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ジェイラボワークショップ第45回『特殊相対論入門』【物理学部】[20221205-1218]#JLWS

今回は『特殊相対論入門』というテーマでワークショップを行いました.

まず,ワークショップで用いた資料を1つのpdfにまとめたものを添付します.なお,ワークショップでは日ごとに分割したものを添付しています.

以下はワークショップのログです.「★」がついたものだけで読み物としては完結しているので忙しい方は「★」だけ読んでもらっても構いませんが,「★」以外も含めて全部読んだ方がより空気感を味わえると思います.参加者のコメントについては,発言者の頭に「■」をつけ,その返信には発言者の頭に「・」をつけています.

Day1

★Naokimen

皆さんこんにちは.本日から物理学部のワークショップが始まります.今回のテーマは「特殊相対論入門」です.特殊相対論の初めの方を中心に解説していこうと思います.2週間よろしくお願いします.

今回のワークショップでは,数式を用いる関係で,基本的にpdfファイルを添付し,それに加えてSlackにその補足説明を投稿します.基本的には高校までで習う数学(文系が習う範囲)が大体分かっていれば数式も含めて読めるようにしましたが,一部,大学1,2回生で習う数学の知識が必要なところがあるのでその所は補足を入れます.今回はpdfファイルの説明がメインであり,Slackに投下する文章はあくまでその補足なのでご注意ください.pdfを読まなくてもSlackに投下する文章だけで大まかなストーリーは分かると思いますが,それだけでは何を言っているかわからないところが何箇所かあると思うのでpdfの方も(式は全て追わなくてもいいので)目を通していただければありがたいです.

いつも通り何回か質問を出すので,答えていただければありがたいです.また,分からないところ等があればいつでも質問・コメントを受け付けますので,気軽にコメントをしていただけるとありがたいです.

それでは特殊相対論の内容に入りたいと思います.ですが,特殊相対論を理解するためには特殊相対論が作られた頃,既に定式化されていた力学と電磁気学についてわかっていなければいけません.ということで,今日から3日間はまず力学と電磁気学について解説していこうと思います.本日扱うのは力学における運動の表し方です.詳しくは添付するpdfを読んでください.「速度」については車のスピードメーターなどで普段用いており,また,「加速度」はあまり日常で使わないかもしれませんが「加速」という言葉は普段使っていると思います.速度は単位時間あたりの位置の変化,加速度は単位時間あたりの速度の変化です.この定義をきちんとおさえておきましょう.

Day2

★Naokimen

本日は実際に運動をどのように記述して調べるかについて見ていきます.Newton力学において運動を記述する方程式は「Newtonの運動方程式」と呼ばれるものであり,それを解くことによって実際の運動の様子がわかります.具体例:「斜方投射したボールの運動」を通して,Newton力学における運動の調べ方を理解しましょう.なお,例に出てくる積分計算などを追えなくても「Newtonの運動方程式によって運動が記述されそれを解くことによって運動の様子が分かる」ということさえおさえておけば大丈夫です.

Day3

★Naokimen

本日は電磁気学を見ていきます.電磁気学は電場と磁場によって記述され,電場と磁場を決めるための基礎方程式がMaxwell方程式です.Maxwell方程式の式そのものはベクトル解析という大学で学ぶ数学の分野を学んでいないと理解できませんので,ベクトル解析を知らない人は式そのものについて理解しなくても大丈夫です.4本のMaxwell方程式それぞれが表す意味を文章で述べているので,その文章を通して,Maxwell方程式は何を言っているのかについて理解しましょう.

■Hiroto

高校物理をやっているとき、遠隔作用と近接作用があまりにも等価に見えすぎて、なぜ電場なんて概念を持ち出すのかが意味不明でした。文章を読んでそういうことだったのかと今更腑に落ちました。

・Naokimen
高校物理においては電場と磁場はさらっと出てきて場を導入することの重要性についてはちゃんと学ばないですね。“場”の概念は電磁気学に限らず物理学全体で重要な概念なので高校物理でもしっかりと説明してほしいと思っています。

Day4

★Naokimen

いよいよ本日から特殊相対論の内容に入っていきます.本日はNewton力学とGalilei変換について扱います.まず,Newton力学における慣性の法則が成り立つような座標系のことを慣性系といいます.今後,「慣性系」という言葉が繰り返し出てきますが,もし抽象的でわかりにくければ「慣性系」=「物理現象を観測する人」と考えてもらってもあまり問題ないと思います.慣性系は実は1つだけではなく無数に存在し,Newton力学において,慣性系どうしはGalilei変換と呼ばれる座標変換で結ばれます.そして,それらの慣性系全てにおいてNewtonの運動方程式が同じ形で表されます.つまり,Newton力学はGalilei変換で不変であるといえます.Galilei変換で結ばれる全ての慣性系において同じ物理法則が成り立つことをGalileiの相対性原理と呼び,Newton力学はGalileiの相対性原理を満足するといえます.

Day5

★Naokimen

今日は大学で学ぶ数学の知識がないと式変形がわからないと思うので,pdfを読まなくても以下の文章だけ読んで理解してもらえればOKです.大学で学ぶ数学の知識があって興味のある人はpdfをお読みください.
昨日,Newton力学がGalilei変換で不変であることを見ましたが,Newton力学だけでなく全ての物理法則がGalilei変換で不変かどうかが気になります.そこで電磁気学の基礎方程式であるMaxwell方程式がGalilei変換で不変かどうかを調べると,光速度cを定数としたとき,Maxwell方程式はGalilei変換で不変ではなく,Maxwell方程式が不変であるためには光速度がGalilei変換に対応して変化する必要があるということが分かります.なお,Maxwell方程式がGalilei変換で不変ではないことの導出でベクトル解析,偏微分などの大学で学ぶ数学の知識を使っているので,その知識を持っていなければ,「電磁気学の基礎方程式であるMaxwell方程式は光速度cを定数としたとき,Galilei変換で不変ではなく,不変であるためには光速度が慣性系によって変化する必要がある」ということをおさえておけば大丈夫です.

ここで,1つ質問を出したいと思います.理由等があればコメントしていただけるとありがたいです.

★Q1

これまでのNewton力学と電磁気学のGalilei変換に関する考察から予想される可能性としては以下のようなものがあると思いますが,現時点でどれが1番正しそうに見えますか?(「結果的にどれが正しいものだかったか」ではなく当時の人の気持ちに立って「どれが1番正しそうに見えるか」を考えてください)
①Galilei変換のような座標変換に関する不変性を考えるのがそもそもおかしく,物理法則はある適切な座標でのみ正しく表現されるものである.
②Galilei変換はNewton力学だけでなく電磁気学をも不変にするはずであり,当然光速度は慣性系によって変化する.
③光速度は慣性系によらず一定である.電磁気学を不変にする座標変換を考えたとき(座標変換Aとする),力学も座標変換Aで不変である.実はGalilei変換は座標変換Aにおいて何らかの近似をして得られるものであり,Newton力学はその近似のもとで成り立つ力学である.
④その他の可能性(→コメントお願いします)

:1: Galilei変換のような座標変換に関する不変性を考えるのがそもそもおかしく,物理法則はある適切な座標でのみ正しく表現されるものである.
:2: Galilei変換はNewton力学だけでなく電磁気学をも不変にするはずであり,当然光速度は慣性系によって変化する.    3
@蜆一朗, @チクシュルーブ隕石, @Yujin
:3: 光速度は慣性系によらず一定である.電磁気学を不変にする座標変換を考えたとき(座標変換Aとする),力学も座標変換Aで不変である.実はGalilei変換は座標変換Aにおいて何らかの近似をして得られるものであり,Newton力学はその近似のもとで成り立つ力学である.    1
@Hiroto
:4: その他の可能性(→コメントお願いします)

■Hiroto

方程式と変換則をセットで捉えたい立場、ということで③に入れました。マクスウェルの方程式がガリレイ変換で不変でないというだけで諦めるのは科学的ではなく、統一的に記述したい信念のもと、マクスウェルも不変にするような変換則を考えるようになると思います。

・Naokimen
方程式と変換則をセットで捉えるというのはとても重要なことであり、マクスウェル方程式を不変にする変換則を考えるというのは自然なことだと思います。
ちなみにマクスウェル方程式が慣性系によらず不変であるという主張は光速度が慣性系によらず一定であることを含みますがそのことについてはどのように考えましたか?

・Hiroto
それは受け入れるしかないのではないでしょうか、、、、、。
その整合性を保つ捉え方について、まだ具体的には思いつきません。
調べてみます。調べた結果は頃合いをみて投下します。

・Naokimen
調べた結果、楽しみにしています。
ちなみに、明日以降のネタバレになるので詳しいことは言えませんが、僕はこういうのは実際に実験してみて確かめればいいと思っています。

Day6

★Naokimen

昨日の質問【Q1】における①~③のうちどれが正しいかを判断するために,当時,光速度が慣性系によって変化するかどうか確かめる様々な実験が行われました.これらの中でもっとも有名で決定的な結果を得た実験が今回扱うMichelson-Morleyの実験です.どのような実験かどうかについてはpdfファイルをご覧ください.なお,Michelson-Morleyの実験内容そのものについてはあまり理解できていなくても今後進めていく上で支障はありません.この実験により,光速度は慣性系によらず一定であることが分かりました.よって,【Q1】における②が排除され,また,Newton力学がGalilei変換で不変である以上,①もあまり正しいそうには思えない(思いたくない?)ので,③が正しいのではないかと思えます.

■蜆一朗

昨日の質問に 1 日遅れで返事をします(遅れてすみません)。Galilei 変換によって電磁気学が "思ってたのとちゃう" 状態になるとして、考えを変えるとすれば

  • 座標変換に関して不変であることの重要性を疑う (①)

  • 電磁気学が Galilei 変換で不変にならないことを疑う (②)

  • (Galilei 変換は諦めて)電磁気学を不変にする別の変換を考える (③)

の 3 つが考えられるかと思います。いずれを取るにしても、物理学者の自然な気持ちとしては、

  • Newton 力学を揺るがしかねないので座標変換不変の重要性は疑いたくない (①)

  • Newton 力学で成り立つことは電磁気学でも成り立つはずだ (②)

  • Galilei 変換を諦めて電磁気学を不変にする別の変換を考えてみるものの、それは包括的に力学を不変にするはずだ (③)

という、Newton 力学への尊敬 (というか信頼感というか) から逃れられないのではないか、という気がしました。なので僕の意見は ② か ③ ですが、素朴には ② のほうが人間心理として自然だと思います。

・Naokimen
Newton力学への尊敬(信頼感)から逃れられないというのもあったと思いますが、それに加えて、Newton力学のGalilei不変性を含む、より適用範囲の広い(力学と電磁気学を両方含む)理論を作ろうという姿勢もあったと思います。②よりも③の主張の方が強いので、僕も②をまず信じるのが自然だと思います。

Day7

★Naokimen

昨日までの議論を踏まえて,Einsteinは特殊相対性原理,光速度不変の原理の2つの原理を基本原理として物理学全体(=力学+電磁気学)をそれらの原理に従うように書き換えました.この理論が特殊相対論です.よって,今後の目標は2つの基本原理に従うように力学と電磁気学をかきかえるということになりますが,私たちはまだ慣性系を結ぶ(Galilei変換に代わる)変換がわかっていないので,明日からはその変換について議論していこうと思います.なお,今回のワークショップでは,時間の関係で,力学と電磁気学のかきかえについては扱いません.

ここで2つ目の質問を出してみます.

★Q2

「光速度不変の原理」は直感に反するものだと思いますが,これを受け入れることはできますか?それともあまり納得できないでしょうか?理由も書いていただければありがたいです.
①受け入れられる
②あまり納得できない

:1: 受け入れられる    4
@Hiroto, @蜆一朗, @チクシュルーブ隕石, @あんまん
:2: あまり納得できない    1
@Yujin

■Hiroto

科学とは、「現実を(仮定の少ない)箱庭で解釈する試み」だと捉えています。数学をやっている関係上、"箱庭"の感覚が強くあります。そのため、その"箱庭"がどれだけ直感に反していようとも、所詮は箱庭だという感覚で受け入れられます。

・Naokimen
とても数学をやっている人らしい回答ですね。普段から専門的に数学や物理をやっている人は直感に反することだとしても所詮は“箱庭”だとして受け入れることに慣れているので、光速度不変の原理も割とすんなり受け入れられるのかもしれません。

■チクシュルーブ隕石

原理・公理といった類のものは、「それ自体を証明することは出来ず、その原理・公理自体を飲み込んだ上で論理を展開していく」というニュアンスが強くあるように感じるので、すんなり納得しようという気持ちになりました。
個人的には公理、定義、定理が指すものはそれぞれ別々であるという認識がありますが、それに対して原理の立ち位置がややフワフワしている(特に公理と原理をしっかりと区別しにくい)ようにも感じます。

・Naokimen
直感に合う合わないに関係なく、原理・公理として認めてしまおうということですね。
物理においては「公理」とはほとんど言わず「原理」と言うことの方が多い気がします。数学においては実際に実験で確かめるということはできないのですが、物理においてはそれができるので、実験的に正しいと分かっているという意味も込めて「公理」ではなく「原理」と呼ぶことが多いのではないかと思っています。

Day8

★Naokimen

本日からGalilei変換に代わる新たな慣性系を結ぶ変換がどのようなものかを探っていこうと思います.その前提となるのは2つの基本原理(特殊相対性原理,光速度不変の原理)になりますが,これら2つの原理は文章で書かれていてそのままだと扱いづらいのでこれらを数学的表現に書き換えないといけません.今回は光速度不変の原理を数学的な表現に書き換えます.結論としては光速度不変の原理の数学的表現は,「s^2=(ct)^2-x^2-y^2-z^2という量はどの慣性系から見ても同じである」となります.

Day9

★Naokimen

今日は,昨日の結果をもとに,慣性系を結ぶ変換を求めます.ただし,いきなり一般の場合の変換を扱うのは少し難しいので,慣性系S’が慣性系Sに対してx軸方向に速度Vで遠ざかっている場合の変換を求めます.なお,一般の場合の変換についてはこのワークショップでは扱わず,明日以降も今日求めた(特別な)場合の変換について考えます.昨日の結果を用いると,中学で学ぶような数学の知識だけで慣性系を結ぶ変換を簡単に求めることができます.その結果はpdfファイルの最後の式のようになり,今回求めた慣性系を結ぶ変換をLorentz変換と呼びます.実は,今回求めたLorentz変換でV<<c(Vが光速度cに比べて十分小さい)とするとGalilei変換に帰着し,【Q1】の③における「何らかの近似」というのは「Vが光速度cに比べて十分小さい」という近似ということになります.そのことから,Newton力学は実はV<<cにおける近似理論だということが示唆されます.

明日の準備として,質問を出してみます.

★Q3

相対論を考えなければ(つまり日常生活の直感の範囲内で),ある人から見て同時に起こる現象は別の人から見てもそれは同時に起こりますか?
①同時に起こる
②同時に起こらない

:1: 同時に起こる    6
@コバ, @チクシュルーブ隕石, @Yuta, @Hiroto, @Yujin, @蜆一朗
:2: 同時に起こらない

Day10

★Naokimen

昨日,慣性系を結ぶ変換はGalilei変換ではなくLorentz変換でなければならないことがわかりましたが,その変更により,いくつか直感と合わないような事実が導かれます.今日からはそのことについて順に見ていきましょう.なお,昨日までの議論に最後までついていけなかったとしても,慣性系を結ぶ変換が昨日のpdfの一番最後の式のLorentz変換で与えられるということを認めてしまうと,今日からの議論についていけると思いますし,今日から見ていく内容は特殊相対論の中で最も面白いところだと思うので,ぜひ今日からの議論を追ってみてください.

昨日出した質問の答えはもちろん「①同時に起こる」ですが,特殊相対論を考えると実は「異なる場所で2つの現象が同時起こるかどうかはそれらを観測する慣性系に依存する」という結論が得られます.つまり,異なる場所で起こる2つの現象がある人から見て同時に起こったとしても,他の人から見るとそれは同時ではなくなってしまうということになります.

今日も明日の準備として質問を出します.

★Q4

相対論を考えなければ(つまり日常生活の直感の範囲内で),(等速で)動いている棒(例えばやり投げのように棒を投げたときを想定)の長さはその棒が静止しているときの棒の長さと比べて
①長くなる.
②変わらない.
③短くなる.

:1: 長くなる
:2: 変わらない    4
@Hiroto, @Yujin, @チクシュルーブ隕石, @蜆一朗
:3: 短くなる

Day11

★Naokimen

昨日出した質問【Q4】の答えはもちろん②となりますね.しかし,特殊相対論を考えると,「動いている棒の長さは進行方向に縮んで見える」という結論が得られます.これをLorentz収縮と呼びます.この導出は簡単な計算でできるのでぜひ計算を追ってみてください.

今日も明日の準備として質問を出します.

★Q5

相対論を考えなければ(つまり日常生活の直感の範囲内で),自分に対して(等速で)動いている人が持つ時計の時間の進み具合は自分が持つ時計の時間の進み具合に対して
①遅い
②変わらない
③速い

:1: 遅い
:2: 変わらない    7
@コバ, @Hiroto, @Yujin, @Takuma Kogawa, @Yuta, @チクシュルーブ隕石, @蜆一朗
:3: 速い

Day12

★Naokimen

昨日出した質問【Q5】の答えはもちろん「②変わらない」となりますが,特殊相対論を考えると,「①遅い」ということになります.つまり,自分に対して動いている時計は自分の時計に対して遅れるということが言えます.

今回の結果を利用すると空から降ってくる宇宙線ミューオンについて面白い結果が得られます.このことについては明日議論しますが,その準備として問題を出してみます.

★Q6

ミューオンは上空10kmのところで生成される宇宙線で,ミューオンが静止しているときのミューオンの寿命は2.20×10^{-6}秒です(寿命とは生成してから崩壊するまでの時間のこと).非相対論の範囲内では(特殊相対論を考えなければ),光速の0.9999倍の速さで進むミューオンは地表まで来ることができるでしょうか?(ヒント:ミューオンが生成されてから崩壊するまでに進む距離(ミューオンの速さ×寿命)が10kmよりも大きければ地表まで来ることができます.光速は3.0×10^8m/sです.)
①できる
②できない

:1: できる    1
@西住
:2: できない    2
@チクシュルーブ隕石, @Yujin

Day13

★Naokimen

昨日考えてもらった【Q6】の答えは「②できない」となります(pdfファイル中の(3.3.12)式を参照).しかし,実際には光速の0.9999倍の速さで進むミューオンは地上で観測されています.このことは昨日出てきた「時間の遅れ(時計の遅れ)」を考えると解決することができます.この例は「時間の遅れ(時計の遅れ)」が実際に起こっていることの実験的な証拠の1つとなっています.

■西住

昔ミューオンの検出装置を作ったことがあるので、画面を見ずにノータイムで「できる」を押してました

・Naokimen
素粒子方面に進むと宇宙線ミューオンが絡んだ実験は必ずやりますよね。僕も前期にミューオンの寿命測定の実験をやりました。

Day14

★Naokimen

最後に,特殊相対論の今後の展開について述べてこのワークショップを閉じようと思います.

今回のワークショップではLorentz変換として,ある慣性系に対して別の慣性系が等速で動いている場合(このような場合をboostといいます)のみを考えましたが,実はもっと一般的に考えるとLorentz変換としては回転も含まれます.つまり,ある慣性系に対してある軸周りに回転している座標系も慣性系になるというわけです.回転はx,y,z軸周りの3つの自由度があり,boostもx,y,z軸方向の3つの自由度があるので,Lorentz変換には合計6つの自由度があるということになります.

慣性系を結ぶ変換はLorentz変換であることが分かったわけですが,続いて力学と電磁気学を特殊相対性原理に従うように書き換えなければなりません.つまり,特殊相対性原理というのは「全ての慣性系において物理法則は同じ形式で表される」というものであり,慣性系を結ぶ変換はLorentz変換なので,Lorentz変換で不変になるように力学と電磁気学の基礎方程式(Newtonの運動方程式,Maxwell方程式(+Lorentz力))を書き換えなければなりません.それを数学的な表現に直すと,「力学と電磁気学の基礎方程式をテンソルの形で表す」ということになります.この「テンソル」というものを理解するのがおそらく特殊相対論の山場なのではないかと思います.

力学と電磁気学の基礎方程式をテンソルの形で表すことができれば特殊相対論の内容は一応おしまいなのですが,解析力学を用いるともっとすっきりと理解することができます.解析力学において,「作用」と呼ばれる1つの式を書き下すとそこから自動的にNewtonの運動方程式やMaxwell方程式といった基礎方程式が出てきます.そこで,Newtonの運動方程式,Maxwell方程式(+Lorentz力)をLorentz変換で不変になるように書きかえるのではなく,それらの基礎方程式が出てくる大元の「作用」をLorentz変換で不変なように書きかえるとよいのではないかということになります(もちろん作用がLorentz変換で不変ならそこから出てくる基礎方程式もLorentz変換で不変です).というわけで「基礎方程式をテンソルの形で表す」という作業を解析力学の言葉で言うと,「作用をLorentz変換で不変な形(これをスカラーと呼びます)にする」ということになります.

今回のワークショップで伝えたかった内容は以上です.今回のワークショップの構成を考えるうえで参考にした文献をpdfファイルで添付します.まだ終了まで時間がありますので,感想・質問などがあればコメントをしていただけると嬉しいです.

★Naokimen

今回のワークショップ「特殊相対論入門」は以上になります.2週間ありがとうございました.

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