暗証番号

父の銀行口座がストップしたので、母の口座からお金を引き出さないといけない。

「暗証番号は全部、同じ」
と聞いていたので何の懸念もなくATMに行った。
ん?
暗証番号が違う?
間違えたかな。もう一度、間違えないように慎重に入力する。
え!また違うって?
誕生日かな? これも違う。
まずい。

次の日、施設に物を届けがてら母に会いに行った。
「信金のママの口座の暗証番号、覚えてない?」ダメ元で聞いてみた。母はしばらく考えて言った。
「そうだねえ、どの番号も違ってたんなら野菜だと思うよ」
「え?野菜って?」
「んー、きっとね、玉ねぎだよ」
「た?玉ねぎ?いやあ、玉ねぎじゃお金は引き出せないと思うよ」「じゃあ色んな番号を端から試すしかないね」まあ間違ってはいない。

だめか。

銀行に問い合わせると、3回間違えた時点で口座はロックされていて、解除するには本人が来店する必要があるということだった。
実家の近くの信金までは小一時間かかる。
無理ではないけれど、気が進まない。

施設の費用は口座引き落としにする事ができたので、まあ大丈夫だろう。諦めて、父の相続が決着するまで立て替えておくことにした。

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