迎えしてくれる。とても、ギンギンである。その下には女性版の"ソレ"の岩もある。リアルすぎる夫婦岩。

 女2人で呆気にとられていると、後ろから先程のチケット売りのおばちゃんが出てきて一言。

 「ようこそ。私がここの館長兼マン長で、名前をちん子と言います。」

 …そんな挨拶だったと思う。一発目から刺激が強い。このおばちゃん、館長だったんだ。ってか、マン長ってなんだろう。いろんな疑問がぐるぐると頭を回る。それにしても、どこか品のある口調でサラッと言うもんだから、嫌な気がしない。

 そのまま岩の説明をされ、それを見て両手を揉みながら拝むよう指示される。

 「ちんちんまんまん…」彼女は唱えながら、拝んでいる私達の股間を優しくタッチする。そして、「…乾いてるわねぇ。」と呟いた。

 少し悲しくなりながらも、笑ってしまう。友達もゲラゲラ笑っている。とんでもない所に来てしまった。


 その後、館内で待っていてほしいと言われ入館。どうやら新しい来客があったらしい。部屋には二股に足を伸ばした大きな木や、裸の人が何人ももつれたあった大皿などが飾られていた。

 それを眺めていると、外にいたお客さん達が館内に集合。そこでも、ちん子さんによる展示物の解説が始まった。トークの絶妙な間、ちょこちょこ入る時事ネタ、そして淡々とぶっ放すエロトーク。見事。まさしく名人芸である。

 いろいろな話を聞いたが、私はちん子さんが「がんばるのよ〜」と呼びかけながら、二股の大きな木の股のところに別の長い木をズボッと挿し込んだ瞬間がたまらく好きだった。是非実際にその目で見ていただきたい。


 あとは自由に見ていってとのことなので、くまなく見た。沢山の卑猥な形の石が置かれた部屋や、春画部屋、アダルトな人形などなど…。ちん子さんのトークだけでもチケット代の元が取れたような気がするが、展示物も思いの外見ごたえがあり面白かった。
 お土産コーナーでは、"お〜いローション"と書かれた、いかにも飲み物と見間違えそうなローションを横目に見つつ、48手が描かれた手ぬぐいを購入し帰宅。


 あれから、たまらなくなって2度伺った。そして、B級スポットを巡る事が好きになった。


 群馬県には温泉以外何もないよなんて話をよく聞くが、そんなことはない!と声を大にして言いたい。ちなみに彼女は今でもご活躍されているとのことなので、また行きたいなぁと。ふと思い出した今日この頃である。

  

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