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香典はなぜ必要?葬儀の現場で見られるお香典の「意味」

「明後日お通夜だって。お香典いくら包む?」

こんな会話をしたことが皆さんもあるのではないでしょうか。

親戚や知り合いの葬儀に行くことになると、お香典のことは必ず気にするものです。
不思議なことに、年齢によって「供花・生花」については注文率が変わるような気がするのですが、お香典については若い世代の人でも認知しているように見受けられます。
ではなぜお香典はそもそも日本の慣習に存在しているのでしょうか。
そもそもお香典は誰のためのものなのか。
葬儀の現場に身を置くものとしての感覚も含めて話しましょう。

香典の成り立ち

香典の起源は、日本の古代の葬儀習慣に遡ります。特に平安時代(794-1185年)から鎌倉時代(1185-1333年)にかけて、「お香」や「供物」を故人の霊前に供える習慣が一般的でした。これが現在のお香典の原型です。
「お香」とは線香や蚊取り線香のような渦巻き型のもの、いわゆる火をつけると煙が立つもの全般を称します。
「供物」とは、お供え物としての食べ物や花などを称します。

香典の意味

お香典とは、葬儀の際に故人の霊前に供える金品のことです。「香」はお香を意味し、「典」は儀式や供え物を意味します。元々はお香や供物として物品を供えていたのが、時代とともに金銭を供える形に変わってきました。


香典が現金である理由

いつから香典が現金になったかは定かではありません。
一説では江戸・明治時代の葬儀で香典を出す際にお香や供物では荷物になってしまう、処分に困ることがあったから、とのこともいわれています。

もし現代で香典がお香や供物のままであったなら、自宅で葬儀をしていたならともかく、葬儀場を利用すると、かなりの大荷物での移動になることが想像されます。いっぱい紙袋を持ったまま火葬場に移動したり家に帰ったりするのは大変ですよね。

その意味では現在現金で香典を送る慣習の存在は理にかなっているように見受けられます。

香典は誰のため?

ここで皆さんに質問です。
あなたはお香典を出す際、誰のために出していますか?

おおよそご遺族のためと回答する人が多いことでしょう。

この質問に正解はないと私は思っていますが、
ここで思い出してください。

前述の中で、お香典はもともと「お香」や「供物」でありました。
これらは誰に対して送られたのでしょう。

「お香」は遺族が利用することにはなりますが、本来煙は仏教では故人や仏様に対して感謝や祈りを込めて焚くものになります。
現代でも焼香するときや線香をあげるときに、遺族のことを思って行う方はあまりいないですよね。

「供物」を辞典で調べると、「神仏や故人に対して供養として捧げるもの」という意味、もしくは概ね似たような意味が出てくると思います。
これも遺族のため、ということは本来の意味には含まれていません。

つまり、本来のお香典とは故人のために送るものであり、渡すものの形状が「物」から「金品」に変わったということです。

しかし現代で出されるお香典のあて先はほとんどが遺族になります。
ではこの時にお香典の意味はどうなるのでしょう。

現代の香典の意味

もし仮にあなたが仕事の同僚や友人が亡くなったっときにお香典を出す際、そこにはどんな目的がありますか?

「葬儀に行くのにお香典は当たり前だから」という目的は、真の意味で目的ではありません。それは慣習に基づいている行動なので、目的が存在していないです。
店員さんの「以上でよろしかったでしょうか」という文言が何も考えずに発せられているのと同じようなことです。

  • 遺族への支援:金銭的支援を目的としたもの

  • 社会的な繋がり:遺族や関係者と今後も付き合いがあるため

恐らく上記がほとんどの理由と考えられます。

このとき、目的達成における対象者は遺族になります。
これは元来の香典の考え方とは異なっています。

葬儀の現場から見た香典

実際に施工に携わっていても、お香典を故人のために出している方は多くないです。
ほとんどが遺族を対象者としています。
これは香典を「出す」側の理屈です。

しかしこれが香典を「受ける」側になると、

・故人の遺志により香典は辞退します

という言葉で香典を受け取らないことがあります。

これは「出す」側と「受ける」側で対象が一致していない、不可解な言葉尾やり取りになっています。
もちろん故人が生前に家族にそう伝えているケースもたくさんありますが、
基本は当り障りのない断り文句です。

実際には香典返しの手間が面倒だったり、計算することの煩わしさ、以前ほかの親戚の葬儀では出さなかったからこちらも辞退でいいんじゃないだろうか、という遺族側の理由によるものであり、この点においては出す側と受ける側の対象が一致しています。


これがお香典に関する考え方でした。
別に知らなくてもいいことですが、知っていることでお香典を用意するときに向き合い方が少し変わりますよね。

もしこのお香典という文化がキャッシュレスになった時、受け入れられる世の中になるためには香典の目的が何であるか、そのためにキャッシュレスがいい理由は何かを理解・認知されることが重要だなと思いました。

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