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ロッククライミングにおけるプロテクションの違い

この記事では、ロッククライミングにおけるプロテクションの違いについてみていきます。


そもそもプロテクションとは

プロテクションとは簡単に言えば、クライマーの安全を「保護」する物のことです。
クライマーは墜落時に、ロープ、クイックドローやカラビナといった道具を介してプロテクションによる保護を受けます。
ロープなどもクライマーの安全を保護する物ですが、大元にある物をプロテクションと呼びます。(ここでいう大元とはクライマー側ではなく岩側のことです)

3つのプロテクション

プロテクションには3つの種類があります。
①フィクスドプロテクション
②リムーバブルプロテクション
③ナチュラルプロテクション

次項以降これらの3つの違いについて詳しくみていきます。

フィクスドプロテクション

まずはフィクスドプロテクションについてみていきましょう。
このフィクスドとは英語の「fix」に ed がついた形の「fixed」からきています。
つまり、「固定された」という意味になります。
さて、このフィクスドプロテクションとはどういったものかと言いますと、岩にハンガーやハーケンと呼ばれる人工物を取り付け、それをプロテクションとします。
ちなみにハンガーはボルトによって止められています。
具体的には、ハンガーの場合は岩にドリルで穴を開け、ハンガーのついたボルトをその穴に入れて固定します。
ハーケンの場合は、岩の細いクラック(割れ目)にハンマーで打ち込んで固定します。
そしてこの岩に設置された人工物は、基本的には半永久的に「固定」されたままです。
つまり、取り外したりせずに、岩に残したままの状態で使うということです。
なので、登る前に既にプロテクションがルート上にあるということ。
多くの場合、このフィクスドプロテクションを誰もが何年間も使います。
ただし、半永久的にと言ったのには理由があり、錆びたり、多くの人がこれに体重をかけることによって脆くなっていき、破損の可能性があるということです。

赤丸で囲ったものがハンガーです。ボルトで止められていますね。
これにクイックドローという物をかけ、それにロープをかけます。
墜落時にはロープ及びクイックドローにも体重がかかりますが、それを大元で支えているのがハンガー(ボルト)です。
つまり、大元のハンガーがフィクスドプロテクションとなります。

リムーバブルプロテクション

次にリムーバブルプロテクションについてみていきましょう。
このリムーバブルとは英語の「removable」からきています。
つまり「取り外し可能な」プロテクションのことです。
岩の割れ目などに、取り外しができる人工物を差し込み、それをプロテクションとします。
フィクスドプロテクションとリムーバブルプロテクションの大きな違いは、前者は取り外しをしない前提で、後者は取り外しするのが前提となっています。
このリムーバブルプロテクションはクライマーが登りながら設置していき、使い終わったら取り外します
ですので、同じようにクラックを利用するハーケンとは異なります。ハーケンはハンマーで打ち付けますので、基本的には取り外せません。
(ハーケンは、カムが入らないようなとても細いクラックにハンマーを使って打ち込みます。)

こちらも赤丸で囲ったものがリムーバブルプロテクションの代表格であるカムです。
グレーの部分が岩だと思ってください。
こちらも墜落時にはロープ及びカラビナにも体重がかかりますが、それを大元で支えているのがカムです。

カムの仕組みがどういったものかも以下のイラストで簡単に確認しておきましょう。
ややこしくなってしまうので、ここでは専門用語は使用せず説明していきます。

赤い部分を手で下に引っ張ると、それに伴って軸を中心に扇形のパーツが狭まります。
手を離すと、元の位置に戻ろうと扇形のパーツが広がります。
その広がろう(戻ろう)とする力を利用したものがカムです。
狭めた状態でクラックに差し込み、手を離すことで扇形のパーツが岩を押し広げるような力を発生させ、固定されます。身近なもので例えるとツッパリ棒ですね。横方向に発生する力で固定されますよね。
クライマーの墜落時には、軸が下に強く引かれます。強く引かれるほど広がろうとする力も強くなります。

ナチュラルプロテクション

最後にナチュラルプロテクションについてです。
このナチュラルとはこれまた英語の「natural」からきています。
つまり「自然の」プロテクションのことです。
「自然の」とは、木や岩といった自然物のことを指します。
どういうことかというと、木や岩角の自然物に、スリング(紐もようなもの)といった人工物を巻きつけることで、それら(木や岩角)をプロテクションとします。
こちらもリムーバブルプロテクション同様、登りながら設置していき、使い終わったら取り外します
一番シンプルなプロテクションですね。

木にスリングを巻きつけてプロテクションとした場合です。
赤くなっている部分(木自体)がプロテクションとなっています。
こちらもロープやカラビナ、スリングにも体重がかかりますが、それを大元で支えているのが木(自然物)です。

リムーバブルもナチュラルなのでは?と思った方は次項を参考にしてください。

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