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「PPP/PFIの教科書」書籍出版の体験記その⑤「孤独の世界、救いはnote」

2024年の2月に「これ一冊ですべてわかる PPP/PFIの教科書」という専門書を中央経済社から出版しました。出版前から「書籍ができたら、それまでの取り巻くストーリーを伝えると、誰かの役に立つかもしれないよ」とアドバイスを受けたので、何回かに分けて綴っていこうと思います。

第五回は「孤独の正解、救いはnote」です。
「書籍出版には興味があるが、PPP/PFI(官民連携)って、何じゃそりゃ?」という方も、専門知識なしでもイメージいただけるようお伝えしますので、ぜひお付き合いください。

【1】「売るのは、著者の責任」だけど…。

いよいよ著書が書店に並ぶ日が近づくと、ワクワクの毎日です。
ただ、印刷が出来上がるのを待っている間は、何もすることがありません
そこで、何をしたら良いのかと思い、ネットを調べると、
そこには「売るのは、著者の責任です」という文字が。
そして、あれやこれや著者としてやるべきことが書かれていました。

「SNSを使ってきめ細かく書籍に関する情報を発信しましょう」
「SNSのフォロワーの皆さんにリアルの説明会を行いましょう
「書店周りをして、手書きPOPを持ち込みましょう」……などなどなど。

おや、これは大変です。
そのころはまだ、同窓会の連絡を受けるために
Facebookのアカウントを持っているぐらいで、SNSにはトンと縁がなく、
フォロワーは当然ゼロです。

困った時の編集長頼みで、さっそく
「大型書店に、手書きPOPを持っていこうかと思うのですが…」と
おそるおそる聞いてみたところ、
「営業に確認しましたが、書店の方が対応に手間がかかるということで
あまりウェルカムじゃないとのことですよ」と回答が。
う~ん、このままではSNS弱者の私は「売るのは著者の責任です」が
何にも履行できなさそうです。

さんざん悩んだあげく、結局売るのはひとまず横に置き、
今までお世話になった方に告知かたがた御礼を出そうと思い、
300枚ほどハガキを印刷しました。
それぞれの方の顔を思い浮かべつつ、1枚ずつ手書きで住所を書きながら、
店頭に並ぶ日を待ったのでした。

【2】わくわくしながら発売日を迎えて

2024年2月1日。
それが、記念すべき私の著書第一号の発売日です。

全国の本屋さんに並び、Amazonでも検索したら出てくるようになり、
多くの人の目に触れて、何だったら電車の中で前に座った人が
読んでくれていたりして…と、いろいろ妄想しながら、
ウフウフこの日を待っていました。

そして迎えた2月1日の朝。
ネットを検索すると、おお…Amazonで発売されているではありませんか!
会社の仲間にお願いしておいた、東京・大阪の大型書店の情報も
スマホの写真とともに続々と送られてきます。
「地方自治のコーナーに、平置きされていました」
「階段上がった奥の行政コーナーに、配架されています」…などなど。

本当は、「今月のビジネス新刊コーナー」にドーンと
平置きされる様子を妄想していたのですが、
PPP/PFI(官民連携)という専門領域に関する書籍のため、
全て専門コーナーに置かれているようです。

とはいえ、中には、東京丸の内オアゾのように、
地方自治のコーナーに平置きしながら、レジ前の政治コーナーにも
平置きしてくれる、ありがたい本屋さんもありました。

著書が置かれている書店の写真。田中角栄氏や池上彰氏など有名人の周りに置かれている。
思わずスマホで撮ってしまった丸の内オアゾの写真(すいません…)。
田中角栄さんの上、池上彰さんの斜め上という大変光栄な場所に置かれております!

PPP/PFI(官民連携)は、難しい専門書はあるけれども
基本解説書が意外と少ない分野です。
これなら、ちょっとお役に立てるかもな…とウキウキしていました。

そして、この「意外と少ない」が、自分を苦しめることにもなったのです。

【3】何もできない、孤独の日々

知り合いから、「買いましたよ!」というありがたい言葉を
いただくこともあり、
この頃は休憩時間に、ドキドキしながらAmazonをチェックするのが
ルーティンになっていました。

表示される在庫数が1冊でも減っていたらほっとして、
ハラハラしながら発売順位もチェックして、
「おっ、2500位まで上がって来たぞ」と気づいた発売6日目の午後。
いきなり「在庫切れ」の表示になったのです。

こりゃ大変だ…全国には大型書店がない町も増えている中で、
ネット書店で販売できなくなるのはスゴく痛手です。

さっそく編集長に連絡すると、
「店頭でもどうやら蒸発するように消えてしまっていて、
よくわからないんです…とのこと。
そして、翌日の発売7日目には増刷が決定しました。

そう、「発売1週間で増刷決定」というウレシイ称号とともに
印刷待ちで何もできない日々が始まったのです。

発売月だからこそできる、
「こういう書籍を出したので、良かったらみてください」は
手に入れることができない相手に迷惑をかけるので、
もはや、誰にも言えません。

ウキウキ作った告知はがきも、出したくても書店に並んでいないので
3分の2以上、手元に残ったままです。

図書出版をお知らせするカラフルなハガキの写真。たくさんの枚数が残っていることがわかる。
デザインを工夫してネットプリントでワクワク作ったお知らせハガキ。
たくさん余ってしまいました。

あれだけ熱意を込め、早朝・深夜と週末に、
文字通り身を切る思いで書いた原稿たちでしたが、
誰からも反応はなく、Amazonのクチコミにも
何も書かれません。

まるで世の中が白黒になったような、孤独の日々のはじまりでした。

【4】noteとの出会い

1人でもいい。誰かに知っていてほしい。
何かのリアクションが欲しい…
そうして見つけたのが、noteの1つの記事でした。

それは、星野梟月(Hoshino Owl)さんの
「題名読書感想文:11 どんな形で繰り返しても注意を引くのが繰り返し」という記事。
内容に関するコメントではなく、
タイトルの語感のおもしろさを星野さんらしい角度から
切り取ったユニークな記事です。

大笑いする…のではなく、でも「じわる」感じ。
そういういじられ方も嫌ではありません。

何よりも、誰かが見てくれていた…という喜びが大きく、
ようやく白黒の世界に色が戻ってきたのでした。

【5】Amazonとの付き合い方を覚えて

その後、増刷版がAmazonやまちの書店に並んだのは、
発売月の翌月の3月に入ってからのことでした。

結局、発売月の2月は後半全てが在庫切れだったため
「出版しました」の告知はほとんどできませんでした。
月が替わり「新刊」ではなくなったからか、
平置きされていた本も棚への配架に変わってしまい、
”出版しました”ムーブメントは、どこかへ消えてしまっていました。

そして2週間後、またAmazonで「在庫切れ」の表示が。
また増刷に入り、次に店頭に並んだのは、
発売月の翌々月の4月のことでした。

この頃から、もう「在庫切れ」にもオタオタしなくなり
「あれ?前日みた在庫数より増えてる」など、
Amazonの不思議な生態にも慣れるようになりました。
AIによる在庫管理が徹底されているからこそ起こる現象のようで
在庫数表示も、出版社への発注指示も
AIが、類似図書の経験値からコントロールしているようです。

出版社としても、Amazon側から発注指示がないと納品できないことも
教えていただいたので、
こればっかりは、しょうがないことが理解できました。

つまり、基本解説書が意外と少ない分野の専門書だったからこそ
想定以上に売れたし、通常とは違う売れ方だったので
AmazonのAIも判断を誤ったようなのです。
色んなことを学べた、初めての出版でした。

【6】そして、今。そして、これから。

それからも、また「在庫切れ」の表示がでるなど、色々あって、
いまは、第4刷が増刷されたところです。
出版から半年も経たないうちに増刷を重ねられたことは
光栄なことですが、
著作を出したという熱狂に、早い段階で水をぶっかけられたこともあり
天狗になることもなく、落ち着いてこの半年を過ごせました。

2024年2月1日。
それは、記念すべき私の著書第一号の発売日。
そしてそれは、これから、第二号、第三号と続いていくはずの、
単なる最初の一歩にしかすぎません。

これからも、熱狂で迎えられることはないけれども
「こんな本を待っていたんだよ」としみじみ思っていただけるような、
そういう役立つ書籍を世に出していきたいと思います。

全5回、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
これからも、頑張ります。
どうぞ、お元気で!

また、新しい記事でお会いできる日を楽しみにしています。


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