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AIと葬儀業界の距離

ChatGPT4oの驚きやClaude3の出現など、現代を取り巻くAI産業はとんでもない盛り上がりを見せています。
かくいう僕は去年の年始ぐらいにChatGPTの存在を知り、実際に普段から利用することでAIに何ができて何ができないのか、何ができるようになっていっているのかを日々追いかけています。
僕が身を置く葬儀業界にも、いずれはこの波が来るだろうと思っていますが、このスピードは恐らく日本のどの産業よりも遅くなるんじゃないか、という予想を現在はしています。

AIが葬儀に導入されている例

Googleで「AI 葬儀」と調べると、
・AIナレーター
・AI故人
というページがいくつかヒットします。

AIナレーターとは、葬儀を行う上で必要となる司会進行の台本をAIを用いて作成したり、さらには読み上げもAIが行う、といったものになります。

AI故人は、故人の声をAIが学習し、音声合成を行って、まるで故人が死後であるにもかかわらず話しているかのようにできる技術のようです。
先日亡くなられた八代亜紀さんのお別れの会でもこの技術を用いたそうです。

AIが業界で働く人間になり代わるか?

調べていくと葬儀の中でAIが利用されている場面はまだまだ少ないですね。
僕らの仕事は感情をもとにしたビジネスという側面と、生きる上で必ず必要になる公共性みたいな側面を持ち合わせていると思っています。

ここまで話していて葬儀においてAIがすべての業務を代われるかというと、10年とか20年ですべて代われるとは到底思えません。
お金を払ってサービスを提供されるのであれば、そこにホスピタリティが伴っているものが支持されるのは当然ですよね。
いくら葬儀をするために必要な知識やアドバイスをくれるAIが存在しても、実際に遺体を運んだりお花や祭壇を用意するのは人間です。であれば葬儀をするために必要な知識などを知っているプロに費用を払って依頼しますよね。
AIは現在のところ人の手助けにはなりますが、なり代わるにはまだまだかかるんじゃないか、と僕は考えています。

倫理観の問題に必ずぶちあたる

感情をもとにしたビジネスにAIを持ってくると、必ず倫理観にぶちあたる気がしてます。もしくは倫理観に近い、例えば著作権などの問題とか。
前述の八代亜紀さんの件においても、「死者の声」と考えると倫理観的にどうなのだろう、場合によっては故人を冒涜するようなことにもなるのではないか、と捉えられます。

以前YouTubeの「令和の虎」チャンネルで「AI仏壇を作りたい」という事業プランで若い志願者が出ていました。
サービス利用者は自分の写真や動画、音声やスマホ内のデータ(SNSやLINEなども?)を事業者に預け、事業者はそのデータをAIに学習させることでその人に近いAIを作り上げます。
すると利用者の死後に遺族が会いたいときにそのAIと対話ができるようになる、という仕様を想定しているそうです。
この事業への出資は結果としてありませんでしたが、その際の議論も倫理観に紐づくものが大半の時間を締めていたように思います。

当然僕も人間として生きているので、それなりの倫理観は持ち合わせているつもりです。
AIで作り上げた故人が話す、ということは、その人の本当の意思を100%反映させているとは言い切れない以上、死者への冒涜と捉えられても無理はないかなと。

となると、今現状でAIに感情面の部分で頼るのは現実的じゃなさそうです。

AIが葬儀業界内で有効利用されるのはまだまだ先

つい先日参加した「JAPAN LEADERS SUMIT2024 夏」の中で、AIの業務利用についての話をしている場面がありました。
実際に現場で働く従業員の利用率は20%未満とのことで、世界から見てもかなり低い水準とのこと。
その利用がそもそも業務においてどれだけ活用されているか、どのくらいの効果を発揮しているかは触れられていませんでした。

私は企業のAIの利用方法は大きく二通りあると考えています。

・AIがどこかしらで活用されているサービス、製品

・社内業務効率化を目的としたAIの導入

現在世に出ている葬儀にまつわるAI製品、サービスは、爆発的なヒットを生んだり、社会の中でなくてはならない技術になるかと問われると、そうはならなそうだなと考えます。
前述のAIナレーターは確かに人間でなくていい「ナレーター」という役割をAIにしていますが、AIにすることのメリットとして「確かにそれは利用するね!」とすべての人が納得する理由が思い浮かびません。
ナレーターを雇わなくていいとか、病気などのトラブルリスクが少ない、とか。
しかしこれは運営サイドのメリットでしかなく、葬儀を依頼するすべての遺族にとって満足するサービスとはいえないです。

社内業務効率化においては、まだまだ一般企業でも導入率が低いものであるのに葬儀社がどんどん利用していく絵は想像できません。
一説によると、ポケベルを最後まで業務で使っていた業界は葬儀業界だったらしいです。(古くから業界にいる人に聞きました)
そんな業界がITで最先端に躍り出る、とは到底思えないのです。

ここから考えても、タイトルの「AIと葬儀業界の距離」は、かなり離れているものだと言わざるを得ません。

みなさんの職場での実際の使い方や利用率、また利用しない理由はなんですか?この答えが社会全体とAIの距離ともいえるでしょうね。


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