詩:傷

欠けたカケラは

わたくしの

薬指の白い爪



爪先の

甘く鈍い切れ味の

ちいさなやいばに化けた



浅い睡りのはざまで

り 掻り 掻り 掻り

肌を掻き



情けもなく心無く

いたずらに肌身

傷つくる



ベッドサイドの白色ランプは

も人工の月よろしく

嫋やかに光って



仄か

照らしだされた手腕てうで

しらじら幽けく浮かびあがるわ



あゝ



滲んだ

血の玉が艶めく

傷から湧き出ずルビーのやうに


十阿弥じゅうあみ阿世