湖のほとりに到着したエオランデは、水面に映る夕日を静かに眺める。その瞬間、湖畔の小道を歩いてくる一人の老人の姿が目に入る。老人の顔には時間の重みが刻まれ、その瞳には深い哀しみと知恵が宿っている。
エオランデは老人に声をかける。「お元気ですか。」
老人は微笑みながら答える。「元気とは何か、長い人生を生きてきた私にはよくわからない。しかし、君のような若き存在に会えたことは、確かに心を温かくする。」
エオランデは老人の言葉に何か心を打たれるものを感じる。その老人は、かつての友人ダンに似た何か—その温かさ、その哀しみ—を持っている。
「君は何をしているのかね？」老人が尋ねる。
「私は、大切なものを手放しに来たのです。」エオランデは穴の開いた靴を見せる。
老人はしみじみと言う。「大切なものを手放すのは、人生で最も難しいことの一つだ。特に、君のように長い命を持つ者にとっては。」
エオランデは老人の言葉に深く頷く。「それは確かに真実です。しかし、物に固執することで、新しい旅路が閉ざされることもあるのです。」
老人はエオランデの若々しい顔を見つめ、自分の死を前にした感慨にふける。「君の若さは、私にはもう手に入らない宝物だ。しかし、君がその若さで得た知恵—それは、私が一生で得たものと同じくらい価値がある。」
エオランデはその言葉に感動する。そして、穴の開いた靴を湖に投げ入れる。水面は一瞬波立つが、すぐに静まり、夕日が再び美しく映る。
老人は微笑みながら言う。「君の旅はこれからだ。新しい靴で、新しい道を歩んでいくのだろう。」
エオランデは老人に感謝の言葉を述べ、新しい靴でその場を後にする。しかし、その心の中には、老人との出会いがもたらした新たな知恵と感慨がしっかりと刻まれていた。
そして、夕日が水面に沈むとともに、エオランデは新しい旅路へと足を踏み出すのだった。
