10,行きはよいよい帰りは怖い?

8合目での急遽予定変更からなんとか山頂までたどり着き、すこし登頂の喜びを味わったあとに、帰りのバスの時間も考えて?下山道に向かった。そのときすでに午後3時前。
下山時間を甘く見ていた我々は気づいていなかったが、今考えるとこの時点でアウトだった。タイムオーバー、下山前に漆黒の闇に覆われること確定していた。二日かけて登った山を2時間で降りられるわけがない!冷静に考えればわかることも当時の判断力は限りなくゼロに近かったと言わざるを得ない。そういえば山頂でベテランらしき人が『下りが大変なことわかってない人多いんだよな。』と言っていたことが後から脳裏をよぎった。私たちに向けた言葉だったんだ!登りとは打ってかわって下りは砂地。走って駆け降りる人もいたが、初心者の我々にそんな芸当が使えるわけでもなく、ほどなく下の娘が体調不良を訴え、私と上の娘が先行して下山し助けを呼ぼうよいうことになった。背後から闇は刻々と迫ってくるが、目安の6合目には一向にたどり着かない。下山する人もどんどん少なくなり我々以外に誰もいなくなってしまった。後ろの妻と娘も心配だが、自分たちが下山してなんとかしなければならず、平静を装いながらも人生1番か2番を争うほどの危機感に襲われていた。
唯一のライフラインであるスマートフォンのバッテリー残量もあとわずかとなったところで、漆黒の闇に行く手を阻まれてしまった。そこで万事休す、恐怖と疲労で震える手を抑えながら110番に電話をかけ助けを求めた。
山梨県富士吉田警察につながり事情を話したところ、場所がわからないのでGoogle マップ上での座標番号を教えるように言われ試行錯誤の末、何とか伝えることが出来た。
ただ場所が分かったところで、登山ルートから外れているわけでもなく、そう簡単に助けに来てはくれないようで、急病でもない限りはできるだけ自力で下山するようにとの事であった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?