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春画や裸婦画を巡るエトセトラを見聞きするたび思い出す言葉

趣味の一つに芸術鑑賞がある。浮世絵も好きだし、前ラファエル派みたいな重たい西洋画も好きだ。歴史好きでもあるので遺跡や出土品レベルの古いものも好きだし、若手の日本画やイラストライターの個展にも足を運ぶ。気に入ればなんでも食べる完全な雑食である。
中には成人指定の展示もある。
そういう裸婦画やヌード写真の展示会に行ったり、春画を巡る論争を見るたびに、コミケ仲間だった写真家の友人の言が脳裏をよぎる。

『芸術目的だとしても、裸の絵や彫刻、ヌード写真を見てエロい気分になるのは全然ありなんだよ。作者やモデルもそれはある程度は折込済。
まあ、そこで顔に出したり、作家やモデルにセクハラ発言するのは下品下劣だから、公共の場では何でもない顔をし通すのはマナーだけどね。
むしろ、ガチで作品やモデルにいっさいエロさを覚えないひとのほうが、人体を物体と見なしてるマジのひとでなしが多いんだよねえ。
大事な生きた美術品として作家やモデルに敬意を払ってくれるから、客としてはとっても紳士淑女ですてきなんだけど、壺を見る目と裸の人間見る目が同じってふとした瞬間に相手に恐怖を与えるから、それはそれで気をつけて。』

なお、これは昔ある美術館で行われていたヌード写真展(空間とか時間とか色々と意味のある現代アートでわりと話題になった)にいった別の友人が、無理やりついてきた彼氏が終始ニヤニヤとしていて周りの女性客を気味悪がらせた挙げ句、美術館でイチャイチャしようとくっついてきて、その無教養と品性のなさにキレてその場で別れたというエピソードについて話していたときのコメントである。
ついでに後半部分は
「男の体って直線的でつまらんから、女性の絵や彫像のほうが曲線的で見てて面白いんだよね。私、アールデコよりアール・ヌーヴォー派だから。男はなんかゴツゴツか平たいかでつまらん。衣装が豪華なら見応えあるんだけど、着衣ならなおのことほとんどの時代地域で女性のが華やかじゃん」
と言っていた私へやんわりとした諫言である。
今なら普通にルッキズムで怒られそうな発言だが、私が見ているのは「人間」ではなく「芸術品」なのでそこは勘弁してもらいたい。たぶん、そういうところがひとでなしがひとでなしである所以なのだろうが。

今日もまた己がひとでなしであることを己に戒めながら、美人画を眺める。

しかし、若い女性の作家さんの展示会場で見かけるギャラリーストーカーとうんちくおじさんの多さを見かけるたび、紳士になれない一般人より、紳士なひとでなしのほうがかなりましなのではないかという思いも脳裏をよぎる。
正直、成人指定の美術展よりも若くてきれいな女性作家の個展のほうがあきらかにヤバい客を見る頻度が高いので、取り締まるべきは絵画や彫刻の裸体ではなく生身の変態であることは疑いようもない。
頭の中でなにを考えるも、芸術にどんな感想を持つも、なにを好きでなにが嫌いかも自由だ。だが、それが他者への危害になってはいけないのだ。

なお、この発言をした彼女は青あざや打撲痕に美を見出すタイプの変態で、しかしながら誰かの大切なひとに怪我をさせるわけにはいかない!と他者に暴力を振るうのではなく、月イチくらいでわざと階段から転げ落ちて青あざを作っている変態だったので発言は8割くらい聞き流したほうがよいと思われる。


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